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食事の後。


それはもうしつこく過去の恋愛遍歴を聞いてきて。


どんな男だったのか。

どんな付き合いをしてきたのか。

どのくらい付き合ったのか。

どこに惹かれたのか。


忘れようとしていたことも全て掘りおこされるように、ねちねちと。

最後はやけになって洗いざらいい思い出も悪い思い出も全て放出してしまった。

話していくにつれてウィルの顔が険しくなっていったのは多少気にはなったけど。

でもまあ、おかげさまでスッキリ、ふっきれた。


珍しく、次の日はイザベラに起こされる結果となった。

「おはようございます、ユーリ様。朝ですよ。起きて朝食のご準備を」


そういえば今日からお城の敷地内なら自由に出でもいいんだっけ。そして、恐怖?の王様達との食事。

「はっ!おはようございます!イザベラさん!!ごめんなさい、寝過ごしたみたい!!」

急いで身を起こす。

「大丈夫ですよ、珍しいですね。昨日の疲れが響きました?」

「疲れというか・・・スッキリしたみたいで・・はは」


ふふっとイザベラは笑い、今日の着替えをくれる。

「今日から食堂でのご朝食となりますので、少し着辛いドレスとなりますが、我慢下さいませ」

でも、今日のドレスは落ち着いたブルー。

「今日のドレスは珍しくシックね」

「皇太子殿下がお歳を考えて選びなおしたみたいですわ」

10代らしいドレスを今までチョイスしていたのか。

どうりで・・・

「って、ドレス、ウィルが毎日選んでたの!?」

「ええ。そうですわ。本来は私共がお選びするのですが、皇太子殿下が決めるときかなくて」


彼氏でもない人がそこまでわたしのためにやってくれるなんて。

「忙しいのに・・・。とても申し訳ないわ」

「気にいられたのでしょうね、ユーリ様のことが。あの方はとても素直でいらっしゃるから」


気に入った?

いやいやいや、そんなわけない。

こんなおばさんに。


「さあ、早く着替えましょう。手伝いますわ」





「おはよう、ユーリ。準備は出来たか?」

着替えを済ませ、軽く髪型を直している時にウィルがドア越しに声をかける。

イザベラがドアを開け、私は廊下に出る。

今日のドレスは色はとてもいい。が、胸元まで少し開いていて少し恥ずかしい。寄せて上げてしないとない胸なんだから、こんな貧相なの出来れば隠したい。

「ええ。でもウィル、今日のドレスは恥ずかしいわ。色はいいんだけど。もう少し、ここらへんが隠れるようなドレスがいいんだけど」

と胸の部分を隠しながら言う。

「そうか?とても似合っているが。胸元が少し出ている方が色気あって魅力的だぞ」

こんな胸なしさんのどこに色気が?と思ったけれど、ドレスを変えてくれる気はないらしい。

「行こうか。王達がお待ちだ」

仕方なく食堂へと行く。


お城の中はとても広い。

長く続く通路。


ヒールは通勤で履いているから慣れているけど、足まで隠れるドレスなんて着たことがないからとても歩きにくい。


「ドレスで歩くことがないから歩きづらいか?手を貸してやる」

スッと私の前にウィルの手が差し伸べられる。

「あ、ありがとう。裾を踏みそうで」

手を繋ぐ恥ずかしさはあるけど、転ぶ恥ずかしさほどじゃない。ここは素直に助けてもらおう。


繋いだ手がとても大きくて、それでいてあったかい。

胸がとくん、と高鳴った。



「到着でございます。・・・失礼いたします」

目の前の大きな扉には、見事な装飾と彫刻が施してあった。



「おはようございます。父上、母上。こちらがユーリでございます」

王と王妃にウィルが紹介する。おそるおそる食事の席に座る王達の前へ行く。


「お、お初にお目にかかります。私、悠里と申します」


深々と礼をした。


「おお、そなたがユーリか。そんなにかたっくるしい挨拶はいらんぞ。顔を上げよ」

ゆっくりと顔をあげる。


目の前にいる王は、ウィルよりも一回り大きく見える。がっちりとした体格で、でも目鼻立ちのハッキリとした渋い方だ。瞳の色はウィルと同じ。吸い込まれてしまいそう。

隣に座る王妃もとても美しい。顔に皺ひとつなく、とても子供を二人生んだなんて信じられないスタイルだ。ここはハリウッドなのか?と勘違いしそうなくらい美形揃い。ああ、気が引ける。

「あら、かわいいお嬢さんね。さ、早く座って。いただきましょう」

ここでもウィルが椅子を引いてくれる。申し訳なさそうにわたしは座る。



ここでも王と王妃から質問攻めを受ける。

答えるのに必死でなかなか食事が取れない。

スープを一口飲んでは答え、パンをひとかけら食べては答え。

最後は水ばかり飲んでいたような気がする。



食事も済み、話もひと段落。

「いやいや、なかなか興味深い話だったな。また聞かせてくれ」

「ええ。面白かったわ。またお話を」

「は、はい。こんなお話でよければ」


王はそう言うと、王妃の手を引き部屋を出る。


王達がいなくなると、とたんに身体から力が抜ける。


「ああ、緊張した・・・」

「なかなか話が途切れなかったな。途中で何回も止めたんだが・・・、申し訳ない。あまり食事が取れなかっただろう?」

「まあ、どのみち緊張して食べれなかっただろうから、大丈夫よ」


食事中、ウィルは王と王妃に対して「食事を先にいたしましょう」と制してくれようとしてたんだけど、すぐ話が再開してしまう。その度にむっとした顔を覗かせていた。

これから毎日質問ぜめな食事になるのかと思うと正直きついけど、仕方ない。慣れるしかない。上手く話の合間に食べられるようにしないと。



「そうだ、今から城の庭を散歩でもしないか?ここ何日か部屋から出られなかったし、飽きてしまっただろう?気分転換にでも」

「うわ!久しぶりの外!行きたい!あまり動いてないから身体もなまっちゃってるし。あ、でもウィルお仕事は?」

ついつい嬉しくて大きな声で言ってしまう。

いけない、おしとやかさが足りない。

「今日は休みだ、私がこの城の周りを案内しよう。・・・行こうか」




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