HERO
この二人が再会したのは幼稚園だった。
「こらっ、晴くんおもちゃ片付けなさい!」
「やだ!」と走って逃げる彼を捕まえようと
先生が追いかけている。
彼は自分とは違うクラスに避難しようと
部屋に一歩足を踏み入れるとそこには鬼ごっこしている園児たちが数人いたのだが一番最初に目に入ったのは部屋の隅で泣きながらおもちゃを片付けている
女の子だった。
まさかあの時の女の子か?
隣同士でベッドに寝かされていたあの時の……なんて
そんなこと彼が思うわけはないであろう。
またもや姿も影もない、あったとしても
誰にも見えることがない誰かの声が。
わしが何者か誰にも分かってもらえないのは
寂しいから紹介だけしておこう。
わしは、簡単にゆうとこの二人の見守り人である。
この世の未来は彼、彼女らに託された。
それは産まれたときからすでに決まっていたのだ。
だからこの子達がどのようにこの国を守っていくのか
わしは見守ることにする。
それがわしの仕事…いや…使命だ。
そんなことまだこの二人は知る由もないのだが…
泣いている彼女に近づき「どうして泣いてるんだ?
悲しいことでもあったのか?」と太陽みたいな笑顔で
聞く彼に一瞬だけ振り向いた彼女だったが「何もない」とすぐに目線をおもちゃに移す。
彼は彼女の手に握られている物に気付き、「それ、壊れちゃったのか?それあれだろ!えーっと…女の子が
おしゃれするために髪につけるやつだろ?」と聞き
その言葉で彼女の目からはまた涙がポタポタと零れ落ちる。
晴「もしかして誰かに壊されちゃったのか?」
彼のその質問に10秒ほど黙ったあと
彼女はゆっくり頷いた。
「俺がそいつぶっ飛ばしてきてやるよ!
誰にやられたんだ?あいつかそれともあいつか?」と周りにいた園児たちを次々と指差して聞く彼に
彼女はある一人の園児を指差す。
「あいつだな」彼女が指差した方向へ真っすぐ行き
一人の男の子を両手で押して突き飛ばした。
「何すんだよー」
「謝れ!あの子に謝れ!
あれはあの子の大切な物だったんだぞ!
悪いことしたら謝るってそう教わっただろ!」
馬乗りになり服を掴んだところで騒ぎに気付いた
先生が「こら、やめなさい」二人を引き離して止める。
怒って男の子に向かっていく彼を見ていた彼女は
かっこいい!目キラキラ〜みたいにはならず、
勢いが凄い…と若干引いていたのかは分からないが
涙はピタッと止まっていた。
だけどありがとう…と心のなかでは素直に
思っていた。
それを顔には出さないのが彼女である。
さすが、この頃からクールを発揮しているな…