豊後
「申し訳ありませんでした!」
豊後のお城で軍議が開かれ、日向攻めに失敗した高橋紹運は頭を下げている。
「まぁよい、神が許してくれるぞ。」
大名の大友 宗麟はキリシタンであった。
「次こそは必ず。」
高橋は、大友の前から自分の席に戻る。
「イカズチを使う男の子か・・・、神の使いなのかもしれんな。」
大友は、神様に会ってみたいと思っていた。
「道雪。」
大友は、軍師の立花道雪を呼んだ。
「はい、殿。」
立花は、島津義久、鍋島直茂と並ぶ、自称天才の一人である。
「その少年に会ってみたい、連れて参れ。」
大友は、ライに興味津々であった。
「かしこまりました。必ずや捕らえて連れて参ります。」
立花は、なぜか自信満々だった。
「道雪には、雷は効かないからな、神の子に会えるのが楽しみじゃ~♪」
大友は、ライに会えるのを楽しみにしていた。
「これにて軍議を終わる。」
「はあ!」
家臣一同は、バラバラに散って去って行った。
「紹運、おまえが引き返して来るとは珍しい。」
立花と高橋が雑談をしている。
「雷に臆した訳でもなかろうに。」
立花は、高橋が日向を取らずに帰って来たのが不思議だった。
「日向の城は落城寸前だったんだが・・・。」
高橋は、言おうか言うまいか悩むが、
「現れた男の子の目を見たんだ。なんとかして守りたいという目をしていた。」
ライの純粋な目に引かれたのだ。
「そしたら殺すのが惜しく思えた。」
高橋は、武将ではあるが紳士でもあった。
「俺は、雷さえ斬れればいい。どんなガキか、会えるのが楽しみだ。」
立花は、ライに会えるのを楽しみにしていた。
「殿の命令は生け捕りだ、紹運、よかったな、男の子にまた会えるぞ。」
こうして立花は、ライ捕獲任務に出陣した。
「豊後へ、青春一直線~♪」
火ちゃんとライは、豊後の城を目指していた。
「火ちゃんは、元気ですね。」
ライは、島津歳久と家久が城を修復する時間を稼ぐために立候補した。
「元気と情熱だけが、火ちゃんの取り柄です~♪」
「ハハハ。」
ライは、元気な火ちゃんを見て、
(竜の使いの精は、みんなこんなんだろうか?)
と、海ちゃんも思い出し、首を傾げながら思った。
「豊後の妖怪も、川者、正吉河童、川姫、流れ行燈と平和です~♪」
「戦わないのが1番です。」
2人が進んでいると前から、
「あれは大友軍!?」
大友の一軍が迫って来て、ライたちは身構える。
「俺は立花道雪。おまえが雷を使う神の子だな?」
立花は、ライを上から見下すように見る。
「僕はライ。」
ライは、形式上の名乗りをする。
「ライ? チャラそうな名前だな?」
立花は、横文字をイメージで捉えた。
「あなたの方がチャラそうなんですが。」
ライは、珍しくもっともなこと行った。
「ハハハハハッ~♪」
立花は、おかしくてバカ笑いをする。
「おもしろい~♪ 紹運が気に入る訳だ!」
立花もライのことが気にいった。
「殿の命令で、おまえを向かいに来た。ご同行頂こう。」
立花は続けて言う。
「もし断ったら、このまま日向の城を攻め落とす。」
立花は、島津義久、鍋島直茂と共に、自称天才の1人であった。
「卑怯だぞ!!! 青春違反だ!!!」
火ちゃんがライの代わりに強く抗議した。
「僕が行けばいいんですね?」
ライは、豊後の城に行くことを決めた。
「さすがに子供は聞き分けがが良くていいね~♪」
立花は、お使いが片付いて、上機嫌だった。
「ライ、それでいいのか?」
火ちゃんは、心配するが、
「それで日向のみんなを守れるなら。」
ライは、お世話になっている島津家を守りたかった。
「悪いがもう一つ、どうしても聞いてもらいたいことがある!」
立花は、ライに自分の興味を言う。
「俺と手合わせ願おうか?」
立花は、どうしてもイカズチ少年と戦ってみたかった。
「いいですよ。」
日向を守れたことで、少しライは自信を取り戻していた。
「そう来なくっちゃ~♪」
立花は、ニタニタ笑いながら喜んでいる。
「雷を打って来いよ? リクエストだ!」
立花は、雷を注文して、ライを挑発する。
「わかりました。」
シャキーン。ライは、平然と立っている立花に向け、剣を抜く。
「俺の愛刀の名前は千鳥。」
シャキーン。立花も自分の剣の説明をしながら、剣を抜いた。
「百雷覇!!!」
ライは、剣を振り上げ、雷を呼び、振り下ろした。
「またの名を・・・雷切りっていうんだぜ!!!」
立花は、暗雲から雷鳴と共に降り注ぐ雷に挑む。ゴロゴロピッシャーン! 雷が立花の頭上に命中しそうになるが、
「必殺 雷切り!!!」
パカーン。雷が真っ二つに切り裂かれた。ドカーン。切り飛ばされた雷が地面に当たり爆発する。チリチリチリ。爆発した地面の草が徐々に燃えていく。
「そ、そんな・・・。」
ライは、百雷覇を破られて、ショックで自失して茫然としている。
「いいね~♪ まだ手がビリビリしてるぜ。」
立花は、雷を切った快感に酔いしれていた。
「百雷覇まで・・・。」
海竜雷覇も歴史ある者のヤマトタケルに破られた。
「大丈夫か? ライ?」
火ちゃんは心配するが、
「・・・。」
ライは、立て続けに必殺技を破られ、また落ち込んでしまった。
「さぁ、豊後の城に行こうか~♪」
ライは、立花に負け、豊後の城に連れて行かれることになった。
「殿、雷使いのガキを連れてきました。」
立花は、豊後の城までライと火ちゃんを連れてきた。
「よくやった、道雪。」
大友宗麟は、神様好きなので、神の子に会えるので、うれしそうである。
「して、神の子は、どこに?」
大友は、キョロキョロと周りを見渡す。
「とりあえず、牢屋に入れてあります。」
ライは、牢屋に入れられているようだ。
「すぐに連れて参れ。」
「はは。」
立花は、ライを呼びに牢屋に向かった。
その頃、牢屋では、
「・・・。」
ライは、必殺技を破られて、落ち込んでいた。
「ライ、また会ったな。」
ライの牢屋の前に、高橋紹運が現れる。
「あなたは・・・。」
ライと高橋は、日向で一度出会っている。
「どうした? 目が死んでいるぞ。」
高橋は、日向で出会ったライと別人の表情に驚いた。
「僕はダメなんです。僕の必殺技は全て破られました。」
ライは、暗い表情で腐っていた。
「そんなことか。」
「そんなこと!?」
高橋にはどうでもいいが、ライには大事だった。
「技が破られたんなら、新しい技を作ればいい。」
「な!?」
ライは、高橋の言葉に衝撃を受ける。
「負けたのなら、強くなればいい、それだけだ。」
「なに!?」
ライは、新しい技や強くなるということを考えたことがなかった。
「そんなに腐るのであれば、日向で殺しておけばよかった。」
高橋は、ライのこれからの成長に期待していた。
「ライと呼んでいたが、子供と呼び直そう。」
高橋は、ライを認めるのをやめた。
「おまえが強いのは実力ではない。剣のスキルで勝っただけだ。」
二竜雷剣が神の剣で、雷を扱えるからだと
「勘違いするなよ!」
高橋は、ライに言い伏せる。
「僕は、僕は、あなたみたいに強くない!」
黙って聞いていたライがキレた。
「好き勝手なことばかり言わないで下さい!」
ライの抑えていた気持ちが爆発した。
「子供の頃から、戦って、戦って、なんとか生き延びてきたんだ!」
ライは、西之島で生きていくのに必死だった。
「あなたに僕の何が分かるって言うんだ!!!」
ライが自分の感情を表に出すのは、人生で初めてかもしれない。
「あるではないか。」
「!?」
高橋は、ライを少し笑って見つめている。
「それだけ自分の意見が言えれば大丈夫だろう。」
「え?」
ライは、不思議そうな眼差しで高橋を見つめている。
「ライ、おまえが強くなるのはこれからだ、生きろよ。」
そういうと高橋は笑顔で牢屋から去って行く。
「・・・。」
ライは、高橋の去りゆく背中を見て、
(・・・カッコイイ。)
高橋の人柄に、子供ながらに憧れた。
(・・・あの人のようになりたい。)
ライは、豊後の名将に心が奪われたのであった。
とある場所。
「あれれ?」
歴史に名を残す者のおもちゃ大好き卑弥呼が帰ってきたら、
「藤原くんがいない?」
メガネっ子の藤原道長である。
「ハハハハハッ~♪」
「誰だ!?」
どこかからか笑い声が聞こえる。
「僕だよ、僕~♪」
「源くん!」
4人目は、源頼朝だった。
「卑弥呼が遊びに行っている間に、新型の鬼を開発に成功してたよ~♪」
そう、化け物こと鬼の、新型の鬼マークⅡを開発していたのだ。
「ええ!? 藤原くんは手柄の独り占め!?」
卑弥呼は、新型のおもちゃで遊びたかった。
「今頃、豊後の城に着いてるんじゃないかな?」
源は、どうなるか楽しみだった。
「行き違いか、新しいおもちゃで遊びたかったな。」
卑弥呼は、ガッカリと残念がる。
「そんなに頑張らなくても、壇ノ浦には怖い人が待ってるのにね~♪」
源は、既に先の展開も考えていた。壇ノ浦と言えば、あの人だ。
「そなたが神の子か?」
豊後の城の中庭。大名の大友宗麟の前に、
「え? 僕は人間です。」
ライはいた。
「コラ! ガキ! 殿に口答えするな!」
立花道雪は、口が悪いが忠義に厚かった。
「・・・。」
高橋紹運は、黙って殿の側で待機している。
「そなたはどこの出身か?」
大友は、ライに興味津々である。
「西之島です。」
「西之島!?」
大友は、大いに驚いた。
「あの幻の神が住むという、神の国か!? 本当にあったのか!?」
西之島は、日本では未確認の伝説のパラダイスであった。
「神の国? 西之島は、ただの島ですよ?」
ライは、そこで普通に暮らしていたので、不思議な感覚である。
「だから、殿に口答えするんじゃねえよ! クソガキ!」
立花は、誠に忠義深かった。
「そなたはどうして、雷を使うことができる?」
「それは・・・わかりません。」
ライは、とりあえず海竜の話をしなかったが・・・、
「雷神、タケミカヅチが宿っているから。」
どこからか女性の声が聞こえてくる。
「なんだ!?」
全員が辺りを見回すと、
「彼は、神を宿す者ですから。」
上空に一人メガネっ子がいた。
「何者か!?」
大友が尋ねる。
「私は、歴史に名を残す者の藤原道長です。」
メガネっ子は、真面目で礼儀は正しかった。
「え!?」
ライには、衝撃と苦い記憶がよみがえる。
(ヤマトタケル・・・。)
ライは、歴史に名を残す者のヤマトタケルに薙ぎ払われた。
「怪しい奴め! 降りてこい!」
立花は、藤原くんに命令するが、
「もう用事は終わっています。あとは・・・結果を見るだけです。」
藤原くんは、笑いもせず、眼鏡の位置を少し触る程度に動かした。
「うわぁ!」
なんだか大友の様子が変だ。ムキムキムキ。大友が化け物に変化していく。
「ワンワン!」
ライのペットの妖怪発犬のハチの霊が吠える。
「殿!」
立花、高橋は変化していく殿を見て驚く。
「プワー!!! プワー!!!」
大友は、頭が2つ、腕が4本、足も4本の姿になり、
「私の最新作、鬼マークⅡです。」
藤原くんの自信作であった。
「殿! なんということだ!?」
高橋は、殿が変わり果てた姿になり驚く。
「コラ! 貴様! 殿に何をした!?」
立花は、藤原くんに怒鳴る。
「暴れてください、鬼さん。」
藤原くんは、丁寧な言葉使いで鬼に命令する。
「プワー!!!」
化け物こと鬼が、
「うわぁ!」
立花をパンチ攻撃で吹き飛ばす。
「道雪!」
高橋は、吹き飛ばされた立花を心配する。
「殿、すぐに助けますぞ!」
高橋は、切込もうとするがどう戦えばいいのか分からないで戸惑った。
「ちょんまげです! 化け物の弱点は、ちょんまげです!」
ライは、高橋に化け物の弱点を教える。
「わかった。かたじけない。」
高橋は、化け物の弱点が分かった。
「分かった所で、鬼マークⅡは鬼のパワーも2倍、そして・・・。」
藤原くんの汗と地と涙で完成した鬼マークⅡは、
「ちょんまげも2個あります。」
頭が2個あるので、当然、ちょんまげも2個あるのだ。
「簡単に倒せると思ったら大間違いですよ。」
藤原くんは、相当の自信があった。
「ライ、受け取れ!」
火ちゃんが現れ、ライに二竜雷剣を投げて渡す。
「火ちゃん、ありがとう。」
ライは、剣を片手でしっかりと受け止める。
「どうやって牢から?」
高橋が不思議なので火ちゃんに聞く。
「ちょっと焼いちゃいました・・・エヘヘ。」
火ちゃんは、火竜の使いの火の精である。
「ライ、私がおとりになるから、ちょんまげを狙え。」
高橋から作戦が言い渡される。
「命令ですか?」
ライは、自分より強いと認めた者には従順である。
「ん? 化け物を倒すための命令だ。」
高橋は、少しおかしいと思ったが、今は気にしている場合ではなかった。
「承知。」
ライは、スッと立って、化け物との間合いを計る。
「ライ、生きろよ。」
高橋は、ライに意味深げに言葉を残す。
「え?」
ライは、その言葉に嫌な感じを受ける。
「プワー!!!」
化け物が突進して来る。
「でやぁ!!!」
高橋は、ダメージを覚悟しながらも正面から受け止めにいく。
「ここは海から遠いので、海竜覇は使えない。」
上空に浮いている藤原くんの分析が始まった。
「雷を降らせば、味方まで巻き込むので打つことはできない。」
しっかりと、海竜雷覇の対策を考えていたのだった。
「私の勝ちは99・9%です。」
藤原くんは、上空から人間を見下していた。
(ダメだ、早く打たないと、あの人の命が・・・。)
ライは、高橋は化け物に突撃して死ぬつもりだと悟った。
(でも、海竜雷覇は打てない・・・どうすればいいんだ!?)
藤原くんの言う通りだった。
(どうすればいいんだ・・・。)
もがき苦しむライに、牢屋での高橋の言葉が響く。
「技が破られたんなら、新しい技を作ればいい。」
「負けたのなら、強くなればいい、それだけだ。」
「ライ、おまえが強くなるのはこれからだ、生きろよ。」
ライの胸に高橋の言葉が勇気を与えてくれる。
「よし!」
ライは、決心し剣を振り上げ、
「火竜覇!!!」
振り下ろした。
(これが僕の新しい必殺技だ!)
火竜から竜玉を託され、新しく火の必殺技も使うことができるようになったのだ。
ボボボボボ!
火竜のような姿をした炎が、化け物に襲い掛かる。
「プワー!!!」
化け物が高橋とぶつかる瞬間に、化け物は炎に包まれる。
「うわぁ!? 炎!? ライか!?」
高橋も目の前で燃えている化け物を見て驚く。
「炎!? 神を宿す者が炎まで使えるなんて聞いてないわよ!?」
藤原くんは、自分の想定外の出来事に焦りを隠せない。
「燃えろ! 化け物!」
ライの火竜覇で化け物は燃え続けている。
(もっと! もっと! 僕は強くなる! 炎が燃え盛るように! )
ライは、自分の生きる意味を得た。
(強くなって、みんなを助けるんだ!)
それは、自分に自信があることよりも大切なことを見つけた。
「プワー!!!」
化け物は、燃え尽きて、シュシュシュ。人間の姿に戻り、
「殿!?」
呼びかける高橋に、まるで笑っているみたいだった。ビュウー。風に吹かれて、砂のように消えていった。
「私の新型が・・・、私の血と汗と涙が・・・。」
藤原くんは、努力の結晶、鬼マークⅡが壊されて脱力感に包まれる。
「さようなら。」
藤原くんは、そう言うと、あっさり去って行った。
「待て!」
ライは、追いかけようとするが、藤原くんの姿は消えてしまった。
「ライ、ありがとう。殿は笑って、天に召されていったよ。」
高橋は、ライに感謝する。
「いえ、僕がもっと強ければ、歴史に名を残す者も倒せたのに・・・。」
ライは、自分の性だと思ってしまう。
「自分を責めるな、私はおまえのおかげで生きている。」
「え。」
ライは、高橋の命と、大友の魂を救った。
「ライ、これからは一緒に化け物と戦おう。」
「承知。」
これにて、ライと高橋連合軍ができた。
「いいね~♪ これこそ青春一直線だ~♪」
火ちゃんは、明るさと情熱の青春が大好きな火の精。
つづく。