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パーティーから1週間後、その機会は訪れた。


ウィルに案内され、城の中にある部屋に通される。そこは城の中の一番端、魔術士長ヴォルグがいる部屋らしい。

「お待ちしておりました、ウィル様、ユーリ様。私、この国の魔術士であるヴォルグと申します」

魔術士と聞いて、白髭を蓄えたおじいちゃんみたいな人を想像していたのだが、大分違った。歳は30代くらいだろうか。目は少し細いが、整った顔をしている。ローブで身体全体を覆っているが、身体の線は決して細くはない。

「これで、全員揃いましたね。みなさん、座って」

部屋の壁側には天井までの本棚あり、びっしりと厚い本が並んでいる。窓はあるがカーテンで遮られ光も入らない。テーブルには蝋燭が灯され薄暗く、嗅いだことのない不思議な臭いがする。

椅子に着いていたルードに促され、着席した。

「ここならば、他に話が漏れる心配もない。始めましょうか」

「早速ですが、何の為に?」


こほん、と咳をした後、ルードは理由を話し始めた。


「単刀直入に言うと、我が国を手に入れる為という理由です」


「この国を・・・!?」

ウィルの表情が一瞬にして厳しくなる。

「ええ。もう少し詳しく言うと、我が国の同盟国を手に入れる為。最終的にはこの国もオウラのものにしようとしていたみたいです」


「そんな、恐ろしい事が・・・」


ウィルの額から一筋汗が流れた。かなり動揺しているのだろう。

「ですが、オウラはこの国より遥かに戦力も魔力も劣ります。我が国の同盟国に戦争を仕掛ければ、我が国も必然的に戦争に参加する事になる。そうなれば、オウラはまず勝てない」

「それと、わたしがここに来たのにはなんの関係が・・・」

「そう、そこでオウラはこの世界で禁術とされている召喚術を使った。より強力な知能と魔力を持つ者を召喚するために。その者の力を借りて戦争をしようとした」

「そ、そんな力、わたしには・・・」

「でも、術は失敗してしまった。何も関係のない、ユーリ、あなたが召喚されてしまったのです」


沈黙の時間が流れる。


そんな。

わたしは間違いでここに来たって事?

本来ここには来るはずのない人間だったって事?


「オウラも失敗したことで躍起になって探していたみたいですが、如何せんユーリには魔力がない。痕跡を辿る事も出来ない。結局召喚自体出来なかったという結論で落ち着いたみたいです」


体中から力が抜ける。

意識がなくなりそうだ。


「で、オウラには?」

「大丈夫。そういった陰謀がわかった以上、こちらも静観しているわけにはいきませんからね。手は打ってありますよ。安心してください、ウィル」

ルードは、怪しくも恐ろしい笑みを浮かべた。

「さすが兄上ですね・・・。私だけで調べようとしていたらとんでもない事になっていたかも知れない」

「逆に私を頼ってくれて助かったんですよ。ヴォルグ、ありがとう」

ヴォルグは黙ってルードに一礼をする。


「で、ユーリ。あなたを元の世界に戻す術、ヴォルグが色々と調べてくれました」

ルードはわたしを見る。その顔はあまり冴えない。

「・・・はい。ここからは、私ヴォルグがお話をさせていただきます。ウィル様からお話を頂いてから、あらゆる古文書、魔術書を調べました。そして、あるひとつの魔術を見つけました。逆召喚の魔術です。ここにいる者を違う世界に飛ばしてしまう魔術。今では殆ど使われる事のない魔術です」

「その魔術で、帰れるのね?」

ヴォルグの言葉にわずかな期待を持った。


帰れる。元の世界に。

わたしの住むあの世界に。


「ですが・・。この魔術は、実は、ユーリ様のいた世界に確実に帰れる、と確証がないのです。もしかしたら帰ることが出来るかもしれない。でも、違う世界に行ってしまうかもしれない。私達には確認する術もない。非常に危険な術です」


期待はその言葉で一瞬に砕け散ってしまう。

「ユーリ様の世界で、召喚の術を使う者がいれば帰れるとは思いますが、ユーリ様の世界に魔力を持つ者もこの術を使える者もいない。この世界では呼び寄せても、元の世界に確実に戻す術がないのです」


そんな・・・。

そんなことって・・・。


目の前が真っ暗になる。

「うそ・・・嘘よ・・・。じゃあわたしは・・・」

「・・・どうしても、と言うならこの術をかける事も可能ですが・・・止めておいた方がいいと思います」


わたしはこの世界から帰れない。

どうすればいいの?

どうすれば・・・・


「ユーリ!!!」


ウィルの声が聞こえる。

頭も身体も動かない。

ただ重力に導かれるまま、わたしは気を失い倒れた。

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