File.18 手紙の思惑
その後、クロ君はオーナーさんの残した手紙を見つけました。
「ねぇ、クロ君。なんて書いてあったの?」
「…あんまり言いたくない」
クロ君は少し俯いてそう言う。
「私はクロ君の助手なんだよ! 隠し事はもうやめて!」
「……」
それでもクロ君は口を固く閉ざしている。
本当に言いたくないんだ。
でも、
私はクロ君の傍まで行くと、クロ君の頬めがけてビンタする。
愛祢ちゃんは目を見開いて驚きの表情を浮かべていた。
「何を言いたいか分かる?」
「うん…でも言いたくない」
「クロ君!!」
私はもう一回ビンタする。
手が痛い、胸も痛い、心が軋みそうだ。
そしてクロ君の頬は赤色に染まっている。
「言いたくない」
凄い頑固な人、でもその眼を見ると私は諦めるしかなくなった。
クロ君の眼は絶対的な決意を私に伝えたから。
「…少し出かけてくるよ」
クロ君はそう言って、引出しからシルバーのブリーフケースを取り出して出かけた。
「…クロ君」
私は引きとめることも、声をかけることもできずにクロ君を見送った。
それから愛祢ちゃんに少し怒られて、そのすぐあと、あの人がやって来た。
「やぁ~ 元気してるかい? お譲ちゃん方」
「刑事さんですか」
「なんだオジちゃんか」
「なんだい? この空気。めちゃくちゃ居ずらいね~」
「だったら帰ってくださいよ」
「お譲ちゃんがきっと喜ぶ情報を持ってきたんだけどな~」
「どんな情報ですか?」
私がダルそうに聞くと、刑事さんは私と向かい合う形で座り、ニヤリと笑みを浮かべる。
「クロがなんで君に内容を放さなかったかって情報だよ」
!
「教えてください!!」
「ノッノッノッ。ただじゃー 教えられないな~」
「お金なら後でちゃんと用意しますから!」
「お譲ちゃんからお金は巻き上げないよ、ただ一つ約束してほしい」
「わかりました、だから早く話してください!」
「そう慌てなさんなって、ちゃんと話すから。
クロはね。暗殺を頼まれたんだよ」
「暗殺? 誰の」
「君のお父さんさ」
私は唖然とする。
だから、だから話したくなかったんだ。
「止めに行かなきゃ!」
「ちょーっと待った。約束まだ言ってないだろ?」
勢いよく立ちあがった私を刑事さんは止める。
気が急いでいる私は苛立ちを隠す事は出来ず、
「早く言ってください!」
「止めに行かない事。ってのが約束さ」
「そんなの無理です!」
「でも約束だろ? もう話しちゃったし」
この人は何を考えているんだろう。私は正直そう思う、
今、私のポディションに違う人が居ても私と同じ行動をするだろう、
なのに、この人は何を考えてるんだ!
私の起こす行動くらい刑事さんなら簡単に想像できるだろうに。
「私は……行きます!」
刑事さんの静止を蹴り、私はクロ君の後を追いかけた。
短くてすいません。