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目を覚ます。

いつもの彫刻された天井が映る。

ひとつ違うことと言えば、目を覚ました時にウィルが隣にいた事。


「目を、覚ましたか?ユーリ」


心配そうに、わたしの手を握り締めながら呟く。

「わたし、倒れて・・・」

「・・・ああ。私が部屋に運んだ。・・・すまない。わたしの力が至らないばかりに・・・」


そうだ。帰る方法がないと聞いて、ショックで気を失ってしまったんだった。


・・・もう帰れない・・・。


これから、どうしよう。どうしたらいいんだろう。

心のどこかで帰れると思っていたから、帰れなくなったとわかった今、これからどうしていったらいいのか考えようとするけれど、頭がうまく働かない。


顔を動かし、ウィルを見る。

ウィルは俯いていた。肩が少し震えている。


「・・・泣いているの?」


わたしは少し身体を起き上がらせると、握られていない手でウィルの髪を撫でる。


「泣かないで・・・」


震えた声で、ウィルは口を開く。

「こんなに、わたしの力がないと思い知らされたのは初めてだ。・・・もっと早く、オウラの陰謀を知ることが出来ていたのなら、ユーリはこの世界に来る事もなかったのに。私のせいでユーリは・・・」

「・・・あなたのせいじゃない。そんなに思いつめては駄目よ」


こんな立派な人が、わたしの為に泣いている。

わたしの事を思って泣いてくれている。


これから先、一人で生きていくとしても。

この世界で何があっても。

あなたがわたしの為に、そこまで思っていてくれた事。

それだけでわたしは生きていけるわ。


「ウィル・・・ありがとう。私のために泣いてくれて。わたし、それだけで充分よ」


少し落ち着いたのか、ウィルは顔を上げてわたしを見る。

「・・・ユーリ、ユーリはあのメルンの花の庭で、私が言った言葉を覚えているか?」

「・・・結婚の話?」


「ああ。あの話。本気で考えてくれないか?」


その言葉に、心の中がざわつく。

「その話は、・・・わたしを慰めるためだけの言葉じゃないの・・・?」

「・・・どうして?」

ウィルの瞳がわたしを捕まえて離さない。


「っ・・・だって、あなたは若くて、格好良くて、この国の王子様・・・・こんな身寄りもない、どこから来たのかわからないような年上の女・・・」

「そんなことは関係ない」

「関係あるわ。わたしと一緒になったって良い事なんか何もない・・・。あなたにはもっといい人がいるはずよ」

「そんなことはない」

ベッドに腰掛けるようにして、ウィルはわたしの両手を自分の大きな手につつんだ。そして、口元に近づける。


「なぜ、私が泣いたかわかるか?・・・もちろん自分のふがいなさもある。でも、それだけじゃない。お前が帰れない事に安心して、喜んでいる自分に絶望して泣いたんだ。ユーリの本当の願いは戻る事なのに、それを望んでいない自分がいて、泣いた」

ウィルは切なく笑う。

「私は善人じゃない。所詮その程度の男なんだ。お前の幸せよりも、自分の気持ちを優先した。・・・ごめん」


「ウィル・・・」

そんな風に思っていたなんて、知らなかった。

あの時、ああ言ってくれたのも、全てウィルの本当の気持ちだった。

それをわたしは・・・。


「本当は、あのメルンの花の中で、ユーリにもうひとつ言葉を伝えたかった。でも、その言葉を言ってしまったら私はお前を返せなくなる。自分のものにしてしまいそうだった。だから、言えなかった」


「・・・言ってもいいか?」


わたしの瞳からひとつ、またひとつと涙がこぼれる。

無言で頷く。



「ユーリ、お前のことを愛している」






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