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第2話 新しい筐体は黒く輝く大きな卵

 タイムアップの大きな文字が画面に表情された。

ごくり、と息を飲む俺。

それはまさに厘差だった。

俺のライフゲージが相手のライフゲージより、ほんの数センチいや数ミリか?

残っていた!

俺の操作していたキャラクターにYOUWIN!というデカデカとした文字が画面に表示されると、俺は集中力のスイッチをオフにした。

「ふっはあ!やったぜ!都会のゲーマーもたいしたことねえなあ!おい!」

「うわあ!また勝ったあ!やりましたね、ヒヒロさん!また勝ちました!」

対戦相手に勝利し、不敵に笑う俺。そしてそれを眺めるハジメ。冷静を装いつつも内心は心臓バクバクだった俺は熱いため息をつき、ハジメは笑いながら喜び俺に抱き付いた!


これは数ヶ月くらい前の話だ。俺はいつも通り、ヤリなれた格ゲーで闘っていた。


本来、格闘ゲームとは相手の操るキャラクターのライフゲージを減らすアグレッシブなゲームである。

しかしながら、俺の考え方は違っていた。

相手から奪ったリードをいかにタイムアップまで守りきるか。

つまり、タイムアップによる先行逃げ切りを狙うのだ。

通常、格闘ゲームは1ラウンドの制限時間という1分近い時間を丸々と使うことはあまりない。

だが俺はあえて最初からそれを狙うのだ。

俺の戦法を知らない相手は戸惑いを見せる。当然だろうな!攻めて来ないのだから。

戸惑いは時間経過と共に焦りへと変わる。焦りはミスを誘う。そこをまた俺が突く。

それはギャラリーから見たら異様な光景だろう。

コマンド入力による華やかな技を見せる相手が、ただただガード一辺倒の、一見すれば格闘ゲームをやったこともないような相手に負けるのである。

そして「ミリ単位で勝つという美学」というものがあった。

実はこれは偶然で、俺はだいたい、ミリ単位で勝利するから、それがそのまま美学に昇華したというだけだ。

美学などと、格好の良い言い方をすればそれだが、実際はそれほど華やかなモノではない。

ガード一辺倒というのはリスクだってあるのだ。例えばガードが効かない攻撃、つまり投げ技などには、勘で対応しないといけない。それは俺が幼少時代からゲームセンターで培った勘だ。相手のキャラクターの射程範囲、すなわちリーチを計算して、相手が攻撃の有効範囲に近づいた瞬間、足払いをするのだ。

失敗すればもちろん、俺がダメージを食らってしまう。

この独特なスタイルは、俺が長年格ゲーを嗜んできた、いや負けて負けて負けて負けて負けまくったからこそ産まれたモノなのである。

一般的に言われる強いゲーマーとはあらゆるコマンド入力を華麗に操って美しい勝ち方をする。そのの最高峰がプロゲーマーと言われるのだろう。

俺はそんなことは百も承知だった。しかしながら、俺が幼少時代からゲームセンターで戦ってきて、どうも自分にはそういった華麗なスタイルは出来ないとわかってしまったのだ。

それならばどうやって勝つか?

美しく勝利しないとダメなのか?

基本的なコマンド…すなわちパンチとキックとガードだけでも、経験と勘で勝てば、それは立派な勝利ではないのだろうか?

俺は自分の産み出したこのスタイルに自信と誇りを持っていた。


なんとまあ大風呂敷で大袈裟なという印象を受けるかもしれんが……まあ、とにかく自分で言うのもなんだが、俺は結構、強かった。

俺はありがちな狡っ辛い飛び道具やハメ技なんて使わなくても乱入してくる連中を撃退していた。ヒットアンドアウェイを忠実に、単純なカウンターでゲージをリードしたら時間切れまで逃げ切るのだ。これは俺が長年格ゲーで闘ってきたからこそなせる技だった。

「でもヒヒロさん、まさか終わりまで、時間いっぱいガードし続けるんですかあ?」

「ガードし続けて、相手にスキが出来たらカウンターよ。一瞬の判断なんだぜ」

ガード一辺倒と見せかけて投げ技を狙ってきたら、俺と相手の持つギリギリのギリギリ…相手が近づいてきた瞬間に足払いをする。

「ハジメよお…なにもバカ正直にコマンド入力してビームみたいな技を使うことはないんだぜ。しっかり守ってカウンターでいいのさ」

「でも相手が飛び道具でゲージを削りに来たら?」

「それがな。やらないんだよ。時間切れに焦ったら十中八九、近づいて削りにくる。百戦錬磨の俺だから相手の表情が画面越しに見えるのさ」

ふふんと俺は鼻を鳴らした。

コマンド入力すれば必殺技が出るゲージでもあえて使わない。ヒットアンドアウェイとカウンターで勝つ。ただし問題は、それまでどうやって貯金を作るか。すなわち、リードを作れるか、だった。ようするに、リードが奪えなければ、決定打を撃てない俺のディフェンシブなスタイルは不利なのだ。それでも俺はコマンド技に頼らない。その美学がこの手のゲームをやる上で、何よりの活力だったから。

「でもヒヒロさん、リードが出来たら時間いっぱいまでガードして逃げ回るって、相手からしたら嫌なモノでしょうね?」

「ま、まあな。俺だったら怒るだろうな。実際の喧嘩でこんな戦法は通用しないだろう。時間切れもない、単純な体力勝負だったら、ガードだけをしていれば勝つなんてことはありえないんだからな。まあ、そこがこのオンラインってやつのいいところよな。なんたって相手がいないのに、ネットを経由して実際の人間と戦えるんだぜ。コンピューター相手じゃない、実際の人間と!」

俺は格ゲーに夢中になっていたその理由の一つに、最近のアーケードゲームは実際に対戦者が席に座らなくても、ネット回線を通じて見知らぬ相手と戦うことができることがあげられる。それは俺にとってもっとも欲しかった部分なのだ。機械相手ではない、意志を持った何かとの接触、そして対決。田舎の小さなゲームセンターで大きな世界に飛び込んでいるようだった。

「しかしよお、最近、格ゲーやるやつめっきり減ったよな。昔はもっと活気があったのによお」

「ヒヒロさん、それはあれのせいですよ」

ハジメの指差す方を一瞥、チラ見すると、何やら人だかりが出来ていた。

「んんん!?なんじゃありゃあ!?」

黒い、巨大な、まるで卵のようだ。俺は気になってハジメと近寄っていった。

「これは新機種ですよ。すっごい面白いんです。」

「なにいい?ほんとにこれが筐体かよ?」

スダンダードなゲーセンに置いてあるような、派手な装飾でチカチカしたデザインの筐体じゃない。本当に、ただの黒い卵だった。

異様な雰囲気を感じた。例えば、派手な装飾のリズムゲームと対照的なのだ。言うならばチャカチャカしていない。音もしない。しかしこれは中高生に受けるのだろうか?完全機密性なのか、中の様子が伺えない。

黒光りいているから、自分の顔が映る。

「間近でみると、やったらでけえカプセルだな!」

中から人が出てくる。どうやらプレーが終わったようだ。みんなおっかなびっくりで

なかなかプレーできずにいた。

「なあなあ、先に俺たちがやっていいかな?」

そう聞くと見物人たちは頷いた。ガキもいればオッサンもいるが、俺はこのゲーセンでは有名らしく、すぐに譲ってくれたようだ。

「じゃあハジメ。操作方法を教えてくれい」

「わっかりました。えっとですね」

横にあるレバーを引いて中に入るらしい。

「まず、エッグの外壁にあるコイン投入口に500円を入れて」

「うっ、たっけ、確かにワンコインだな・・・」

最先端のアーケードゲームはこんなに高価なのか。

「そして、これ」

「本?」

「卵の外側にあるカバーを開いて、スロットルに差し込むんです」

「どういう事だ?」

「好きなライトノベルを挿入して、その世界に入り込めるんです。」

「なにい?」

「今の本には、内臓チップでもついているのか・・?読み取り機能とか?」

まあ実際、運転免許証にも内臓チップはついているらしい。偽造防止で。

「あれ、この本。アニメになってるやつだな。確か主人公は犬じゃないっけ。」

「そうです!そうです!」

「ほほう。俺が犬になれってか。」

「そ、そうじゃないですよ。このゲームは主人公が怪我をしたり、敵をやっつけたりしないので、安全だと思ったからです。」

「それって」

一体どういうことなんだ。まさかゲーム内で起こったことが現実に!?実際に大怪我したりするってのか?イメージがフィードバックしてくるとか?

「違いますって。そんな物騒なものがアーケードゲームで全国に配置されるわけがないじゃないですか。」

要するに、あまりにもリアルに世界観に入り込めるあまり、プレーヤーに精神的な負担をかけてしまう場合がある。

特に戦闘がある物語は、今の時代規制の対象になりやすい。

だから、エッグに対応している本は、比較的やんわりとした物語が多いらしい。


俺はエッグの中で、ハジメに言われるがまま、椅子に横たわっていた


「身長、体重、生年月日に血液型?そんなことまで入力するのか」

「座った時点で自動記憶されます」

「なにいい?どうやって?」

「さっき、ソケットに本と学生手帳カードをいれたでしょ?」

「そこまで細かいデータが必要なもんかねえ、ゲームなんかに」

まあ気にしなくていいか細かいとこは。汗からでもディー・エヌ・エーが採取できる時代らしいし。DNAとはなんなのか、よく知らないけども。

「OKみたいです。」

「ああ、そうかい。」

「続いてはプレイヤーの精神状態を記憶します。心拍数や脳波のチェックをします。」

この筺体について、不思議に思ったことがある。あれが見当たらない

あれだ。

この手のゲームにありがちな、ヘッドギア。目を覆うタイプのヘッドギア。

あれがない。

あれがないと、リアルな映像や音は届かないんじゃないのか

それにどうやって脳波まで測るつもりだ???

(だいたいプレイヤーの脳波・・・だと?)

「このカプセルに入っただけで、心拍数だけじゃなく、精神状態もインプットされるのか。」

そんなことまで必要なのか。リアルさを追求するといろいろ大変なんだなあ。

「おいハジメ!一体いつになったら……あれ」

さっきまで一面真っ黒なエッグの中にいたと思ったら

「草原に立っている」

いや、これはすごい。俺の視力は裸眼で1.5くらいかな。画面の終わりが見えない

大草原だ。

驚くべきことに、太陽の日差し、風の強さ、そして匂いまで感じる。プラネタリウムとは比較にならない。

そして何より度肝を抜かれたのが!

「獣の……手だ……!」

俺の手が犬の手になっちまってる。毛まみれで爪、肉球、、紛れもない獣の両手に変わっちまってる

顔を触ると、毛だらけ・・・耳もいつもの場所にない!

鼻が濡れている。

そのうち呼吸も荒くなってきた。

意図せずに舌がでてきて、ヨダレを垂らしている。

これは一体・・・?

体臭も変化してきている。

獣の匂いだ。

しばらく呆然としていると、ノンプレイヤーキャラクタが俺を街まで案内してくれた。

初心者用の設定をしてもらったからな。

これがさ、不思議なことに歩いてる感覚があるんだわ。

俺はこの筺体の中に寝ているはずだ。

それなのに、汗をかいて、足の筋肉の疲労を感じる。

つまり歩いているんだ。実際に。

 街についたら、ゲームスタートか。

俺の選んだキャラクターは犬にされてしまった人間だっけ。

街中は老若男女。

こいつら全員がオンラインユーザーなのだろうか。

それとも、さっきの案内人のようにノンプレイヤーキャラクターなのだろうか。

 話しかけてもいいのだが、いかんせん、今の俺は犬だからな。

(言葉が通じるかどうか・・・果たして?)

「!?」

腹回りに何かが触れたと思った刹那・・・!

俺は不意に自由を奪われた。

体が宙に浮いている

「なんだっ?」

俺は、犬の俺は誰かに抱き抱えられた。

 屈強な戦士だ。鎧兜を身につけて肩から刀の柄の部分が見える。

オーソドックスな勇者だな。

「ヒヒロさん、僕も来ました」

声は聞き覚えがない。

でもこいつが誰だか、大体想像はついた。

「ハジメかよ。脅かすんじゃねえっつうの」

「なんだ、喋れるんじゃないか。そういう設定のキャラクターだったっけ???」

「犬でも猫でも、会話はできるんですよ。感覚で表現している世界ですから。」

どういう事なんだ。感覚で表現する世界?

理屈はさっぱりわからんが、確かに今の俺は犬であり、勇者の腕の中にいるのだ。

・・・そういう感覚がある。

「ヒヒロさん、ちょっとつまんでいきましょうか」

つまんでいく?

「・・・ギャンブル?」

「ですね」

「おいおい、俺たちは未成年者だぜ、というのは野暮だわな。」

ゲーム内の資金、ゲーム内のギャンブルだしな。

 俺たちは酒場に入っていった

 『未成年者の飲酒、喫煙は固く禁じられております。このエリアには侵入できません。』

「あっ」

「今時のゲームってのは、、堅っ苦しいのね」

「そうかぁ。それでゲーム開始前にいろいろデータを収集していたわけか。」

健全なる世界のためには多少の法規制は必要ということなんだろうが、ゲームの中でくらいルール違反をしたっていいんじゃないかと思うんだけどな。

…ダメかな?

「そろそろ出るか。この姿でいるのは、疲れる」

でもこのゲームってどうやって途中でゲームから離脱するんだ?

この犬は、ボタン一つ持ってないんだぜ?

「案内所がありますから。そこから現実の世界に戻ります」

現実の世界ねえ、今いるのは現実じゃないってのか。

「ハジメ」

「はい」

「犬の髭は触覚?猫の髭が触覚?あれはガセネタなんだっけ?」

「触覚器官じゃないみたいですね」

「それじゃ抜いて持って帰っても大丈夫だな」

ブチッ

「い、痛!?」

「先輩、それは自分のヒゲです。抜いたらそりゃ痛いですよ」

おれにこんな長いヒゲがあるわけがないだろう

俺たちはバカ話をしながら、イグジット(EXIT)というわかりやすい退出場所に入った。

「今から何をするんだ?」

そこに入った瞬間

ブレーカーが落ちたように視覚が奪われて

それだけじゃない。全部だ

1秒の中のコンマ数秒の間に

自分の中の犬の感覚が徐々に失われていくのに気づく

視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚

徐々に懐かしい自分の体に戻っていく

「っ????」

気が付くと、俺はエッグの中にもたれ掛かっていた。

それから俺は、ずっとその黒い卵のことが忘れられなくなった。

体が求めるのだ。

例えが正確とは思えないが

エレベーターに乗った後に体に残る感覚

海に入った日の寝る前に思い出す波の揺れ

そのような普段と違った体験に体の内部が反応しているのだ。

三半規管にしみついているのか、脳に焼付いたのか

寮にもどり、ベッドの中でもそれは止まらなかった。

「うううっ」

快感に体が震えるのだ。

懐かしいようで新しい感覚。

犬になった日。

(ハジメのやつ、いい玩具を俺に教えてくれた。)


顔も知らない仲間たちと協力してモンスターをやっつけるゲーム。

俺がこれが気に入った!

それからもエッグでしばらく遊んだ。

俺は異世界でみんなで協力して化け物を倒すゲームを紹介された。

剣士が好きだった。

何にも考えずにドラゴンを切りつけるだけでいいのだから。

不思議だと思ったのは竜の返り血を浴びたせいだろうか、ゲームの中の世界なのに、血なまぐさい匂いが、身体に残っていることだった。

剣で竜を突き刺す感覚も、実にリアリティがあった。

生々しかった。

それがいつの間にか快感になっていった。

現実にはできないことができる、それがゲームの世界の素晴らしさなんだろうな。

時間を忘れて楽しんだ。

そして腹がすいたと感じた時、すでに時刻は午後9時を回っていた。

俺たちはゲームセンターを後にした。


「ヴッ!」

俺は普段で無いような低い声が出た。

「ひゃあ~寒い!昼間は暖かかったのに!」

ハジメは悲鳴のような声を上げた。

くうっ!春なのに、なんて寒さだ!

「ゲームセンターは暖房あるし電子機器の集まりみたいなもんだからな、基本的に暑すぎるくらいだから気づかなかったな。」

 もっとも春休みは冬と春の切り替えの時期だ。季節風がイタズラをする気まぐれな時期なのだ。

 ハジメは長そでのシャツだが、その小さく華奢な体が丸わかりになるくらい、薄着だった。

「だーから羽織をもってこいと言ったのによ」

俺の名前は日広ヒヒロこの田舎の学園の三年…いや、二年生。校則違反の代名詞のように学園内で言われていた。生徒指定のブレザーを着てこず、大昔の不良にあこがれ、真っ黒な生地に、デカいボタンの昭和スタイルの学生服…いわゆる学ランを好んだ……自分でいうのも笑ってしまうが…歌舞伎者かぶきものである!

 ちなみに歌舞伎者かぶきものってのは、大昔の日本の若者のファッションのことだったらしい…目立つために、わざわざ機能性が落ちたとしても派手な装飾の刀をぶらさげ、だらしない格好で街を闊歩していたらしい…これは日本史の授業で先生様が教えてくださったことなので…まさか間違っちゃあいないだろう。

 俺は自分の来ていたジャケット型の学ランをハジメに着せた。

「えっ?いいですよ!このくらいの寒さ」

「バカ!おめーに風邪をひかれたら俺だって困るんだよ!ガキは黙って言うことを聞けっつうの!」

 そう。こいつはまだ小学生なのだ。こんな時間まで突き合わせてしまった俺の責任は大きいからな。

「ガキじゃないですよ!あと数日後には中学生です!」

「おっ、そっかあ!楽しみか?」

「いやあ全然。」

「えーどうして?」

「どうせまた同じことの繰り返しじゃないですか。」

俺たちは小中高大一貫教育の学校…初等部つまり小学生のころからこの学園寮で暮らしている。確かに同じことを毎年繰り返すだけなのだ。

「部活に入れよ……楽しいぜ?」

「嫌ですよ。ヒヒロさんと遊べなくなっちゃうじゃないですか。」

このやろう。嬉しいことを言ってくれるじゃないの。

「俺と遊んでばっかりじゃあゲームオーバーだぞぉ!」

俺はふざけてのハジメ肩を強く抱きしめた。小柄なのは知っていたが、あまりにも華奢な身体をしていた。

「やっぱ鍛えた方がいいんじゃねえかあ?」

「ちょっと!痛い痛い!」

「お、おいハジメ、見てみ。」

公園がライトアップしていた。

 桜が満開…とまではいかないが、力強い美しさを感じだ。

濃いピンクだけじゃない、

薄いピンクもある、

白いのもある、

夜景とのコントラストというやつか?

ライトアップされて強調された生命力が溢れていた。

さきほどまで、ゲームの世界の色鮮やかな異世界にいたというのに、現実の世界の風景というのも悪くないのではないだろうか。そう思った。

「桜が綺麗だなあ…いつかここに彼女を連れて来たいもんだよな…」

「そうですねえ…気が合う子を見つけないとですねえ…ヒヒロさんはいないんですか?そういう子」

「うーん、それは難しい質問だな」

しばらくの間、二人して桜を眺めていた。

「お、おい、あのカップル、キスしたぜ?」

「え~?桜を見てたんじゃないんですかぁ!」

「花より団子さ、俺は。くおおおおらぁぁぁぁっ!不純異性交遊だぞぉぉぉぉ!公園内はそういうの禁止っ!」

俺は大声を上げた。

カップル達はびっくりして、俺たちの方を向いた!

俺たちは笑いながら走り去った。

「あっはっはっは、ヒヒロさん、DQNだなあ!」

「はぁはぁ、ハハッ、俺はDQNじゃねえよ!夜間パトロールだっつーの!」

春の陽気に誘われて、こんな寒い中に盛ってんじゃねえっつーの!



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