第一章〜特殊能力
よろしくお願い申し上げます。
正直、闇バイトというもの自体、初めて聞いたし知らなかったのだが、その語感、闇という文字がつくことからその内容はなんとなく想像できるものだった。
サイトのトップページはその不吉な予感を暗示するかのように黒塗りされたように、黒地が目立っていた。
オレは目的のタグ、求人一覧の文字をクリックした。
オレのパソコンはスペックが良いので快適に動作してくれた。
すぐさま表示された『求人一覧』は、升目のような模様に区切られた四角形の内部にたくさんの文字列が羅列され、多くの求人募集が掲載されているのを閲覧者に示していた。
項目別に分けられた見出しの文字は、ひとつの画面に二十ほど縦にならんでいた。画面をスクロールしていくと、次々と別の求人情報が現れていった。
トップページには、本日の求人数は125だと表示されていたように思う。
盗んできて下さい━━。奪い取ってください━━。特殊詐欺、受け子募集━━。564てください━━。
案の定、物騒としか言いようのない案件が並んでいた。
各求人には秘匿性の高い通信ツールを使って応募し、交渉を進めるようになっているようだった。
その中で、オレの目を惹く項目がひとつ、あったのだ。
━━現金回収役、募集/出し子が銀行から引き出した現金を、指定場所で受け取り、別の場所に居る胴元に引き渡す仕事をして頂きます。
などと書かれてあった。
オレにも、報道などから仕入れた知識によってそれらの言葉の意味がわからないわけではなかった。
要するに、詐欺の実行役が電話などを使って訊き出した口座番号をもとに、出し子が銀行のATМから引き出した現金を預かり、それを何らかの交通手段を使って親玉のもとに運ぶという役目を募集しているということなのだろう。
それはわかる。が、ギモン①。何の為にそんな二度手間なことをさせるのか?なにも出し子が金を引き出したその足で親玉のもとまで歩いていけば済みそうなものだ。なぜわざわざ現金回収役を?
それはおそらく、親玉を直接出し子に見られたくないから。居場所を知られたくないから。
ならば、受け渡し場所に出向く役を預かる回収役は、口が固く、信用の置ける人物でなければならないはずだ。尚且つ、防犯カメラの存在を察知して避けたり尾行されないように注意を払うなど出来る程の能力は必要な筈。
それなりに優秀な人間であると認められなくては採用されないのではないか?
ギモン②。オレに務まる役なのだろうか?
オレはそれ程運動能力的に優れているわけではない。そして、上の者怩忠義を尽くすようなタイプでもない。
おそらくは他に応募する奴らだってオレとさして変わらぬていたらくがメインな筈だ。こんな求人を見ている事自体、そうである証拠なのだから。
なのにそれを承知で何故、誰かれ構わない形の募集をかける?それが、ギモン③。
オレはそれらのギモンを少しでも解決し、不安を払拭する為に特殊能力を発動した。
そう。オレには小学校に入った時から特殊能力が、備わっているのを自覚していた。
ありがとうございました。