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友達

 部屋のフロアまで戻って私は扉の前で固まっていた。

 よく考えたら、あの2人は同室だからいいけど、私の場合は萩沢さんいるじゃん。

 このままはいっていいものなのか。それとも、私は自重するべきなのか悩む。

 幸か不幸か廊下では走って追いかけてきた美香と美奈以外とは会ってない。

 でも、ガズさんは今別の子を地下に連れて行ってる最中だし、戻ってきてもどの部屋に戻るか把握してない。

 夕飯時まで動けないのは流石に困る。

 私は意を決して扉をノックした。


「はーい」


 案外すんなりと中から返事がきて扉が開く。


「えっと……もしかして?」

「そうよ」

「は、はぁ……あ、とりあえず、じゃあ中にどうぞ」


 察しがいいのか私が同室だった元男だとすぐに理解してくれた。

 部屋の中に入って座る。


「え、えっと、おかえりなさい。こう、俺は……どう付き合っていけばいい?」

「最初にそれなのね……」

「他に何かあるの?」

「普通に本当に私がそうなのかとか。この見た目の細かいこととか、こうなる時どうだったかとか色々あるじゃない?」

「たしかに……でも、女の子になるってのは一応聞いてたし、俺のことは俺で決めないといけないとは考えて自己解決したから! それに、見た目の細かいことといっても、まあ可愛い女の子になったなってことくらいしか……あ、いや、その服装は危ないよ!」


 話しながら改めて私の体を見たようで、萩沢さんは机を軽く叩きながら立ち上がった。

 私の今の姿といえば、ブカブカのYシャツとその下のシャツを着ているだけだ。ズボンやら下半身の服は最初からサイズが合わなくて諦めていたけど、動き始めると上着も思った以上に邪魔だったので脱いでしまった。

 部屋に入ってすぐにベッドの上に投げ置いたけど。


「お、男の人に襲われたりしそうにならなかった? ほんと、その姿は危ないよ! 子供ってほど子供じゃなくて、成長期そこそこか過ぎたぐらいの見た目になってるんだから」

「そんなにいうほど?」

「そうだよ! もう、襲われてからじゃ遅いんだよ! ただでさえ、俺達が暮らしてた世界と違うんだから!」

「そ、そう……と言っても、服ないのよね」


 この世界に来た時に身につけていた物とかしかなくて、私の場合はスマホとかもカバンの方に入れていたから何もないに等しい。つまり着ていた制服以外は何もなかった。

 女子の服なんて持っているわけがない。


「うぅん。でも、俺もただでさえ男子制服しかないからな」

「あ、そうだ。じゃあ、頼んでおきましょう」

「頼めるの?」

「うん。敬……萩沢さんがよければ、ちょっと手伝ってくれない?」

「敬って言った? 敬って呼んでくれた? 名前でいいよ!」

「そ、そう?」

「うん! そっちのが友達っぽい!」


 基準がよくわからないけど、本人が嬉しそうだからいいのかな。

 私は机の上に魔力紙と羽ペンをだす。


「それで、何を手伝えばいい?」

「もう少ししたら別の場所へ移動するんだけど、その時の荷物で必要な物を教えてくれって言われてね」

「へっ? でて……いくの?」


 そういえば、敬は誰も知り合いがいなくて私に話しかけたんだった。


「ま、まあ、色々と流れでそうせざるをえなくて」

「そ、そんな! 俺はこれからどうすれば!」

「ちょっとは頑張って他の人と話したりできない?」

「したいけど、せめて女子の制服ないときつい。女子の友達ならいないわけじゃなかったんだよ! 子供の頃は男子とかとのが絡んでたけど!」

「前にも聞いたわね。もしかして中学の頃くらいとかから男子に避けられだした?」

「うん? そうだな。そのくらいだった気がする」


 その頃は精神的に変化していく時期だから仕方ない気がする。男女ということもあるし、女子にモテる女子の側にいると自分のプライドがある男子はきついと思う。


「じゃあ、私から頼んでみようか? というかどちらにしても、最初の数日は良いけど今後どうするにしてもそこは問題になるでしょ」

「まあ、そうだな……でも、せっかくこうして友だちになれたのに!」

「私も可能ならそうしたいけど、やらなくちゃいけないことがあるから」

「なにそれ! 説明してよ!」

「説明するから落ち着いてくれる?」


 少しして敬が落ち着いてから、私が魔王になったことから城にいって活動していくということなどを伝えた。


「つまり、俺も適性の姿になれば一緒にいけるってこと?」

「ま、まあそうね。多分、それなら可能じゃないかしら? さすがに人のままだと、この世界で生きてきたわけじゃない人だと辛いって止められそうだし」


 ガズさんはなんだかんだで人がいいからこそ止めそう。


「そ、そっかぁ……うぅん。でも、正直怖いんだよね」

「まあ怖いのは仕方ないと思うけど」

「いや、正直言うと生きていくためなら仕方ないと思えればそれでよかったけど、適性の種族? みたいなものを俺は知らなくて」

「聞かなかったの?」

「聞く勇気がでなかった。黒鎧の威圧感があの時は怖くて」

「ま、まあ、仕方ないわね。ちなみに教えてもいいって言うなら聞くけど」

「アルラウネって言ってたんだけど」


 また、難儀な種族がきた。


「えっと、一応私がしってるイメージでいいなら教えるけど」

「俺たちがいた世界でのってこと?」

「まあ、そういうことね」

「うん、教えて」

「まあ簡単にいうと花ね」

「花? 植物の?」

「そう。おっきな花の上に人がいるって感じの種族ね。神話とかだともう少し違うって聞いたけど、そっちは詳しくは知らないわ」

「花の人……あんまり想像つかないけど」

「まあ、そうよね。でも説明難しいのよね」


 あと、失礼だけど敬みたいなイケメンがアルラウネになるイメージがわかない。

 ゲームとか漫画のイメージのせいだけど、可愛い系の女子のみたいめのイメージがある。


「それって動けるのかな? 仮にだけど」

「さあ、動けるのも見たことあるし動けないのもみたことあるからわからないわ」

「そっか……でも、それで深山君……さん?」

「めんどくさいから水琴でいいわよ」

「水琴ちゃんと一緒にいけるかもしれないなら受けようかな。どちらにしても、最後はちゃんとそうしようって思ってたから。問題は踏ん切りがなかなかつかなくて、つく理由を探してたってことだけど。一応、理由になるし」

「敬がそれでいいならいいけど。私が理由でいいの?」

「俺は1人は嫌だ! ただ、行く時途中まででいいから一緒にきてくれない?」

「まあ私でいいなら良いけど」

「ありがとう! それじゃあ、こんどこそ手伝うよ。とりあえず、やっぱり服とか生活用品は必要だと思う」

「女が必要なものってなに?」

「男子と大きく変わるのは――」


 その後、敬に手伝ってもらいながら必要品のメモを作り上げて、夕飯時にガズさんに渡した。

「あぁ、そうか。着替えとかの問題もあったか。だぁ! 私の準備不足が露呈しすぎていい加減恥ずかしくなってきたし。謝るだけではすまなくなってきているきがしてきた!」

 メモを渡した時、そんな風にガズさんが反応した時は苦笑いするしかなかった。


 そのまま一緒に敬のことも伝えると、他にもう一人友人とじゃなくて決意した人がいるから明日一緒にということになった。

 その夜、隣のベッドでは妙にそわそわして眠れないという雰囲気をだす敬がいたけれど、私は朝からの変化の連続で疲れていてすぐに眠りについた。


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