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それから何日たったのだろうか。

何があるかわからないから、と指示されるまでは引きこもりの生活。

どうやらわたしが庭で倒れていたことはごく少人数の人しか知らないらしく。

一通りの生活用品が揃っているこの部屋で、わたしは不満なく生活できていた。


ここに来てからというもの。

寝る前に(朝起きたら自分の部屋に戻っていますように)と願いながら寝る。

これは夢なんだ、と。


でも目が覚めるとやっぱり彫刻された天井がある。

ああ、やっぱり夢じゃないんだ、とうなだれて起きる。

これが日課になっていた。


「もうお目覚めになられたのですね、ユーリ様」


起きてから少したった後にイザベラは部屋に入ってくる。

この世界に時計はないようだ。日の出入りで大体の生活を決めているみたい。

自分の世界では毎日6時に起きて、お弁当作って会社行く準備して、って身の回りは自分でやってきたから、やってもらう生活がとても新鮮で、でもなんか申し訳なかった。

「おはようございます。イザベラさん。どうも自分の生活パターンが抜けなくて、日が昇るあたりに起きちゃうんです」

「イザベラでいいと何回も言いましたのに。堅苦しい言葉も要りませんわ。お腹が空きましたでしょう?お食事の準備をいたしますわね。その間にお着替え下さいませ」

と着替えのドレスを渡される。

「あ、ありがとう」


用意されたドレスを着る。

淡いピンクのシンプルなドレス。いい歳したわたしには着る事がない色だ。

ぎっちりとお腹を固定するようなドレスではないから、着心地はそんなに悪くはないけれど。


「あと10歳若かったらねえ・・・喜ぶんだけど」

どうも毎日渡されるドレスが、少女趣味なパステル色が多い。

・・・そういえばまだ歳も言ってなかった。

イザベラさんもウィルも身長が高い。わたしは155あるかないか。きっとみんな大きいんだろうな。

「顔のふけ方は歳相応だと思うんだけどなあ」

ため息をひとつついて、しょうがなくそのドレスを着た。


「ああ、似合わない色・・・」

形は悪くないドレスなのに、色が残念。


「着替え終わりました?」

ドア越しにイザベラの声。

「あ、はい!終わりました!」


失礼します、と食事を持って入ってくる。


コンソメスープにあっさりしたドレッシングのかかったサラダ、それに焼きたてのパン。ベーコンやソーセージのようなものもある。朝らしい食事。あっちでは毎朝納豆と味噌汁の朝食だったから、新鮮で感動する。


「いただきます。あ、今日もウィルは来るの?」

「はい。昨日と同じ日の入りのあたりにいらっしゃいます」

ウィルは毎日夕方に部屋へやってくる。夕飯を一緒に取りながら色々とわたしの世界の事を聞く。

ここの世界とはまるっきり違うらしく、それはとても興味津々で。

わたしも話し相手がイザベラしかいないので、ついつい話が長くなってしまう。毎日闇が深くなるまで話し込んでしまう。

「毎日遅くまで申し訳ないわ。今日は軽くで終わらせないと」

「皇太子殿下も楽しそうにいらっしゃるので、あまり気になさらずお話されてもよろしいのでは?」

「そう?でも毎日遅いから、寝不足になっていなきゃいいのだけど。イザベラも毎日付き合っていて寝不足じゃない?」

あの後イザベラにはわたしの事を話したようで、ウィルが部屋から帰るまでいてくれている。男女が遅い時間まで二人きりで部屋にいる、というのも良くないそうだからいてくれているのだろうけど。

「大丈夫ですよ。それにあんなに楽しそうにしていらっしゃる皇太子殿下を見るのも初めてですわ」

「そうなの?」

「ええ。あの方はあまり人前では笑顔を見せない方でいらっしゃいますし、あまりお話もする方ではありませんから」


「・・・へえ」

あまりそういう風には見えなかったから意外だった。

「今は皇太子殿下とお呼びしていますが、2つ上の兄がおります。兄のルード様は同盟国である隣国のラスイに、語学や戦闘指揮の勉強の為に行っておられます。ルード様が帰って来られた際には皇太子を兄に戻し、王位継承権を放棄して爵位を得られる予定になっているのです」

「じゃあお兄さんが戻るまでの代役の王子様って事なの?」

「そういうことになりますね。この国は比較的平和ですが、国外では戦争をしている国もありますので」


・・・戦争かあ。

どこの世界でも争いごとってのはなくならないのね。

「お兄さんっていくつなの?」

「お歳でございますか?ルード様は今年で22歳になります」

「22か・・・・ってにじゅうに!?」


おどろいた・・・。2つ上で22だから・・・、ウィルって20歳なのね。


「・・・若いねー、見えなかったわ、そんな歳に」

話しながらも食事を終えたわたしは、出された食後のティーを飲みながらため息をつく。

「皇太子殿下は大人びいて見えますからね。そういえばユーリ様のご年齢を聞いてませんでしたわ」

「あ、わたし?25よ、25。巷の結婚ブームに乗り遅れた行き遅れの25歳」

若干投げやりに言葉を投げる。

そうよそうよ、すっかり忘れていたけど、何日か前にフリーになった行き遅れの女ですよ。

「まあ!25歳!!私まだ20歳になられていない方だと思っておりましたわ。ユーリ様の世界では歳よりも若くお見えになられるんですねぇ」

イザベラはまじまじとわたしを見る。

やめてよ~。肌のハリもなくなりつつあるんだから。

歳よりも若く見られるのはうれしいけどさ。

「きっと背の小ささと化粧をしてないからそう見えるだけよ。歳相応だと思うわ」

「ユーリ様の世界ではご結婚も遅いのですね、ユーリ様はまだ独身なのでしょう?」

「うーん、まあひとそれぞれだけどね。早い人もいるし、結婚しない人もいるし。わたしの場合は相手はいたんだけど、結婚する話もなくダメになっちゃって、一人よ」

「まあ。こんなに、かわいくていらっしゃるのに」


かわいい?

なんていつぶりに聞いた言葉なんだろう。


「あ、ありがとう。子供の頃以来だわ、そんな事言われたの」

お世辞でも嬉しいです。

無意識に笑顔で返す。


「そのドレスもお似合いですよ。さすが皇太子殿下ですわ。・・・ではお食事下げますね」

イザベラも笑顔でそういうと食事を下げに部屋を出て行った。


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