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特有の悩み事

 お昼が終わって部屋で特にすることもなくくつろいでいた時のことだった。


「ミヤマ君はいるか!?」


 突然部屋の扉が開いたかと思うと、中に黒鎧が飛び込んでくる。


「どうしたのよ、ガズさん」

「おぉ、いたか。いや、なに……少し手伝ってもらいたいことがあってな」

「なにかあったの?」

「同室のえっと……」

「敬のこと?」

「そう! 彼女のことで、少し問題が起きてな」

「え、まさか失敗とかじゃ」

「いや、そういうわけではないが。大きな問題がな。と、とにかく地下まで一緒に来てくれ」


 私はガズさんを追いかけるようにして地下へと移動した。

 まさか昨日の今日でこの部屋に戻ってくることになるとは思いもしなかった。部屋の中へと入ると、1つを除いて見た目は変わっていない。

 その1つとは、部屋の中心近くにある大きな青い花の蕾だ。


「ひとまず、これを。それでは、一度私はでているのでな!」


 ガズさんは机の上に何か置くとそういってでていってしまった。


「え、えっと、もしかしてそこにいるのって水琴?」

「そうだけど。敬?」


 声は蕾の中から聞こえてきた。


「そう。いや、俺だってこんな風になると思ってなくて! それで、えっと、とりあえず、そのガズさんが持ってきてくれたの持ってきてくれない?」

「いいけど」


 机の上にあるそれを手に取ると、ビキニの水着の上だった。


「ど、どうすればいいのこれ?」


 渡そうと近づいてみたものの、蕾であって敬の姿は見えない。

 蕾の近くで観察しているとゆっくりを花が咲くようにして開いた。

 その花の中心には全身は明るめの黄緑色となって髪も緑に染まっていた敬がいた。下半身は花になっているのか花の中に埋もれているようで、頭にも一輪花が咲いている。

 そして何も着ていなくて、腕と蔓をつかって胸を隠している。


「ご、ごめん。とりあえず、それ頂戴!」

「あ、うん」


 私は手に持ってた水着を渡す。

 ブラをつけてから一度一安心したのか改めて私の方を向く。


「え、えっと、その……こんな風になっちゃった」

「可愛いじゃない」

「そ、そうかな? なんか俺らしくないっていうか、正直女らしさ皆無になると思ってたりして!」


 今まで男性制服で隠されていた体がでているけれど、スタイルは良い気がする。


「それって、下半身どうなってるの?」

「太ももくらいまではあるよ。それより下は花と一体化しちゃってるみたいで。だから、その、下着もはけないから花で隠してるの」

「そういうことなのね」


 あれ、でもそれってつまり。


「歩けないの?」

「根っこ使えばゆっくりなら動けるってガズさんはいってたけど、まだ全然体の使い方わからなくて困ってたんだよ! 俺に根っこの使い方なんてわかるか! 蔓が限界だよ!」


 蔓はすぐに理解できたのね。


「その、そろそろ私も入っていいだろうが」


 そうして話していると入口の扉から声が響いてくる。


「あ、一応着たわよ」

「それはよかった」


 ガズさんは恐る恐る大きな袋を持って中へと入ってくる。


「それで、私に手伝って欲しいことってこれだけ? というか私も一応元男なんだけど?」

「ま、まあ、そこはだな……それで手伝ってほしいことの本題は、ここからだ」


 ガズさんは持ってきた袋を開ける。中には大きな植木鉢をとりだした。中にはしっかり土まで入ってる。


「いずれは自分で動けるようにはなるだろうが、しばらくは簡単には動けんだろうからな。一時的に用意した。ということで、運ぶのを手伝って欲しい」

「そういうことだったのね」

「お手数おかけします……」

「まあ、仕方ないわよ。それより、今根っこどうなってるの?」


 この部屋の床は石造りだ。


「アルラウネの根は石くらいなら簡単に貫くぞ」

「そうなのね……ちなみに私の元の世界では抜いた瞬間の叫び声を聞くと死ぬみたいなパターンもあったけど」

「それは別の植物として存在しているな」

「それなら安心したわ」


 私はガズさんと慎重に根っこの位置などを確認してから、下半身の花ごと敬を持ち上げて植木鉢の上に移動する。

 根っこも石をめくって持ち上げるようなこともなくするっと抜けた。

 そして土の上に置くとすぐに、中に根を張りはじめた。


「はぁ……」


 その時、敬は何か気持ちよさそうだった。

 敬自身の体重はそれほどじゃないから持ち上げられたけれど、上に戻ろうと植木鉢ごと持ち上げると、さすがに土がかなりの重量になっていた。


「ご、ごめん。大丈夫、水琴?」

「案外大丈夫ね」


 ただ、私の力もこの体になって強くなっていたようで、そこまでの苦労はなかった。むしろガズさんが辛そうになっている。


「ガズさん、大丈夫?」

「あ、あぁ、大丈夫だ」


 1人で持とうかといいたいけれど、大きさの都合上2人で持たないとバランスを崩しそうだから頑張ってもらうしかない。

 その後、ひとまず私達の部屋の窓際へと移動した。


「それじゃあ、ひとまずこれで……ミヤマ君もありがとう」

「いえ、友達のためだから。ただ、一つ聞きたいけど、なんで服があんなにちっちゃい物をチョイスしたのよ」

「日光浴びる種族だから、何かなければ厚着は体に毒だからだ」

「そういえば、植物の特徴もあったわね……理解したわ」

「それでは今度こそ私はこれでな。移動のための準備を進めなければならない。あと、ハギサワ君に関しても、ミヤマ君が許可するなら一緒でもかまわんが」

「それじゃあ、一緒でお願いするわ」

「了解した」


 ガズさんはそれを聞いて部屋から去っていった。


「いいのか? 自分で言うのもあれだけどさ。俺、邪魔にしかならなくない?」

「そんなことないわよ。それに慣らしていけばいいでしょう」

「みことぉ……!」


 何故か感動した様な雰囲気を出されてしまう。そんなに大層なこといったつもりないのに。


「でも、ここにいる間ご飯とか困るわね」

「あ、大丈夫。日光があれば最悪どうにかなるらしいから」

「人の形とっておいてそんな都合いいの?」

「流石にたまにはちゃんと食べないとだけど、数日くらいなら水と太陽があれば大丈夫ってきいた」


 アルラウネの生態ってそんな感じにねっているのね。


「じゃあ、あれなら私がご飯の帰りに持ってくるわ」

「ありがとう。何から何までごめん」

「いいのよ」

「水琴の城では何か役立てるようにいろいろ考えておくから!」

「楽しみにしておくわ」


 どんな城かもまだ定かではないけれどね。


 夜になって私は美香と美奈を部屋へと招いた。


「おぉ~……」

「こりゃまたすごいね」


 敬のことを見てこんな反応になる。

 まあ普通はそうなるよね。


「いっしょに行くことになったから、挨拶くらいは済ませておいたほうがいいかって思ったから」

「俺は萩沢敬! よろしく!」

「まさかの俺っ娘!? えっと、美香よ。入江美香」

「わたしは美奈。三枝美奈です。よろしくね、敬ちゃん」


 挨拶を終えた後は軽い世間話でもしてから眠くなったら解散ぐらいに思っていた。

 しかし、思いの外話が弾んでいる2人がいる。


「その手じゃ辛くないか?」

「いやいや、そしたら敬ちゃんの足のほうがすごいでしょう」

「まあ、たしかに動きにくいかもしれないけど。手がそれだと、物掴んだりとかさ」

「そこは不便だけどちょっとずつだけど空飛べるようになってきたし、なにか大きなものをつかむなら足があるから」

「そういえば鳥の足って、結構器用だったか」


 美奈と敬はそんな風に話している。人と大きく離れた者同士だからこそといった感じだ。


「まあ、無言になるよりはいいけど」

「そうだね。深山はどう? 女の体」

「今のところは大丈夫よ。花摘みとかは未だになれないけど……ただ、未だにYシャツ状態でそろそろ着替えたいと思う反面、着方わからなそうだなって」

「あたしもいい加減変えたいわね」


 美香は相変わらず上半身は胸が大きくなって大変な状態になっていた。サイズが合うものにしたいと思うのも仕方ないだろう。

 かくいう私も胸がでかくなって、Yシャツで押さえつけているような状態だ。


「その時は、一から教えてあげるから安心して……あ、ただ、それと別でちょっとあとで相談あるんだけどいい?」

「私でいいならいいわよ。教えてもらうし、よっぽどのことじゃない限りは力になるわ」

「よかった。じゃあ、またその時がきたら頼むね」


 何のことかは教えてもらえなかった。

 夜もふけていい時間になったところで解散した。

 ちなみに寝る時に気づいたことだけど、敬は蔓と下半身の花びらを器用に使って寝ていた。

 蕾にでもつつまれて寝ることすら想像してたから意外だったけど、これはこれでいつ倒れたりバランス崩すか心配だな。


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