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魔王の城

「なんというか……まあ、なんだ。ひとまず何事もなくてよかったというべきだろうか?」


 迎えに来たガズさんと共に客室まで戻ってきた。


「まあ無事といえば無事だけれど……色々聞きたいのだけど、まずなんで私は私になってるわけ!」

「ど、どういうことだ?」

「口調とか精神まで影響受けてるってことよ!」

「そういうことか……すまん、そこはどうにもわからんが……おそらく、適性である種族が希少種族であり女性しかいないことが大きな原因ではないかと思う。種族に刷り込まれた歴史というかだな」

「まあ、ひとまずもうそういうことにしておくわよ。問い詰めてもわからなそうだし」

「助かる」

「あと、なんで若干緊張してるのよ」

「いや、すまない。魔王の適性もある君の力が予想以上でな。恐らくまだ自覚はしていないだろうが、かなりプレッシャーがでている」

「そう……」


 自分ではさっぱりわからないけれど、抑えないと色々不便ってことか。

 だから、入江さんと三枝さんもなんか若干戸惑ったりする時があったわけね。嫌われたとか女の私が引かれたとかじゃなくてよかった。


「あなたも魔王なんだから、教えてくれる?」

「まあ、私で教えられることならば喜んで教えよう……まあ、それでだが。実は魔王の適性者と簡単に出会えるとは思えなかったが、1つ提案があるのだがいいか?」

「提案?」


 私達がその話題に移ろうとした時、隣にいた入江さんが小さく手を上げた。


「あの、それはあたし達も聞いていいものなの?」


 まあ、たしかに魔王の適性者ということをわざわざ言ったってことは、聞いていいものか気になるか。


「構わん。というか、むしろ場合によっては君たちにも関係するからな」

「どういうことよ?」

「いや、実はこの城の他にもうひとつ別の城を所持している。魔王適性者がいたならば、その城に行って、城下町をつくるなどの繁栄をしてもらいたくてな。政治やらは私の部下に詳しいのがいるが、魔王という上に立つものがいるといないでは違う」

「それって、戦争してる魔族の国とかと一緒の事になりかねないんじゃない?」

「私達はあくまで穏健派だ。方法が思いついたなら共存の道も探っていきたいと思っている。最悪、そういう輩が出た場合は追放までしてよい。いまは土台を作っていく必要があるのだ」

「今いるこの城は?」

「本国の最後の城として機能させていきたい。それ以上に、これから戦うにも非戦闘員が多い状態でな。言い方は悪いが囮や壁になってもらう意味も存在している」

「うぅん。私達の世界って平和も平和だったから、荒事は不慣れよ?」

「その辺も可能なら学んでいって欲しいということもあるが、素質的に考えればヘマをしなければ魔王自身が生き残ることは容易いだろう。自衛術や魔法なども随時教えていこう」


 つまり、国のために危険地の王になって敵を引きつけてほしいってことね。

 その上で、可能ならそこにも新たな町を作り上げて領地を広げたい。それを最初の土台としつつ今後の行動を起こしていく予定ってわけだ。


 かなりリスキーな提案なのは誰でもわかる。だけど、私がこの体になった理由とか意味を考えたら答えは決まってるようなものか。


「まあ、いいわよ。ただし、しっかりと教えてね」

「任せろ。私の部下でも一流の奴らに任せる」


 安心して、自信のある雰囲気でガズさんはそう答えた。

 そして、次に入江さん達のほうへと顔を向ける。


「それで提案というか。今後の話の一案なのだが」

「あ、あたしたちのこと?」

「そのとおりだ。まあ、今話したとおり彼――彼女に城を任せて数日後には移ってもらうことになるだろう。その際に君たちはどうする? 彼女とは元の世界から知り合いのようだが、一緒に行ってもいいしここに滞在してくれてもいい」

「それって、何が違うの?」

「まあ、知り合いが近くにいるかどうかということくらいか。後は、私が頼んでおいてなんだがあちらの城のほうが攻撃を受ける可能性は高いといえる。それと、私個人としての意見なのだが、彼女を支えさせる部下を派遣することはできるが、真の意味で心を支えられるのはやはりすでに関係が出来上がっている君たちだと思っていてな」


 ガズさんは今度は申し訳なさそうにしながらそういう。顔は見えないのに、そういう雰囲気を感じとれるあたり、中は表情豊かだったりするのかもしれない。


「わたしで役に立つかわからないけど。深山君が迷惑じゃないなら、一緒のほうがいいな」

「美奈?」

「深山君、自分がそんな姿になったのに、わたしに対してあの時声を躊躇なく声かけてくれたりしたし」

「まあ……あたしも迷惑じゃないっていうなら、一緒がいいけど。この姿になって、何もせずにここにいても意味ないし」


 2人はそう言いながら私の方に顔を向けてくる。


「迷惑なわけないでしょう。2人がいいなら、一緒に来てくれない?」

「うん!」

「任せて!」

「まとまったようだな。それでは、近くに出発できるようにこちらでも準備をさせよう。何かそちらから、こう必要だというものがあったら。これに書いて夕飯時に渡してくれ」


 彼はそう言うと数枚の紙を渡してくる。ただ、紙といっても質は現代ものと全く違う。


「羊皮紙ってやつ?」

「魔力紙だ。とある木の皮に魔力を通すとそんな風に変質する性質があってな。わりとそこら中に生えていて安価で手に入る。おっと、こいつも渡しておかないといかなかったな」


 そう言って渡されたのは羽ペンのようなものだった。


「こういうペンって高価なんじゃ?」

「ハーピィが落としたり生え変わりの羽を使っているから、むしろ本来はなんでもないものを再利用しているだけだぞ?」


 この世界はファンタジーゲームの勝手なイメージを鵜呑みにしちゃいけないみたい。


「まあ、そういうことならいいわ。墨ってあるの?」

「存在はしているが、それに関しては羽の先に反応して魔力紙のほうが自動で削れるようになっているから問題ない。これはあれだな。あとで日用品についても教えたほうが良さそうか?」

「お願いするわ。食事とか食器に関しては大きな変化はなかったけれど、これはちょっと想定外」

「わかった。他の人達も同じようになりそうだし、適した人物に声をかけておこう」


 ガズさんはそう言うと、立ち上がった。


「それでは、他にも決意した者たちがいるので私はそちらへ行ってくる」

「あ、まって」


 去ろうとしたガズさんに対して入江さんがストップをかける。


「まだ何かあったか? 多いならそれも紙にまとめておいてもらったほうが答えやすいかもしれない」

「えっと、あたし達この姿で部屋に戻っていいのかなって? ガズさんからしたら、決意してない人に不安とかを与える可能性があったりしない? 変化した人って」

「むっ……それはたしかにそうか。しかし、どちらにせよここに住んでいる以上は、魔族とはいつか対面せざるを得ない。今日のところは部屋に戻ってみてくれると助かる。もし反応が悪かったら、私に改めていいにきてくれ。別の部屋を用意しよう」

「わかりました。ありがとう」

「いや、こちらこそ配慮不足を指摘してもらえて助かる」


 そう言うと、ガズさんは改めて部屋を去っていった。

 部屋に残った私達3人は改めて互いを見る。


「み……入江さん達はよかったの? 本当に私と一緒で」

「さっき言ったことは嘘じゃないから大丈夫。ていうか、あたしのことさっきから名前で呼びかけてる?」

「あ、えっと……」

「別にいいよ。深山には男だろうがなんだろうが名前で呼ばれてもいいとは思ってるし。ていうか、ちょいちょい躊躇されてる方が気になるから」

「わたしも名前でいいよ~」

「じゃあ、今度からそうさせてもらうわ。なんか起きてから、そっち呼びのほうがしっくりくるようになっていて」

「上に立つ威厳みたいなものか、女子同士だからかもね」

「そうかもしれないわ」

「ふふっ、あっ、でも生活面でもわたし迷惑かけちゃうかも」


 美奈はそう言って自分の両翼を見る。手の指などの面影はなくなって、たしかにかなり人間とは異なってしまって生活に影響がでそうだ。


「それならあたしがフォローするから大丈夫。まあ、あと支えるとかガズさんはいってたけど、あたしで役足りてる?」

「むしろ、あなた達がいて心底助かったと思うことがあるから大丈夫」

「なにそれ?」


 これを自分から言うの少し恥ずかしい気がする。

 でも、言わないとあとで困るの私だから言っておかないと。


「その、私は口調とかこういう部分では女になってるけど、根本的な記憶とかは男のままだから。着替え方とか、いろんなそういう……手入れとかさっぱりわからないから。教えてもらえる相手が……その……」

「深山。顔真っ赤で可愛い」

「うん。やっぱり深山君ものすごく可愛くなったよね。美香もそう思うよね」

「うん。あたしも最初に美奈が言った時は、美奈の姿にばっかり目がいってたり意識が別にいってたからあれだけど、こうしてみるとずるいくらい可愛い」

「うぅ……あんまり、そういうこと言わないで」


 私は無意識に顔を手で隠していた。

 でも、こういう仕草するのがむしろ逆効果なきがする。男だった私がそう告げている。


「「可愛い」」

「もう、部屋戻るわよ!」

「「はーい」」


 私は若干早足で客室をでて、泊まっていた部屋があるフロアの方へとあるきだす。

 後ろから2人がついてきてるのがわかるが、どうにも振り向けない。ていうか顔が熱い。

 途中、廊下にあった小さな鏡に映った私は、頬やら耳まで真っ赤に染まっていて、雪肌だからそれが目立ってしまっていた。


「もう、いやー!!」

「あ、深山!」

「深山君まって~!」


 そして最後に耐えきれずに私は走り出した。


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