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学園バトル恋愛シミュレーション編

~もしラノベの世界にいけるゲーム筐体がゲーセンに来たら?~


こいつをただの女だと思うな細心の注意を払って言葉を選べ!」

 緊張のあまり脂汗がジワリと顔に浮かぶ。

 「貴様の眼前に座っているのが、もうとっくに起動スイッチが入ってカウントダウンしている時限爆弾だと思え。」

 「ニトログリセリンなんて生易しいものじゃない。そう、例えるならレーザー光線付きダイナマイトだと思え。」

 その例えはよくわからないか、とにかくヤバいモノらしい!

 「教官」には「おおよそ」それくらいの口調でこのミッションの難しさをレクチャーされた。


第1話 VRオンラインギャルゲだと?


 ヒロインっていうはやっぱり何はともあれ、容姿端麗が第一条件だ。そういう点では合格だろうな。彼女は一言で言うとスターだった。

グリーンに光る瞳は、まるで暗闇から光を浴びて煌めくサファイアのようだった。サファイアは緑じゃなくて青か。じゃあエメラルドだな。とにかく、あれには青少年の男の子たちはイチコロなんだろうぜ。

 風に靡く長い髪もキラキラと光沢を保ち、美しさを際立ったせていた。スタイルも抜群だ。それに加えてボディーラインがしなやかで秀逸だった…胸も大きい、ウエストもくびれており、ヒップも魅力的な形をしていた。

 何より笑顔が素敵だった。周りを取り巻く男の子たちが必死になって彼女に気に入られようとアピールをするのもわかる。生物学的にも、理想の女性というやつだろうな。

それでも、俺は彼女をあまり好きとは思えなかった。


 男子にも女子にも好かれる、オマケに教師にも好かれる、成績優秀、容姿端麗なヒロインというのは、あまりにも八方美人過ぎて、いささか現実味がない…人っていうのは何処かしら欠点があるから、可愛いんじゃあないかな…

 これがこの物語のヒロインの容姿だ。ユーザーの中じゃ一番人気らしいぜ。

 そのヒロインの名前?

『リヒテンシュタイン・グーテンシュヴァルツ・カールハインツ・マユミ』だっけ。

名前、長すぎじゃね?と思ったら、帰国子女のハーフという設定があるらしい。

「通称マユミ」

だったら最初からマユミでいいじゃないか!

彼女の性格は「誰にでも優しい才色兼備の優等生タイプ」とある。実にヒロインらしい。

 しかし、例えば実際に、男女ともに友好関係は良好。教師からの信頼もある、そんな人間がいるとして、つまるところ「すべてが完璧であり、人懐っこいので、誰にでも人気がある」ということなのだと思う。

 ただ、そういう人間に実際にみると、「人懐っこい」という感じは、しないのだ。なぜなら、「演じている感」があるから。あんまり俺は、そういう人間には近寄りたいタイプじゃなかった。

だいたい「教師にも男子にも女子にも分け隔てなく接する?」そんなのただの、猫かぶった優等生じゃないのか?

人間、好きな奴もいれば嫌いな奴だっているだろう。そんな、完璧タイプの優等生なんていたら、どうしても裏を感じてしまう。

そんなもの「演じているだけじゃないか」と不信がってしまうのだ。

俺自身が、別に嫌われてもいいから、他人に干渉されず、自分でいたい、というタイプなんだろうな。たぶんそういう輩は、残念ながら本当に他人に好かれない。自由を謳歌するのは勝手だが、あまりにも素直でいてもいけないのだ。

人間は、他人の前では自分を偽って、演じないといけない。

演じられている人間は、その時点で完璧なのだ。演じられている人間は、友人や恋人に恵まれる。ただ、演じられない人間はダメなのだろうか?

そもそも演じていない本当の自分とはなんなのだろうか?

今見えている、いや…五感を通して感じているすべての感覚が、全部嘘だとしたらどうなるのだろう。

自分は演じてなんかいないと思っていたとしても、それそのものが演じていることだとしたら?

例えば別の誰かが作った出来事、例えば宇宙にある場所から送り込まれた幻だったり、あるいはゲームの世界の中の出来事だったなら。本当に、本当の自分なんてどこにいるのだろうか。


 かなり話がそれたが、俺の眼の前では一体何が始まっているのかというと。


 前出したマユミちゃんとめぐって、クラスの男子たちがアプローチ合戦だ!

 複数の男子が、その子の周りにぐるぐると集まって、次から次にアピールをしてんだよ。

 その光景に俺は呆然自失、暫くして失笑したね。そして苦笑いのまま呆然と立ち尽くした。

「こっ、こりゃあ一体何だ?」

隣につったっているクラスメイトに話しかけた。

「求愛活動ですよ」

「そりゃ見たらわかる。俺が聞きたいのは、、、『この後一体どうすればいいのか』ってことだ」

「愚問ですね。僕らも彼女に求愛活動をしに行くんですよ」

「はっ、冗談。おらあ、いかねーよ」

俺は教室のテキトーな椅子に座って机に肘をついた

セミが夏場にミンミン鳴くのは求愛のためらしい。あいつらは自分の子孫を繁栄させるために必死にミンミンと鳴いて異性にアピールしているのだとか。それはいい。だが、俺たちはセミじゃないんだぜ。

一人の女にあんなに群れてアピール合戦なんて冗談じゃない。みっともない。絶対にやりたくないぜ。

「あのお……」

でかいメガネで月のような両サイドのカールを持つ赤いおかっぱ頭の女の子が俺に声をかけてきた。

「おめえさんもヒロインなのか?」

「はいぃ……姫沢カリンと申しますう……一応……ヒロインのひとりなんですけどね……」

「お前さんには、あの緑色のやつみたいな取り巻きはできねーけど、なんで?」

「私はあ……地味なんでぇ……あんまり人気ないんですよお……」

「そっか、そんなもんかねえ?ちょっと話し相手になってくんねーか?」

「あ!はい……いいですよお………」

「お前さんって『えぬぴーしー』なんだよな?」

NPCエヌピーシーとは、良く知らんが、コンピューターで制御された自分で勝手に考えて動くキャラクターのことを言うらしい。

「……えっ?そうですよお……」

「そっか、このゲームって女の子を攻略するには具体的にどうすりゃいいの?」

「……えっとお……とにかく、優しく接すれば良いんじゃあないでしょうか……」

「ふーん。攻略できたらどうなるの?」

「……えっと、学園を一緒にあるけたり、デートしたりできます…時間制限はありますが……」

「そっか。そんなもんかねえ。」

俺は複雑な気分だった。

だいたいの恋愛シュミレーションゲームは仲良くなるまでがゲームで、ゲームの最後に告白してハッピーエンド。そしてゲーム終了なのだ。このゲームは、ちょっと違っているんだな。

「俺は、お前さんを攻略してみたいんだが」

「……えっ?ごめんなさい……私の攻略は、つまらないですよ……」

「つまらないってなんだよ?」

「えっとお……私はあ……あんまり人気ないんで……イベントとか、あんまり起きないっていうかあ……ごめんなさい……私、男の子苦手なんですう……」

「わかったわかった。攻略しようとしないから。それにしてもあの緑の子は、はなんであんなに人気あんの?」

「マユミちゃんはあ……話が面白いし、男の子の扱い方が上手っていうかあ……とにかく、プレーヤーたちを楽しませるのがあ上手なんですう……」

「へえ。そんなもんかねえ。」

確かに、複数の男の子たちを相手に楽しそうに話し相手になってあげてるよなあ…

「でもなんか、好きじゃあねえなあ。八方美人っていうかさ」

「攻略が難しいんで、やめておいた方がいいですよお……」

「おめえさん、面白いな。他のヒロインの注意をするなんて。それでいて、おめえさんは攻略できないとか言い出す。なんだか、めちゃくちゃじゃあないか?」

「えっとお……ごめんなさい……私で良かったら、デートしましょうか……」

「本当か?」

「課金アイテムあります?延長の?」

「ないよ。このゲームの初心者なの」

「ごめんなさい……それじゃあダメですね……」

赤い子は離れていった。なんだか助かったという表情をしていた。

課金アイテムねえ?ちゃっかりしてんなあ、今時のゲームはそればっかりだな。

俺は、机に足を乗っけて緑の女を見た。

「まるでアイドル気取りじゃねえか。複数の男にチヤホヤされて天狗になってるだけじゃねえか。付き合ってらんねえぜ!」

俺の独り言が耳に入ったようだ。もっとも、聞こえるようにわざと大きな声で言ったのだからな。

「ちょっとお。そこのあんたあ!なに肘ついてぼけーっとしてるの!あんたくらいよぉ、私の前でそんな態度を取る男子は!」

「は、はあ?」

この物語のヒロインに名指しで怒鳴られてしまった。

これは好感度が最低値をさらに超えているのだろうか。

「あんた、私に対してそんな態度取っていいと思ってんのお!?」

他の男子生徒は、争奪戦を一時停戦して正座してそのヒロインの周りを囲み静かにヒロインのお言葉をしみじみと感じ取っているように見える。

まるで教祖様である。

おかしいじゃないか。このキャラクターは「誰にでも優しい才色兼備の優等生タイプ」という設定じゃなかったのか?

「あんたもここに来なさい!」

「だっ、だっ、誰がそんな真似できるかよ!」

「えっ、あんた私が欲しくないの!?」

驚いた顔でとんでもないことをほざきやがる。

「欲しくないな」

「あんた正気なの?」

「勝機も正気だ!俺は誰が相手でもこういう態度は取る!それにな!お前なんかヒロインだとは思わねえよ!」

「生意気!こいつ!どうせ現実世界でもモテない、地味なモブキャラのくせにー!バカバカバカ!」

げー、なんだこいつは、これでヒロインなのか?本当にこんな奴が攻略対象なのか?

「はあ~? 余計なお世話だ!お前みたいなやつが良くヒロインをやってるよな!」

「なによその口のきき方はあ!ゲームの中のヒロインを落とせないで現実の女の女の子を落とせるわけないでしょ!」

「このやろー!機械風情が!頭に来るなあ!」

しかし、本当にコンピューターかよ、このヒロインは!かなり弁が立つというか、まともに口喧嘩できてるじゃないか!

まるで「中の人」がいるんじゃないかと感じるくらい、応答が完璧だ。

見かねた一人の男子生徒が俺とヒロインとの口喧嘩の仲裁に入ってきた。

「最初に説明したじゃないですか、このヒロインは物凄くプライドが高くて、というか高飛車なキャラクターだから、僕たちは媚びへつらわないと駄目なんですよ」

「あのな、それをするのは容易いだろうが、そんなことをしたら、それはもう俺じゃないわ。」

マユミの堪忍袋の緒が切れたような音がした。

「もういい!みんな!こいつをやっつけちゃってえ!」

なんかとんでもないことを言いだした。

「なにいってんだよ!こいつらがそんなことするわけないだろ!」

しかし、まるでヒロインの号令に従うように、さきほどまでだらしない顔をしてヒロインの取り巻きをやっていた男たちは、姫を守る親衛隊のような顔つきになりに俺を取り囲んだ!

「てめえら!やる気かよ!」

俺は吠えてそいつらを威嚇した!

しかし多勢に無勢だ!

そいつらは怯えながらも俺を取り押さえようとした!

「こちとら負けらんねーんだよ!」

俺は暴れに暴れまくった!

逃げようと必死になった!

ドアを塞がれていた!

教室を逃げまくった!

しかしやっぱり多勢に無勢だった。取り押さえられちまった!

「ぐおお!話しやがれ!」

「クラス内暴力にヒロインに対する反抗的な態度!あなたは退場ね!もう少しこのゲームのことを勉強してからいらっしゃいな!」

ヒロインのマユミが合図をすると、強制退出という文字のハチマキを巻いた数人の女生徒が俺を連行するために湧き出てきた。

「ちっ、さすがに女相手に暴れるわけにはいかんか!」

俺は素直にお縄についた。

「へえ~、以外に良いとこあんのね。」

マユミは身動きが取れない俺の目の前まで寄ってきて、顎をくいっと持ち上げた。

グリーンの双眸が眼前に迫る。

「お別れのキス、してあげよっか?」

――っ・・・?

どきん、と俺の鼓動が跳ねあがる。

「だっ、誰が」

俺は顔をそむけた。

「あっはっは、急激に心拍数上がりまくってるわよ!こっちにはぜーんぶ御見通しよお?」

「ふざけろ!」

これほどの屈辱は、現実世界ではそうそう、味わえそうにないな。

上から見下すような目線と吐息混じりの囁く様な声で、俺の耳を刺激した。

「あんた面白かった。また来なさいよぉ。」

「なにっ?」 

「また相手をしてあげるっていってんの」

罵倒されるかと思ったら意外な言葉だった。

「けっ、もう御免だぜ」

「ふふっ、可愛い。いいわよ、連れて行って」

俺はルール違反により、強制退出ポイントまで連行されることになった。


連行されている途中、黄色い髪の毛の、有り得ないくらい大きなリボンをつけた

キャラクターが俺を怒鳴りつけた。

「こらあっ~!あんた!マユミ様になんて態度とってんのようっ!あれじゃあゲームオーバーになっちゅうに決まってるじゃない!」

「アハハッ。取り巻きのキャラクターに説教されるとは面白いなあ。さっきの緑色の、あれがこのゲームのヒロインか?全然、タイプじゃないよ。いくら美人でもだ。現実でもお断りだぜ。」

「バカーそんな態度じゃあ誰も攻略できないわよっ!攻略したかったら、その女の子に媚びへつらって、その女の子に好かれるようになりなさいよ!」

「ふーん。まあまあ的確なアドバイスだなあ。ところでおめーさんは攻略できないのかい?」

「わっ!わっ!わたし?私はモブのキャラクターだから!攻略できないわよっ!」

「おいおい、何を焦ってんだ?」

「あんたはもうちょっと周りに合わせようとしなさいよ!マイペース過ぎんのよ!そんなんじゃあヒロイン落とせるわけないじゃない!」

「アハハ、それ、現実でもよく言われる。」

「あんたはさ、大人しいタイプのヒロインが向いてるんじゃないの?現実でもそういう子をさ、その、狙ってみたら?」

突然、歯切れの悪い口調に変わってしまった。

「お前に俺のタイプの女を指図される覚えはねえよ」

「あ、あんたはね、プライドを捨てて可愛がられることを恐れているのよ。笑顔を見せて心を開けば自分自身が救われることを、本当は知っているの。」

――こいつ、何を言ってるんだ?まるで俺の普段を知ってるような口ぶりじゃねえか

「生憎だが、猫をかぶってまで、欲しい物なんて俺にはないな。」

「それは嘘よ。」

「何がいいたいんだ?さっきから?」

「こ、このゲームの攻略のアドバイスをしてんのよ!」

「それにしちゃあ話がおかしいぞ。」

壊れてるのか?このNPC?

「と、とにかく女の子にはもっと優しく接してあげることね!」

――無理やり話を終わらせやがった。なんか怪しいなこいつは。

「まっ、ありがてえアドバイスどうもどうも、参考にしとくよ。」

俺は黄色い髪の毛の女の子の頭を軽くバシバシと叩いて、強制退出のポイントに侵入した。

それと同時に目の前が発呼しその時点で俺の視界が奪われたが

恐らく、意識が消し飛ぶようなイメージ。

(こ、れ、が、嫌なんだ。自分の思考が、ぷっつりと消える感覚。)

薄れゆく景色の中で思った。

(これやっぱり恋愛シュミレーションじゃねえだろ。)


本来、ギャルゲーはオンライン化する必要性がない。

だからこそ、ユーザーたちがヒロインを奪い合うハントゲームは画期的だよな。

 もっとも、これは強力なヒットポイントを持つボスとサシで戦うアクティブなゲームに思うのだが。

これが恋愛ゲームのリアルに進化した姿なのかもしれない。

顔が見えなければ、恥も概念もない。

恥ずかしい自己アピールをしてヒロインに笑われてもゲーム内のことだから

それで済んでしまうのだ。

だからユーザーたちは後腐れなくプレイ出来るだろう。

そこが実際の恋愛と違う。恋愛シミュレーションゲームというわけだ。


ハッと我に返ると、真っ黒な球体の中に自分がいた。

「はぁー・・・疲れた」

 通称「エッグ」の中に俺は居たのだ。

これは卵というよりカプセルと呼べばいいのだろうか?

詳しい外装はあとで説明するとしよう。

それにしても、ふう、手が汗でベトベトだ。手に汗握るとはこの事か。

って、恋愛シミュレーションゲームでこんな脂汗をかかせるなよ!

緊張感と密閉された筐体の中の熱気で汗だくになった俺は「エッグ」から出た。

「しかし、アグレッシブなゲームやってるんだな、こんなのをゲーセンに置く時代になったか。世も末だねえ。」

 俺が苦笑いで愚痴りながらエッグから顔を出すと、まだ初等部から中等部に上がったばかりで、幼さが残った可愛い顔をした少年・・・俺の舎弟、もとい可愛い後輩のハジメが駆け寄ってきた。

「あ、ヒヒロさん。どうでした?」

「どうでしたじゃねえよぉ!怖いじゃねえかよあの女あ!お前の言った通り、とんでもねえダイナマイトだったぜ」

テンパってる俺を見て、くすくす笑うドングリのようなヘアスタイルのハジメの頭をぐりぐりと撫でた。

「ハジメェ!お前の持ってくる本のヒロインは、いつも横暴でエキセントリックなヒロインばっかりだな!しゃべり方も独特だしよぉ!」

「ライトノベルって言うんですよ。さん、それにしても、あのヒロインには絶対に楯突かないでと、あれほど言ったじゃないですかあ!」

「俺も身の危険を感じたわ。あのまま進んだら、やっぱり主人公は殺されるのか?」 

「どうでしょうね、さすがに、そこまでは再現されないんじゃないかな」

「あれじゃヒロインというより、ラスボスじゃないのか」

「あはは、ラスボスですね。だからこそ、そう簡単に落とせたら、つまらないじゃないですか」

舎弟は、俺にスポーツドリンクを渡してくれた。

こいつの名前は一はじめ

ハジメでいいな。一だと読みづらいからな。表記はカタカナでいいだろう。

同じ学園の小学六年生、あと数日で中学一年生。

小学校時代、偶然、学校をサボりゲーセンに行こうとしていた俺と出会い、それから脱獄仲間となった。

「格ゲー、クイズゲーム、メダルゲーム、音ゲー、サッカーゲーム、カードゲーム。脱衣麻雀ゲームと、ゲーセンの歴史は長いこと見てきたがなぁ。ギャルゲーがゲーセンに来るとはなあ。いや、というかこれギャルゲーじゃないだろ。なんださっきの終わり方。ルール違反で強制退出って。怖すぎだろ。」

「いや、恋愛ラノベのゲームなので、れっきとしたギャルゲーですよ、選択肢が間違えると即終了。スリルあるでしょ。」

「お前らの時代にはついていけねーわ」

「あれは10000ある選択肢の中から、1を選ぶ。それ以外の答えはヒロインには通用しないんです。」

「なんだそりゃ。クイズゲーム?・・・つまり覚えゲーのたぐいなのか?」

「違いますね。ヒロインのコンディションによって、その答えも微妙に変化していきます。だから今日と同じ答えは明日は通用しませんよ」

「コンディション、、つまりサッカーゲームや野球ゲームにおける調子による能力の変動ということか。」

「そうです。駆け引きが面白いんですよ。」

「ギャルゲーが、ゲームセンターに、ねえ・・」

「そうそう。例えで100分の1が正解と言いましたが、それもまた違うんです。100分の100が正解かも知れないし、100の中に1つも正解がないのかも知れませんね。正解はひとつじゃない!」

「それはただのクソゲーっていうんじゃねえのか・・・」

俺たちは、ゲーセンを後にした。

 学校を中ぬけしてきたので、こっそりと帰らないといけないと。

 俺たちはこうやってちょくちょくゲーセンに来てるのだ。

 今のご時世、昔あった店屋がいつの間にか更地になっていたり、いつの間にか別の店になってたりするものだ。

 不況でどんどん古い家や店屋が潰れて世の中不動産屋の立て札だらけになってしまうんじゃないのかと思っていたけど、どこぞでお金を貯めたじいさんが夜な夜な飲み食いが出来るような店屋を始めたりする。この街がそうだった。

 S県I市。かつては海も山もある美しい温泉街のある観光地として栄えていた。しかしバブルと言うものが弾けたらしく、街も寂れに寂れ、もろ過疎地といった田舎になってしまったらしい。その対策として、XX年代の終わり頃、無理矢理デエエエンと建てられたのが、ありがちな量産型の小中高大一貫教育の学園だった。俺は小さなころからその寮で育った。最初のうちは不満はなかった。だが、やはり田舎には娯楽がないのだ。俺は寮と学校の往復という味気ない生活に耐え切れず、寮を飛び出した。そんな時に見つけたのが、この古いゲームセンターだった。

 可笑しな話だが、俺がまだこの学園の初等部に入ってきたときから、このゲームセンターは存在したと記憶しているのに、その時から今とそれほど変わらないくらい、古ぼけていたのだ。

 とにかくオーソドックスなゲーセンだった。格ゲー、麻雀ゲーム、音ゲー、レースゲームなどのビデオゲーム、あるいはメダルゲームなど、まあまあ良くあるゲーセンだったんだ。田舎では若者が都会に出てしまうので、ゲーセンなんて必要ないと思われがちだが、そうでもないのだ。大人や子供たちの社交場としての意味合いもある場所なのだ。

俺はこのゲームセンターで様々なゲームをプレーし、様々な人間と出会い、学校では感じることができない様々な体験をしながら育ってきた。

ただ、ゲームにも流行り廃りはある。今の時代、携帯電話やインターネットのオンラインゲームなどにゲーマーが流れて、ゲーセンは年々、寂しい状態が続いていた。盛者必衰。それは致し方ないことなのだ。

 それを打開すべく、このエッグは産まれることになったらしい。なんでも、この田舎町の発展のためにかなりの額を製作者サイドに提供したとか、これで観光客の誘致を狙っているとか、とにかくこのゲームには話題性があった。かなりの良作に仕上がったらしい。

 だが俺は、懐古主義のゲーマーではないが、新機種には、疑心暗鬼になってしまうタイプだった。なかなかこのゲームをプレーするに至らなかった。

ということで、俺がこのゲームのことを舎弟のハジメから教えてもらったのは、ちょっとばかし昔の話に遡る。

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