初めて
王の間の奥への道はすぐに見つかって中に入ると、思ってた以上に広かった。
中にはベッドだったであろう木材の残骸と、ひび割れている大きな机がある。
「執務室みたいなのもかねてたってこと? この世界でも書類とか契約は重要なのかもしれないわ」
私はひとまずじゃまになった木材や、その壊れかけの机なども壊してしまいひとまとめにした。
「ごほっ……埃ひどい」
部屋にあった窓を開けようとすると、見事に窓枠が壊れた。
「もう、ひどいわね……」
他の窓も、壊れてない窓枠も外してしまった。
「ミヤマ君。入っても大丈夫か?」
「埃ひどくてもいいならいいわよ」
「なら、入らせてもらおう」
ガズさんはいつかを思い出すように大きな袋をもって部屋へと入ってきた。
「これはひどいな。ちょっとまっていろ」
そう言うと、ガズさんは黄緑色の墨を鎧の中のどこかから取り出して指につける。そして窓枠の横に魔法陣がかかれると、窓から窓へとふく小さな風が起きた。
「これで大丈夫だろう。魔法陣も夜になる前には消える」
「便利ね」
「君にもできるようになる。それで、ひとまず服と寝具だ」
「ありがとう」
「それでは、私は出ていくとしよう。その瓦礫は掃除する時に部下に片付けさせる」
「助かるわ。処理の方法がわからなかったから」
「では!」
ガズさんはそういって部屋を出ていった。
袋の中身を見てみると、たしかに服が入っている。
だが、大きな問題点が判明した。
「なんで、全部スカートというかドレスに近い形なのよ……いや、でもこれはワンピースなのかしら?」
ゲームでみるようなミニのワンピースとか組み合わせて使うようなコートはあるけど、全部スカートだ。
下着もしっかり用意してくれているのはありがたいけど、更に問題ができた。
ブラの付け方知らない。
しばらく右往左往していると、扉がノックされる。
「深山? いる?」
「美香?」
「うん。まだ皆集まってないけど、こんな言い方あれだけど人の姿のままなのに着替え遅いなって」
やばい、どうしよう。あ、でもチャンスかもしれない。
ここで躊躇しても今後付き合っていかないといけない体なんだから、早いに越したことはない。
「美香。ちょっと、頼みがあるの」
「じゃあ、入るよ?」
「大丈夫」
入ってきた美香はすでに着替え終えていた。
ただ、なんというか予想外の服装だ。
「な、なに?」
「いや、胸の谷間見えちゃってるねって」
「しょ、しょうがないでしょ! これしかないし、これでもミノタウロスの人から譲り受けたものって言われて」
一応下着だけの状態とは違って肌は隠れているけど、胸の上ははみ出そうになって谷間が強調されてしまっている。
「それで、どうしたの?」
「下着の付け方わからない」
「あぁー……そうだよね。普通そうだよね。うん、理解した」
「手伝って」
「任せて。でもどれきるの? 下着はまあどれも似たようなのみたいだから、ひとまずは上下いっしょでいいとしてさ」
「詳しくないからわからないのよね」
「でも、この感じだと魔王とか姫って雰囲気を重視したチョイスしてそうだね」
「そうなの?」
「とりあえず脱いだ脱いだ」
私は一先ず着ていたYシャツとシャツを脱いで肌を晒す。
「それで、ブラだけど。全身鏡あとで用意してもらった時に改めて教えるね。まあとりあえず、このタイプは背中のホックを掛ける位置で緩すぎずきつすぎないぐらいのところって覚えておけば、外れてもどうにかなると思うよ」
「んっ……ほんとだ。支えられてる感じある」
正直言うと、肩とかに負担を最近感じ始めてしまっていた。
「結構、体型と比較して大きいからブラつけないと駄目だよ」
「うん」
「そしたら、後は男でもなんとなく想像はつくと思うけど。任せておくと悩み続けそうなので、あたしが選んじゃいます」
「お、お願いします」
少し怖いけど、言われたことは事実だ。絶対に自分で選ぶ自信が今はない。
「はい、それじゃあ腕上げて――どう、これきつくない? ――足上げてね」
何故か目をつむってなすがままに服を着せられた。
「よし、完了」
恐る恐る目を開けて自分の体を見る。
ミニの肩出しのワンピースの上に胸の位置のボタンと腰あたりのベルトで固定している膝裏まで裾のあるコートだ。
そして太ももの半分ほどまであるニーソックスを履いていた。
「スースーする……女ってこんなのいつも履いてんの?」
「まあ、学校の制服とかはそんな感じだったよ。まあ、パニエあってそれも着せたからスカートふんわりしてると思うけど」
「よ、よくわからんないけどそうなのね」
こういう感覚にもなれないといけないわけだ。
ただ、もうひとつ気になることがあって。
「私って、谷間しっかりできちゃうのね」
「そりゃもうしっかりとできてるよ」
私の服も胸部分の谷間が見えるような構造になってた。コートで辛うじて肩は隠されているけれど。
「他にも色々あったし、好きな物探そう」
「えっ?」
「女の子になってる間なんだから、それそうおうの格好しないとでしょ。それに魔王様なんだから」
「そ、そうね」
「うん。じゃあ、ひとまずは、これを美奈達にお披露目ってことで」
美香は先に部屋を出て行く。私も一度部屋で深呼吸をしてから、王の間へと移動した。