7(ウィル視点です)
メルンの花に囲まれ、横たわるユーリ。
それはとてもとても美しかった。
護衛から庭に倒れている、と報告を受けその場に向かいユーリを見た時は、どこか天使が迷い込んできたのかと思ったくらいだ。
陽の光で黒い髪がキラキラと輝く。風にふわりと揺れる。
どこか幼さを残す寝顔。
私の心の中で何かが芽生えた。
その芽生えた何かが、恋だと気付いたのはユーリに結婚相手がいた、と聞いた時だ。
その時の感情といったら、自分自身でも恐ろしくなるくらいの黒い感情。
ユーリを捨てたという怒りと、ユーリの結婚相手だったという男への嫉妬。
なぜユーリを捨てた?
なぜユーリを悲しませる?
なぜユーリが一人にならなければならない?
目の前に捨てた男がいたら、間違いなく切りつけてしまっていただろう。
私なら。
私なら。
私なら。
心の中で何度そう言ったかわからない。
私ならユーリを幸せにしてあげられるのに。
一人になんてさせない。
不安になんてさせない。
ユーリの笑顔が見られるのなら。
私はなんだってしてあげよう。
しかし、ユーリは一人で生きていく、と言う。
戻れるのなら、戻る、と。
戻れないのなら、一人で生きる術を探す、と。
真っ直ぐに私を見つめる漆黒の瞳の奥から、その強さを感じ取れる。
彼女は強がって言っているわけじゃない。
それはしっかりとした彼女なりの決意。
そんなユーリがたまらなく愛おしくなった。芽生えた恋心が一気に咲いた。
たまらず彼女を抱きしめた。小さくやわらかい身体。
ユーリを守りたい。
そして私のものにしたい。
あちらの世界になど戻らせたくない。
戻る術など見つからなければいいのに。
けれど、それはユーリの本意ではない。
だから、戻る術は探してやる。
でも、もし見つける事が出来なかったのなら。
私と共に生きていこう。
私がお前を守ろう。
私がユーリを幸せにしてやろう。