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第五章 灰の季節・弐

 翌朝。工房の唸りはきのうより低い。入口の「調律中」の札を短く掲げ、三分会議を一回。板を拭いて、○△×をリセットする。


 アジェルが腕を組んだ。「きょうは評価だ。『遊び』が要る理由、俺に見せろ」

「面白いは軽さじゃない。集中を長く続ける道具。まず入口で一言、つぎに手順の入れ替え、最後に赤いもどる矢印」

「……仕方ねーな。午前はそのまま。午後は俺の案だ。速度を上げて見せる」


 午前。入口での相談が増え、通路の詰まりがへる。工程2は後ろ、赤い矢印は見える所。雪巴は板に印を付けた。〈中断=△/再作業=△/事前相談=○〉。


 休憩で、アジェルが紙を指で弾く。「速さで押し切る案。工程2を元に戻す。相談は通路の外。赤は外す」

「戻し道が消えると、失敗が止めにくい」

「止める前に終わらせる」

「一度だけ、やってみよう」


 午後。唸りがわずかに高くなる。作業は速いが、金具の打ち直しの声が増えた。通路で帳簿が一列だけ逆向きに積まれ、検品がつかえる。


「数字で」アジェル。

「中断 19→23、再作業 11%→13%、事前相談 7→2」

「……速いのに、やり直しが増えたか」

「入口で一言が消えたから。戻る道も消えた」


 アジェルは額に手を当て、風見を見た。「午前の型に戻す。戻しは赤のまま、相談は入口。工程2はうしろ」

「了解」


 夕方。唸りは朝と同じ低さに落ち着いた。工房主が結果を見てうなずく。「数字と一行で道は開く。明日もその型で」

 外に出ると、坂の風は冷たくて気持ちいい。雪巴は三つ数え、ノートに一行書いた。〈速さは型のあと〉。

・入口で一言……提出前点検の実行形。最初に一声もらうことで後のやり直しを減らす。

かた……その日の動かし方の決めごと。数字で良し悪しを確かめて更新する。

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