才能と魔力と練習と
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「さて、ジュンくん。君がその気ならまず魔法がなんであるか、どのように操作するかと言うのだけなら教えられるけど、聴いてみたいかい?」
「はいっ お願いします」
「ははは、そんなに焦らなくてもいいんだよ。魔法の適性があった子供すべてにやってあげてるからね。シャニーとダイナはもう帰るといい、仕事が残っているだろう? この子はわしがきちんと責任もって送り返すよ」
「神父様にそんなことまで……」
「気にするでないよ。私は子供が好きだしの」
両親は「それならよろしくおねがいします」と一礼し、教会を出て行った。
「では早速だがジュンくんに質問をしよう」
「はい、何でしょう神父様」
魔法に関する知識も家にある書庫である程度勉強しており、結構知識には自信があった。
「魔法は何を使って現象を起こすのだとおもう?」
「空気中に存在するマナと言う物質です」
「おお、きちんと勉強してるんだね。自信を持って答えているのが分かるよ」
自信を持った顔、つまりどや顔したのがばれたということでしょうか。意外と侮れない神父様だ。
「ではそのマナはどうやって扱うんだい?」
「それは体内の魔力を使ってマナを動かします」
「お、これも正解だねぇ。じゃあどうやれば大きな魔法が使えると思う?」
「それは……」
これは本には載っていないから自分で考えるしかない。おそらく普通の魔法の書には載っているのであろうが、あいにく両親とも魔法が使えないのでそういうのは見当たらなかった。
「きっと、できる限り自分の体内の魔力を効率よく使って空気中にあるマナを大量に集めればいいのではないでしょうか?」
「うん、それも一手だ。しかしマナが薄い場所だったり、他の魔術師との関係でマナが少なくなったりしていたらどうするんだい?」
「それは…… 体内の魔力で補うしかないのでは……」
「そうだ、自分の魔力で補うこともできる。しかし、それでは魔力不足が起きやすいよね。他には方法がないかな?」
魔力を増やす以外にどうやれば魔法の威力を大きくしたりできるのであろうか…… 結構な難題です。
俺が小首をひねっているのを見て微笑みを浮かべる神父。
「よく考えてごらん、ジュンくん。マナって言うのは原則どこにでもある空気中だよね。つまり自分の周りの空気はマナが枯渇していても……」
「他のところにはマナがある!!」
「そういうことだよ。それにね、マナって言うのは魔法に変換された後一定の効果を終えたらまたマナに戻る。だからマナが循環するわけだが……」
「ということはできる限り広範囲からマナを集められるようになればいいということですか……」
「そういうことだね、もっと踏み込めば自分が減少に変えた魔法のマナまで回収できるといいね」
「それはどのようにすれば……」
「それはジュンくんの努力次第じゃないかな。この広い範囲からマナを集める技術って言うのは、才能も関係するけども訓練が大事なんだ。あ、ここでいう才能っていうのは属性ごとの才能とはまた別だよ。測定もできないんだ。だけど、まぁジュンくんの属性の才能からしたらこっちの才能も十分にありそうだ」
「おお……」
実はちょっとわかってなかったりする俺、人の話を聞いて理解するより、紙に書いて視覚的に確認したいのは前世も今瀬も変わらない仕様らしい。
「ついでだから属性の才能の話をしようかな。人間が持つ魔力と空気中のマナとの混合で現象を起こすとして、それには空気中のマナだけでなくて自分の魔力を入れ込む必要がある。空気中のマナは指向性を持たないからね。難しい言葉だけど、簡単に言ったら自分のしたいことを願った魔力をマナに混ぜないといけないということだよ。そこで才能というのは、マナに入れる自分の魔力をどれだけ効率よく削減できるか、器用さが指標となるんだ。100の風魔法を操るのに10の魔力を込めるのが普通の魔法使いだとしたら、ジュンくんの場合は1の魔力で良いですよ、みたいな感じかな。それだけ自分の魔力が長持ちするし、大きな魔法も使いやすくなるんだ。魔力量というのは実際は偉大な魔法使いも普通の魔法使いもそんなに変わらない。君は今の段階ではかなり多い方みたいだけどね、水晶的には」
つまり、魔法を扱うための型となるのが自身の魔力で、それをどれだけエコに扱えるかが属性の才能ということか、燃費が良ければよいほど最大出力も上がると、俺はそう理解した。また水晶的にってよく分からないけれども、魔力量も多いらしい。おそらく同年代に比べてっていうのが前にあるのだろうが。
「なんとなくは分かりましたが…… 具体的にどのようなことをしていったらいいのでしょうか?」
そう、具体的なことが何らわかってない俺。
「まずはマナを感じることから始めよう」
というと神父は俺の肩に手を置く。
「えっと……」
そりゃ今日初対面の白髪巨人に手を置かれたら焦る。正直、今すぐでも神父から離れたいくらいである。
「ああ、大丈夫だよ、今から君の身体を介して風を操るだけだよ。たぶんジュンくんの才能ならそれだけでマナの動きや体内の魔力の動きが感じ取れるはずだ」
神父はまるで俺の気持ちを見透かすように笑顔でいう。むしろそれくらいは見透かさないと神父としてやっていけないのかもしれない。
俺の方に手を載せた神父は目を閉じた。俺はそんな神父の手から何かが流れ出すような感じを覚え、
「あっ」っと足がふらつく。
「すみません、神父様、ちょっとむずむずして……」
「いやいや気にすることじゃない。まぁ踏んでる足をどけてくれるとうれしいけどね」
自分では気づかなかったが無意識に足で神父の足を踏んでしまったみたいだ。
「すいません、神父様」
「いいのさ、ジュンくん。それで魔力の流れは感じ取れたかい?」
「はい、たぶん」
「それなら私が足を踏まれた甲斐があったというわけだ」
「ああ、本当にすいません」
俺は平謝りしかできない。相手は神父と言えども巨人のような体格。いま怒られたら正直チビらない自信がない。
「よしよし、怯えない怯えない。ではその流れを次は自分で引き出せるよう想像しなさい」
「想像するだけでいいのですか?」
「ああ、そうとも。想像するだけで良い。魔法とはもともと想像力なのだから。」
「分かりました。ありがとうございます」
「礼には及ばんさね。家に帰ってやるといい。魔力を消費して、きっとすぐ疲れてしまうからね」
「はい」
俺の返事を聞くと神父は大きな足を静かに動かして奥の部屋に入っていった。残された俺も早くこの教会から出た方が良いなと感じ、家路につくのであった。
ありがとうございました