そしてアイドルよ永遠に!
今日は、待ちに待った日だった。
いつものように仕事をして、みんなも接客をしている。
ただ、以前に記事に取り上げられたこともあって、色んな方面からお客が入るようになったので、結構これが大変だったりする。
そして今日はお店を閉めた後に、ミニライブをする予定。
以前の二人の歌に、ちょっとしたMCを加えるだけの即席ではあるが、有名になってからは初めてのものだった。
決してあの金髪のドリルロリっ子にたきつけられたからじゃあない。
こうやって地道にやっていくしかないだろうけれど、ゴメルドさんが言っていたように新聞の影響は計り知れない。
今日もかなりの人が見込めると思う。
そろそろ、これにもお金を取って来てもらうってことをしても良いのかも知れない。
今は料理を頼んだら観られる、みたいなシステムになっている。
それでも、後ろで立って観るだけなら無料みたいな扱いでもある。
でも、そうするにはまだまだクオリティが足りない。
だからこそ、こうやってまだ地道にやるしかない。
あんなことを昨日の子は話していたけれど……。
二人のパフォーマンスを観たらどんな気持ちになるのか、それは楽しみだ。
「またぼさっとしてえ」
おっちゃんから窘められてしまった……。
そりゃあ、この後のことを考えたら、どうしてもそうなっちゃうでしょうよ!
しかし、目線で二人を追うも、そんなそぶりは一切感じない。
ええなあ、ああいう余裕というのか。
あの子たちには、オンとオフがない。
本当に、一緒に夕飯を囲むときもこんな風に明るくしている。
天性だな、本当に。
俺は言われたとおりに、品物を出す。
うう。お腹が痛いぜ、本当に。
今日はミニライブということなので、特に前回とは変わらない内容にした。
ただ、MCは今回も彼女たちが考えているので、どうなるかは分からない。
雪芽さんには割と、身の上話とかは誤魔化しながら言うように伝えたけどもね!
そして目まぐるしく仕事をしているうちに、とうとう夕方になり、店じまいとなった。
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お、いるいる。
あの昨日の子が、少し遅れたのだろうか後ろの方にいる。
「そこ、見えるかな?」
「し、失礼ね! せっかく来てみたっていうのに!」
おいおい。
そりゃあ仕方がねえだろうよ。それに見事なまでに小さいのだから。
そして変わらぬ衣装。
どっからどう見ても、教会の人間だということが分かる。
あと、意外にも他の人から声も掛けられていた。
「意外と有名なの?」
「そりゃあ、この町の区画の一応は中心なの。お父様が」
「教会関係だからか」
「そう。あたしもお手伝いをしているんだから、当たり前でしょう?」
当たり前かは知らんがな、と言いたくなる気持ちをぐっと抑える。
そして、チラと厨房の方を見ると、おっちゃんが色んな人たちから話を掛けられていた。
頭を下げて、どうもどうも、と話している。
あまり聞こえないものの、恐らくはアイドルとはね~、みたいに話しているようだった。
あれ?
地域の皆々様方!
プロデューサーをどなたか間違えちゃいないかい!
そして、ある程度のところでもう、戸を閉めてしまってこれ以上入らないようにしてしまう。
今日はもう、外からは観られない。
俺は、少女の隣でしっかりと、地に足をつけてその時を待った。
そして始まるステージ!
今回は初めて観るという人が多かったらしい。
それでも、かなりの声が上がっている。女性も二、三割はいる。
二人が出てきて、雪芽さんの歌を二人で歌う。
ううん、やはり二人のものは良い!
こうデュエットは前回もしているけれど、やっぱり良い!!
リピーターの人たちの中には、あの歌を覚えてくれている人もいるようだった。
ここから、イングシュさんたちのような人がまた出てくれたらいいなあ。
そして肝心な少女の方を見てみる。
ってえええええええ!
すっごい目を輝かせて、ライブを観ている少女がそこにはいた。
爛々とさせて、その眼は希望に溢れているといった感じ。
おっそろしいでえ……
というか、いよいよ本当にただただライブを確かめて観てみたかったというだけじゃないのか?
もう、何なら身体を左右にゆっくり揺らして、リズムを取ったりもしている。
おいおいおいおい。
昨日の威勢はどこへやらじゃねえかよ!
それからは、俺がじっと見ているのも関係なしに、食い入るようにして二人のライブを観ていた。
そして、同じように他の人たちも、今日のライブを楽しんでくれた様子だった。
帰りは、静奈ちゃんと雪芽さんの二人がハイタッチをしてお別れだ。
少し汗をかいているが、なんというか、それが余計に二人が頑張ったということの証なのでとても良い!好感度もあがるでえ、これは!
まあ、これは俺が提案したんだけれども、実際にライブハウスに行ってしてみて良かったものだった。
そして気づいたら、もうあの金髪ドリルはいない。
あれ? と思ったらもう、二人のところに一目散に駆け寄っていた。
「すっごい良かったです!!」
「ありがとう! 小さいのね! ありがとうね!」
「はい! 輝いてました!」
静奈ちゃんは華麗に地雷ワードを使っていった。
にもかかわらず、全く彼女に抗議の色はない!!
え、なによこの差は!!
「お父さんとお母さんと来たのかしら?」
「今日は一人です! 次は一緒に連れてきたいです!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねてテンションを上げていく少女。
おいおいおいおい。
何だよ、女神かどうか確かめるんだ~、みたいに言ってたくせにいい。
ちょっと出口でうっとりとして、ハイタッチを他の人ともしているのを眺めている。
そして、ハッと何かを思い出したかのようにこちらへトテトテと歩いてくる。
ちょっと無い胸を張って堂々としているのがかわいらしい。
「ど、どうだった?」
「ふん! 見てたでしょ!」
「いや、どうだったか」
「絶対見てたじゃない! そしてすごい保護者面してたじゃない!」
「そんなに俺の視線を気にしてたの? もったいないじゃん。もっと二人の方を見て話をしたら良かったのにさあ」
「ああ! それは大丈夫よ! ずううっと見てたから! いやあ、本当に……」
そこで言葉に詰まる。
そりゃあそうだわなあ。
あれだけ、見極めるみたいに話してたんだから。それがこんだけ楽しんでましたよ、と自供したのだ。
「本当に?」
「よ、良かったわよ!」
「なら俺も満足!」
これが本心よ。
最初はどうなるだろうって。
あれだけ懐疑的でもあったから。それに彼女は聖職者でもある。
そういう人から見ても、やっぱり良い風に思えるんだから二人のパフォーマンスは、すでに素人の域を超えているのだと思う。
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あれから何人かの人に声を掛けられていたが、その間もちゃんと少女は待ってくれていた。
「どう? 一人で帰れる?」
「当り前よ! ばっかにしないで!」
と言いつつも、頬を染めている。
よほど二人のものに興奮したのだと思う。
「今日は素直に良かったわよ……。女神かどうかは、まだ判断が足りないけれど!」
「そう、じゃあまた判断しに来てよ」
「そうね!」
そう言うと、少女は両手で顔を扇いだ。
「あ~、恥ずかしいはずかしい!。じゃあね!」
そうやって、言うと少女は小走りで駆け出した。
俺も、上でへたっている二人にねぎらいの言葉をかけて、少女のことを二人に話してやろう。
飯も食わなきゃなんねえしな!
こうやって、色んな人を変えていく……。
そんな二人を見ていると、俺もやる気が出てくる。
どこまでいけるのかはわからない。
しかし、それでも、俺はこの世界で生き続ける。
またいつか戻るまで。
それまで、この子たちの起こす革命を見て、それを支えていこう。
そう、少女の背中を見て俺は考えるのだった。




