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いよいよ明日となった。

お城の中も明日に向けて慌ただしくなっている。

私も、イザベラのスパルタ特訓のお陰で必要最低限の事は出来るようになった。・・・と思う。

「今日はダンスのレッスンを皇太子殿下が自ら行うそうなので、今までの練習の成果を披露して下さいね」

結局今日までウィルと会う事はなかった。

気持ちの整理も全く出来ないまま、ウィルと会う事になる。


本番さながらにメイクもドレスも着て、ダンスの準備をする。仕上がっていくにつれて胸の高鳴りが一段とうるさくなっていくのがわかる。

ウィルに聞こえなければいいな。何回も気持ちを落ち着かせようと深呼吸をした。


「ユーリ様、皇太子殿下がいらっしゃいましたよ」


久しぶりに見るウィルの姿。

「ああ、とても綺麗だよ、ユーリ」

ウィルの低い声が身体にまとわりつく。ウィルは笑顔で目の前に立っている。青色の瞳に吸い込まれそうで、まともに顔を見ることが出来ない。目線を逸らし俯いてしまう。

「お世辞はよして。・・・恥ずかしいわ」

「顔を上げて、ユーリ。もっと君の顔が見たい」

どうして、そういう事を言うの。

惑わさないで。

顔を上げることが出来ない。そんなわたしを見てウィルは軽くため息をついた。

「恥ずかしがり屋だね。ユーリは。」

「しょうがないでしょ。そういう言葉に耐性がないのよ。」


「・・・じゃあ、踊ろうね。ユーリ嬢。お相手願いますか?」

私の前に手を差し延べる。

「・・・はい。喜んで」

戸惑いながらも、その手に右手を預けた。


ゆったりとした音楽が流れる。音楽に合わせてウィルにリードされながら踊る。ウィルの身体に密着している部分が熱い。顔も近くにあって、ウィルの吐息がかかる。

「少しぎこちないが、上手いよ。よく頑張ったね」

「イザベラさんのお陰です。一生懸命教えてくれたから」

「スパルタだっただろう?逃げ出さないか心配していたんだが」

「逃げません。迷惑のかかることなんてしないわ。いい大人だもの」


・・・子供扱いして。わたしはあなたよりも年上なのよ。


「ふふっ、じゃあもっと堂々として。もう少し私に近づいた方が踊りやすい」

というと、腰を引き寄せた。

「きゃっ!」

さらに密着する身体。

「ち、近付き過ぎだわ」

「腰を引かないで。私に身体を預けて」

これじゃあまるで、抱き締められてるみたいじゃない。

心臓の音が伝わってしまう。

だめ。悟られたくはないのに。


踊りながら、ウィルは口元をわたしの耳に寄せる。

「明日は決して私の側から離れてはいけないよ。私の隣りにいるんだ。そして、私以外の誘いは断るように。いいね?」

と、ウィルは囁いた。

ウィルの吐息と声が、わたしを支配していく。

まるでなにかの魔術にかかったかのように、身体に力が入らない。

周りの音が聞こえなくなって、ウィルの声だけが私の中に響く。


「返事は?」


「・・・っ、はい・・・」

声にならない声で答えた。それが精一杯だった。


「いい子だね」


そう言うと、ステップを止める。

そしてにこりと笑って、わたしの顎を引き上げキスをした。


「!!」


あまりの出来事で思わずウィルの身体を押して離れる。



「な、なんで・・・」


困惑しているわたしの向かいで、ウィルは笑みを浮かべていた。


「明日は何があっても動揺してはいけないよ。常に凛と構えていること。わかった?」


なによ・・・それ。

それを言いたいためだけにキスをしたの?

そのためだけに?


「・・・いきなりキスなんかされたら、誰だって動揺してしまうわ」

「大人、なんだから出来るだろう?」


・・・意地悪。

わたしをからかってるのね。

いきなりに慣れていないわたしを面白がっているんだわ。


キッとウィルを睨みつける。からかわれた悔しさで涙が溢れそうになる。

「後は常に笑っていること。顔が怖いぞ、ユーリ」

「誰がこんな顔にさせてると思ってるの」

「・・・私のせいか?でも私は謝らないよ」


・・・悔しい。

こんな人だったなんて、知らなかった。


「じゃあ、私は準備があるからまた明日。今日はゆっくりお休み、ユーリ」

そういうとウィルは部屋から出ていく。

ウィルが出ていった後、我慢していた涙が一斉に溢れ出た。


「ユーリ様・・・!」

イザベラが心配して、わたしの背中をさする。


悔しい、悲しい、切ない、苦しい。

その感情がわたしの涙を溢れさせている。


悔しいのはからかわれたから。

悲しいのはそのキスに感情はなかったから。

切ないのは気付いてしまったから。

苦しいのは諦めなければいけないから。


わかったの。

わたしはウィルに恋をしてる。


でも、わたしはこの世界の人間じゃない。帰らなくてはいけない。

ウィルにはわたしよりもいい人がいるのよ。

わたしがひとりだから助けてくれるだけ。恋愛感情なんてないの。

ウィルの隣にいれるのは、わたしじゃないの。


止まらない涙。どうしてこんなに苦しくならなきゃいけないの?



早く帰りたい。

こんなに苦しいのなら。

早く帰る方法が見つかればいいのに――――



・・・なんかいろいろとごめんなさい(泣)

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