第十一章 三分会議の運用
翌朝。雪巴は入口の壁に薄い紙を貼った。題は「今日の型」。一行で三つだけ書く。〈初めの三分=点検/終わり五分=提出前点検/赤い矢印=見える所〉。言葉だけでは伝わりにくいので、右に小さな絵も添えた。目と耳の印、時計の三つの点、矢印の札。通った誰もが一目で分かるように。
始業の鐘。手首の紐を軽く結び、三分結びで合図を作る。手は止めず、目と耳だけを動かす。断裁のシャク、打ちのトン、通路の交差。雪巴は一行で記す。〈交差点の箱、まだ壁から半歩出ている〉。終わり五分、提出前の相談を入口で受ける。迷いはここで吐き出す。
昼、板に数字を書く。〈中断 13→12/再作業 8%→8%/事前相談 19→21〉。工房主が「安定してきた」と言い、交差点の箱をさらに半歩だけ寄せた。アジェルは打ちの前で耳を澄ます。「低い。通れ」
午後、雪巴は小さな日誌を作った。各工程に行が一つずつ。内容は「きょうの一行」と「次の一手」だけ。書くのは担当者自身だ。書けない日は、入口で口で一言でもいい。大事なのは、数字と並んで見えること。
終業前、板にもう一度印。〈中断 12→11/再作業 8%→7%/事前相談 21→22〉。通路の声は短く、風見はゆっくり回る。工房主が言った。「明日からその日誌も常設しよう。三分の点検は鐘に合わせる」
雪巴はノートに一行で書く。〈型は短く、場所は見える所に〉。数字と一行で道は開く。
・今日の型(掲示)……壁に貼る一枚紙。絵+一行で誰でも分かるようにする。
・日誌(一行)……各工程が「今日の一行/次の一手」を書くメモ。




