醤油の味付け卵かと思ったら珈琲の味付け卵だった罠。
「あねうえ…姉上、開けて下さい…」
見目麗しい男が、扉に力なく項垂れるように手をついて懇願する
「姉上、お願いです…」
はらはらと、朝露のような涙が零れ落ち、室内に差し込む光を受けてきらきらと瞬いた
「ははうえ、あけてください」
「ははうえあけてくらちゃい」
「父上がウザイです」
「うざー」
「うざい」
「きもい」
「ちちうえきもい」
「うざきもい」
「お前達失礼ですね、わたしはウザキモイのではなくウザカワイイんです!」
キモイかカワイイかは兎も角として、鬱陶しいことに変わりは無い
「もー! トイレくらい一人で入らせてっていつも言ってるでしょ?!」
「ですが姉上! 既にもう五分も入っているではありませんか!!」
五分くらい許容範囲だろうが!
そもそも所用はとっくに済ませていたが、一人の空間が愛しくてなかなか出る気にならない
個室の外には鬱陶しい男と、そろそろ友達100人どころか、兄弟100人になりそうな子供達が
父上がウザイので早く出てきて欲しいと大合唱である
ウザイとかキモイとか誰が教えたのほんとにもう!!
気がつくといらない知識ばかり増やしている、どこから仕入れてくるのかいまだに分からない
「巫女さまのお通じに効くように献立を考えなくてはなりませんね」
「そうじゃな、早急に伝令せよ!」
「姉上とわたしの愛の為に是非頼みますっ、最重要みっしょんです!」
「あたしは便秘じゃないわよ!!」
ある日、卵を温める為にこちらの世界へ召喚されて早数十年
卵はとうの昔に孵ったのに、あたしは未だにこの世界に生きている
実家との時間の流れの差を見計らいつつ里帰りを繰り返し、
その合間に、いつの間にか絶滅危惧種らしき特殊な竜は、順調に増えていた
子供に鬱陶しいところまで受け継がれなくて良かったと思ったのも束の間
長男が初恋に目覚めた時、確かに血の絆を実感するまであと17年と三ヶ月
ざっと20分で書けました、何も特殊設定がないと超★早いです、どうしたことか
でも生き抜きにはなりました、雪融けまた進み始めました、良かった…!
ところで、珈琲の味付け卵をご近所さんから頂いて食べたことがあります…
なんていうか…うーん、我が家の味ではないな、と
不味いわけじゃなくて、…すごく不思議な…
純然たる好みの問題なのかもしれませんが、感想はこういう味付けもありなんですね、と無難に返しておきました
ってゆうか、家族が皆、あんた味付け卵好きでしょ、全部食べていいよ、って
食べたくないなら食べたくないとハッキリ言って下さい、マジで
一人で全部食べましたけどね、五個