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お化けフォーク

作者: Hora

俺は現在30歳。妻と娘の3人家族。娘の知枝(ちえ)は最近3歳になり可愛い盛りの天使である。

 ある日、仕事の出張先からの帰り。(のみ)の市でどこの文化のものか分からないカトラリー(スプーン・ナイフ)セット(・フォーク)を買った。色の感じからすると黄色と赤色からなるので中近東だかだと思う。怪しさが満載だったがそこが魅力的であり、「妻には良い顔をされないだろうなぁ」と思っていたのだが…

「良いわね。さっそく使いましょう」

と何故か好評だった。使うのは俺だから何でも良いのかもしれない。軽く水洗いして乾かしてから食器棚の引き出しにしまう。怪しい食器が1軍入りしたのである。


 ところが翌日。夕食時になりさっそく初陣を果たすべく食器棚を開けると3種の内のナイフが入っていない。幸いナイフを使わなくても問題ない夕食であったので良かったのだが。夕食後に妻と話す。

「食器棚にナイフが入ってなかったんだけどママ知らない?」

「うん。知らない。私は食器棚は触ってないわよ。私と知枝(ちえ)の食器は食器棚から出してないし。」

「うーん。おかしいな。知枝(ちえ)ちゃんだと身長足りないから食器棚に手が届かないよな。踏み台みたいなのも危ないから出してないし。」

「何か勘違いしてるんじゃないの?昨日食器棚に入れ忘れてたとか。」

「そんな事無いと思うんだけどなぁ。」

探すにしても心当たりが無さ過ぎるので、いずれ出てくるだろうと諦める。


さらに翌日、食器棚からスプーンが消える。

「何で?」

「さぁ?」

「ママ、隠して楽しんでたりしないよね?」

「パパこそ私のせいにして楽しんでたりしないよね?」

「「…」」

「まぁ、俺が一番使うフォークが消えなければ良いか。この色合いのクドさからするとすぐ飽きそうな感じもするし。」

その予想に反して、フォークは消えず残り続け、そして飽きずに使い続けたのである。


そして2年後…


ある日、5歳になった知枝(ちえ)と話していた。

「ねぇパパ。私がちっちゃい時に黄色と赤色の3つの食器があったよね」

「うん。買ってきた時はそうだったけど、すぐナイフとスプーンは2つ無くなっちゃったんだ。あれ…そういえばどこ行ったんだろう。」

「私知ってるよ。どっちも」

「え~。知枝(ちえ)ちゃんが隠してたの?でも知枝(ちえ)ちゃんは今はおっきくなったから食器棚に手が届くけど、あの時は背が届かなかったよね。どうやって取ったの?」

「違うよ。取ったのは私じゃないもん。」

「え。てことはママがやったの?」

「ううん。ママでも無いよ。男の人。私見てたもん。」

「…どんな男の人?パパじゃないよね。」

「うん。食器棚の上のとこの天井の開くところから知らない男の人が降りてきてね。食器棚を漁って持って行ってたのを見たよ。」

 俺は驚きつつも背筋が凍る。家は2階こそ無いが、食器棚の上に正方形の屋根裏に上がる機構がある。全く使っていなかったのだが…。さっそく明かりと念のための木刀を持ち、食器棚の上、天井のネジを回し開け屋根裏を覗き込んでみる。誰もいない…のだが、毛布とラジオ、空のペットボトル、ナイフなどが見つかる。ナイフは最初に無くなっていた持ち手が黄色と赤色のもの。誰かがここで暮していた痕跡が見つかる。すぐさま警察に通報し調べてもらう。

(ほこり)の積もり具合からすると1年ぐらい前まではここに人が住んでいたんじゃないでしょうか?」

と言われて俺と妻は心底恐怖した。ナイフは帰ってきたが、屋根で埃をかぶっていたことや、知らない男が何かに使っていたかもしれないので、改めて使う気にはならずその日の内に捨てた。


その夜、改めて知枝(ちえ)と話す。

「ほんとありがとうね、知枝(ちえ)ちゃん。言ってくれなかったらずっと気づいてなかったよ。ナイフを持ってる男が屋根裏にいたなんて映画みたいだよね。実際にあるんだなぁ。」

「でもねパパ。もう1つのスプーンを持っていったのは別だよ。」

「えっ、、そういえば屋根裏には無くなったスプーンが無かったよね。知ってるの?知枝(ちえ)ちゃん。」

「うん。だから知ってるって言ってたじゃん。パパったらもーう!」

「あはは。ごめんごめん。今の言い方ってママそっくりだね。で、スプーンは誰が持っていったの?」

「スプーンは小さいおじさん。」

「…。えっと、、屋根裏にいたおじさんが小さかったの?」

「ううん。スプーンと同じくらいの大きさのおじさん。私が見てた時は台所のシンクから出てきて、食器棚の取っ手にジャンプで跳び乗ってね。んでんで食器棚を開けてスプーンを持って行ってたよ。」

「小さいって…じゃ10cmぐらいってこと?」

俺はサイズを手で表しながら知枝(ちえ)に聞いてみる。

「うん。それくらい。それでね、スプーンを抱きかかえたまま、またシンクの中に入って見えなくなっちゃった。」

それに関してはもうどうしようも無い。妖精の一種だと噂される小さいおじさんかぁ。妻にも話したが笑い転げていた。


 その会話があった翌朝、食器棚を見ると最後の1本であったフォークが食器棚から紛失していた。頼みの知枝(ちえ)も今回は目撃していなかったらしく、帰ってくるかはもう分からない。


 霊なのか、妖精なのか、人なのか、お化けなのか。何でも構わないが、家族に実害が無いようにしてもらいたいものである。

フォークがなぜ無くなったのか分かりますか?答え合わせを望むなら感想でどうぞ。

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