婚約破棄された私ですが、聖剣が私を選んできたので文句はありませんよね
婚約破棄ものは今回で四作目です‼面白い‼続きが見たい‼と思ってくださったら評価や感想よろしくお願いいたします!!
「本日をもって『アクリア・ルミネス』との婚約を破棄させてもらう」
静まり返った王城の大広間で王太子である『テラシス・シュマール』の声が響く。
「代わりに聖女である『ルシア・カリーナ』を王妃として新たに迎えることにする」
シュマールの隣でにこりと笑う聖女カリーナは、涙ぐんでいた。
「私は……シュマール様の決意にお応えします……!」
か細い声だがそれでも力強く主張するカリーナに、貴族たちはまるで感動したかのようにうなずく。
「聖女様こそ、王妃にふさわしい」
「ルミネス様のような高慢な方より聖女様のほうが……」
ひそひそと飛び交う声。その場には、誰も私の味方がいなかった。
私はゆっくりと一礼する。
「承知いたしました。どうか、お幸せに」
それだけ言って、その場を立ち去ろうとした----そのときだった。
空気が震え鈍い重低音が城を満たした。
「なにごとだ!?」
誰かがそうつぶやいた直後だった。
轟音が徐々にこちらに近付いてきている。
キィィィィン
聖堂の奥に封じられていた、神聖なる【聖剣】が光の尾を引いて飛来し――
まっすぐ、私の足元に突き刺さった。
「…………は?」
全員が固まる。
「ど、どういうことだ!? なぜシュマールに……!」
シュマールの叫びに、聖剣がふるりと震え、声を発した。
《選定完了。真なる乙女、アクリア・ルミネスを“聖剣の主”として認証》
「っ……まさか、聖剣が喋った……?」
《この周辺は闇の精霊に干渉されてます。危険です》
カリーナの顔がみるみる青ざめる。シュマールもまた、しどろもどろだ。
「ま、待て! 君が聖剣に選ばれるなど――!」
私は口元をわずかにゆがめ、聖剣の柄に手を添えた。
スッ……
重さを感じることもなく、剣はあっさりと私の手に収まった。柄には金光が灯り、背後に神聖な紋章が浮かび上がる。
「ああ、ちょうどよかったわ。今日からこの国、少しずつ浄化していかないといけないもの」
「ル、ルミネス、お前……!」
私はくるりと振り返り、笑った。
「婚約破棄、感謝します。おかげで遠慮なく、“聖剣の乙女”として働けますので」
王太子の顔から血の気が引いていく。
カリーナは小さく震えながら、後ずさった。
――そして私は、誰の許可も要らず、大広間を後にした。
静寂の中、聖剣が呟く。
《ルミナス様。あの女狐のことなのですが……》
「……余計なことは喋らないの」
私はそっと剣を背に収め、微笑んだ。
「さて、王国の浄化はまず闇の精霊討伐から始めましょうか」