表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ちょっと変な国語の先生の話

珍問珍答シリーズ その23 けさ、見た◯◯(写生文練習)

作者: マボロショ

写生文の勉強をした後、次のような問題を、定期考査で出してみました。


「けさ、見た◯◯」という題で、100字以上の文を書きなさい。◯◯には、植物の名、または動物の名を使うこと。自分がビデオカメラのファインダーをのぞいているようなつもりで、見たものの形、色、その他について、言葉で、どれだけイメージが表現できるか、やってみなさい」


30年前は、モニターとかじやなく、ファインダーの時代でした。

対象は、1年生の女子クラスでした。

朝、自転車で駅まで行く途中、すずめをひきそうになった。すずめは、口になにかをくわえていたので、逃げようとした時、えさが落ちそうになって、あわてて見えた。だけど、私が止まらずにすすむと、上手に、えさをくわえたまま、逃げて行った。


朝、起きたら、ハムスターが、ジッ ジッと鳴いていた。そのハムスターは、昨日、姉が友達からもらってきたもので、色はうす茶色、うりぼうのように、たてに模様が入っている。目は赤くて、ルビーのようにかがやいていて、とてもかわいい。

家には、もう一匹ハムスターがいる。こっちは、鳴いていない。母が、「お腹がすいているのかも」と言って、ピスタチオをやった。さっきまで鳴いていたハムスターも、鳴くのをやめて、ひっしになって食べはじめた。

ピスタチオを食べ終わると、毛づくろいをはじめ、それが終わると、巣の中にもどってねてしまった。


大きめの水そうの中に金魚が一匹。赤くて、動きが速くて、まがろうとする時、キラキラして見える。普通の魚型の金魚だけど、ひらひら型の金魚よりは、ずっとスマートで、かっこよくて、小さい分、かわいらしく見える。ゆっくり泳いでいる時も、すすしげな気分をただよわせている。


今朝、近くの友達を迎えにいきました。友達の飼っている犬は、小さいマルチーズです。夏になろうというのに、まだ毛がふさふさとしています。真っ白で、とてもきれいです。あたまに、ちょんと、小さな赤いリボンがついています。首輪には、すこし大きめの鈴がついています。私が行くと、バーッと走って来て、ワンワンといって、出迎えてくれます。鈴がチリンチリンと鳴って、とてもかわいいです。


けさ、ムカデを見ました。ペッチャンコにつぶれていました。ひもがからまっているような感じで、茶色っぽい、黒いものです。ちょっと赤いところもあります。足がたくさんあります。近づいて見ようとすると、こわいです。心臓がビクンとしました。


妹の部屋に行って、インコに、「おはよう」とあいさつをしました。すると、「チッ、チッ」と返事をしてくれました。体は水色で、胸のあたりは黄色で、目がくりくりしています。チーちゃんです。毛づくろいをはじめて、それがとてもかわいらしく見えます。ときどき、体をプルプルふるわせて、水色のきれいな羽をカゴの外に飛ばします。

私が朝食をおわって、また見に行くと、インコも餌をつついていました。一生懸命、おなかがいっぱいになるまでやめないという感じでした。


今朝、チューリップを見ると、昨日までついていた花びらが、全部、落ちていました。落ちた花びらは、つかれているみたいに、でろでろになっています。花びらがなくなったチューリップのくきも、ただ、まっすぐ立っているだけ。なんか、物足りませんでした。


エンドウ豆の、ちょっとふくらんだ豆と豆の間に、水滴がありました。水道の水では絶対できないような美しい水滴でした。きらきらして、ダイヤモンドよりきれいじゃないかなー、と思いました。


けさ、といっても、まだちょっとうす暗い時に、鳥かごの中をのぞいてみると、インコがくびを後ろ向きにひねって、かた足をあげて、じっとしていました。どこかぐあいでも悪いのかなあと、鳥かごのまわりを一周してみました。実は、ねむっているだけだったのです。「へんな寝かただなあ」と思いました。くちばしを自分の羽の中につっこんで、目はとじて、左の足を「グー」の形にして、後ろの方へやっていました。


朝のホームルームのおわりごろ、ろう下に犬がはいってきた。友達が「あっ、犬! 」と言った。みんな、ろう下を見た。そこには、茶色く、よごれた犬がいた。のら犬だろう。犬も私たちを見ている。1組の人も犬に気がついたようだ。「あっちへ行け」と言っている。犬は、みんなの言っていることがわかったのか、すぐ、外へ出て行った。後ろ姿が、少しさみしそうに見えた。


そのネコは、みごとなほどに真っ黒だ。のらネコにはちがいないが、つやのある深い色の黒だ。瞳は青く、するどい目つきでこちらを見る。やせているから体が、その目のするどさを増しているのかもしれない。仲間がいる様子でもなく、だからといって、一匹でほそぼそとこうどうしているようにも見えない。ずるがしこく生きているようで、つくりもののような目がときどき動く。「すべて、お見通し」というその目は、色のせいか、つめたく感じられる。長いひげを動かして、何かを感じ取ろうととしている。まるで、自分は女王様だというように、こちらを見る。少し、こわい。




いくつか、小説のようにうまい写生文もありましたよね。

いなかの女子高校生にも、感覚の鋭い、表現力のある者が、チラホラいるという感じ、しませんか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ