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前を向いた少女?

 一体、この状況をなんと表現したら良いのやら……。

 やっていることの一割も理解が出来ない。

 やたら小さい女の子。

 衣装は、白いシャツになんとも黒いスーツのようなもの。そして、白地に黒のラインが一本入ったブーケのようなものを被っている。

 

 よく、このブーケの紋章を見てみると、蓮のようなマークがあしらわれている。

 これが浄土来迎教の教会の正装着でもある。


「あんた! さっきから黙ってるんじゃないわよ!」


 黙ってるんじゃないわよって、いきなりそんな……ねえ?

 ちと、唐突すぎやしませんか……これ。

 しかもたぶん初対面なのに、この物腰よ。


「はあ……ああ、あれかな。迷子だったりした?」


「むきいいいいい! なによなによ! その言い方! ばっかにしてさあ!」


 ええ……。

 俺は飽くまで善意でもって彼女にアタックを試みた。

 というよりは、コミュニケーションを取ろうと図った。


 色んな人に道ばたで見られている。

 本当、たまったもんじゃねえなあ。

 こんなのを他人が見たら、なんか小さいこと喧嘩しているというか、どんな風に思われるか……。

 せっかくなあ、良いように言ってあげたのに。


「馬鹿にはしてないって。というか逆にそっちが馬鹿にしてるんじゃないかな?」


「そうよ! あんたを馬鹿にしてるの! わからない!?」


 うわあ……。

 絶対面倒くさいタイプだこれ……。


 声からしたらまだ幼さしかない。

 カールをした金髪と、碧眼がなんともお人形さんと形容したくなるほどに愛らしさを持っている。

 しかし、だ。

 口を開けばこれよ。

 しかも、何で俺が目の敵にされているのかが全く分からない。


「いまいち……分からないっすね」


「はあ。なら、どこまで理解できてるかいってごらんなさいな」


「すんまへん。全部っす」


「もおおおおお! ほんっとに!」


 しまった。またしてもぷりぷりさせてしまった。

 何という失態!

 大体女心なんて分からない上に、初対面の子だ。理解して意図を組めという方が無理でしょ……。


「だ、だって。俺って君と会ったことあるっけ?」


「ない!」


 うん、じゃあ分からねえよ!

 何にご立腹かも分かんねえよ!


「じゃあ……あなたは何に対して怒っているのかな?」


「そうね! 昨今の社会情勢かしら!」


「へ~。えらいねえ。よく知ってるんだ。お父さんやお母さんから教えてもらったのかな?ああ、そうそう。やっぱりねえ、小さいころからそうやっていろいろと教えてもらうことは良いことだと思うよ。ご両親に感謝しないとだね」


「だ~か~ら~! それが馬鹿にしてるっていうのよ! あたしはもう十七!」


「ん? 何が?」


「年齢よ!!!」


 えええええええええ!

 どう見たって、十ちょいだろうよ!!


「す、すげえ若いのですね」


 俺と変わらないじゃないか……。


「もう! 良い? 固定概念は捨てなさい!」


「はあ……。で、君は俺に何のご相談があってきたの?」


「ご相談? 言いようね! 本当に!」


 知らんがなあああああああ!!


「だって、君とは初対面なんだし。何をそんなに怒らせてしまっているのかが分からないよ」


 そう言うと、ロリロリとした少女は話す。


「あたしがどんな人間か、分かるの?」


「まあ、そうっすね……教会の人です」


「そう! つまりは、神に仕える身なの! それも、うちは代々、このワンスの町で中心となって布教に努めて、今では多くの人の悩みも聞いてきているの」


 まあ、そうだろう。

 この宗教はこの国の大多数が信仰している。

 信仰しているとはいえ、過激的なことではなく、生活の中にあって精神的な支えみたいなものになっている。教義も至って普通。それは単に、人間として基本的なことを教え説くといったものだ。

 

 今では、色んな人の話し相手になったりだとか、バザーなどの市がある時にその中心になって、仕事をしている。いわば、地域の顔であり、町内会長さんといっても良い。

 ちなみに、村上将軍家はこれを信仰してはいないが、政治には利用してきた。

 うまいことやっているということだろう。


「は! 神に仕えているから俺の名前を知っているのか!!!」


 だって、初めて会ったのに俺の名前を知っているなんておかしいじゃない!

 あるとすれば一つしかない。


「あ、それは新聞で知ったわ」


 うん、やっぱりそれだったか。分かってたよ。


「ああ、君も読んでくれてたんだね」


「そうね! そしてそれが馬鹿にしてるっていうのよおおおおおお!」


「ちょいちょいちょーい!」


 声がうるさい。

 本当に、みんなが何事かと思ってこっちを見てるから!!

 早くもスキャンダルはいかんですよ!


「そんなに気になるんなら、店の中に入れてよ」


 あっけらかんとする少女。

 何言ってんだこの子……。


 正直、中で話をしたいという気持ちはあった。

 それはあったのだが……この子をうちに入れてしまったらどうなるか分かったものじゃない!

 だからこそ、それはしたくなかった。

 

「ああ、今それはちょっと」


「何でよ」


「改装中だから」


「そんなもの書いてないわよ?」


「極秘にやってるから」


「何で改装なんかしてるのよ」


「企業秘密です」


「いつからしてるのよ」


「今日かな、朝に」


「本当に?」


「嘘だけど」


「ほらみなさあああああい!」


 何なのよ本当にこの子はもう!!

 いや、正直に話しちゃう俺もどうなのよって話だけれども……。


「そもそも、新聞に何が書かれていたから怒ってるの?」


「そうよ! 何よあれ!」


「あれ、とは?」


「あんた鈍感ねえ! 雄一っての! ほんっとうに!」


「鈍感……うう」


 それは小隊長からも言われていやとうな気がする……。

 胸が痛くなっちまうぜ……。


「教えてあげるわよ! あんた、アイドルってのをしてるらしいじゃない!」


「いや、あの。俺はアイドルではないです」


「ええ!? そうなの?」


「はあ。それは女の子たちで俺は、その監督というか。プロデューサーっていうのをしてるんよ」


「ああ、じゃあそれで良いわ。まあ、こういうものは責任者がちゃんとしてないといけないものだからね! そうじゃないと極楽へは行けないわよ!」


 良いからはよ本題を……。

 せっかくクリーニングしてもらったというのに、もう。

 衣装の入った袋を下に置いて、長期戦も覚悟する構えだ。


「記事にね『女神』って書いてあったでしょ!!」


「ああ、そういえばそうねえ」


 確かに見たときは、アイドルの二人のことをそんな風に表現してたっけな。

 あんまり記憶がないけれど、そんなことあんまり覚えてませんって言ったら、また騒ぐかもしれない。

 ここは黙っておこう。


「そ・れ・が! 許せないのよ!」


「何でよお」


 もうこっちが駄々っ子みたいになってしまう。

 しかし、途端にピンとくる。


「そうでしょう! だって恐れ多くも、神の名前を使ったのよ! 何よ! 自称女神って!」


「えええええええ! それえ!」


 そういうことですよね! やっぱりねえ!

 だって『女神』ってキーワードに反応しちゃったんですもんねえ。

 しかし、そこにキレているとは……。


「そうよ! さあ! 言い訳はなにかある?」


「そうねえ。あるとすれば、それは俺たちが言ったものじゃないよ」


「え?」


「いや、え、じゃなくて。それはその記事を書いた人が勝手に表現をしたのであってだ。俺たちはそんなことはひとっことも言ってないよ」


「あ、そう……なの?」


「ちなみに、君のご両親はなんて言ってたの?」


「そんなに可愛いなら、見てみたいわねって」


 全然寛容的じゃない!?

 かなり好感触じゃないっすか!!


「それで、抗議に来たわけね」


「まあ、そうだけれども! そうね! えっと、そんなライブだっけ? それがこの町に相応しいか! あたしが判断してあげるわ!」


「いや、大丈夫っす」


「大丈夫じゃなああああああああい!」


「だって! 明らかに、とって付けたかのように何か言い訳しだしたじゃないか!」


「それは言葉の綾よ!」


 ええええええ、何を言ってんじゃい……。


 でも、それはある意味。

 良いかも知れない。

 こういう人がライブを見たらどうなるんだろう。ちょうど、そろそろやりたいと思っていたし、せっかくなら……。


「良いよ! じゃあ、三日後! ここでやるから!  観に来なよ!」


「ほ、ほんとお!」


 一気に顔が明るくなった。

 え、なによ。

 ライブが観たいだけちゃうん?

 まあ、良いか!


「じゃあ、約束ね」


「おう! 女神かどうか、君が観て判断してみてくれ!」 


 こうして、青葉さんの話すように、変な少女に出会ってしまった俺だった。


 気安く、請け負うもんじゃないなあ。

 ああ、衣装がずんと重く感じる。


 少女は足取り軽そうに、元来た道を戻っていった。


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