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3 クラリス=ラファガルド

「今回の事件も薬物の可能性が低いのなら、前回の二件と同じ魔法が使用されたと考えるべきでしょう」


「はい、グロリア会長。仮に犯行が精霊の加護だとすれば、闇の精霊シェイドの寵愛を受けたギフテッド、あるいはそれに近い加護を受けられる者の犯行ということになります。ですが、この学院に即死させられるほどシェイドの加護を受けられる者はおりません。また聖令歴が始まって以来、ギフテッドは《炎帝》レイラ=ゼタ・ローレンブルク、ただ一人しか確認されていない、つまり精霊魔法は否定できます。犯行に使用されたのは、おそらく――」


 そうリディアが言いかけたところで、グロリアが「魔力を起因として即死魔法ですね……」とセリフを引き継いだ。


「はい、まず間違いないかと思いますの」


「リディアさん、ガブリエラさん。このようなことはしたくありませんが、学院の魔法に長けた人物を中心に捜査を行ってください。これ以上犠牲者を出す訳にはいきません。今は信じることよりも疑うことを優先します」


「承知しました」


「はい、お兄様の名にかけて事件を解決してみせますわ」


「……ときにガブリエラさん」


 ガブリエラの名を呼んだグロリアの視線が左右に泳いでいる。そわそわと落ち着きなく指先をつつき合わせている。


「はい」


「その……、ロイくんからの連絡はないのですか?」


「先月に手紙が送られてきてからは特にありませんわ」


「そうですか……」


 グロリアは、あからさまにしょんぼりしている。


 彼女と兄が恋仲になったのではないかという噂はガブリエラも知っている。

 噂を噂のままとして敢えて確かめない。確かめる必要はない。


 たとえそれが事実であったとしてもガブリエラが揺らぐことはない。自分の兄に対する愛情は無限であり、なにが起こったとしても不変であると確信しているからだ。

 そしてまた、兄からも寵愛を受けていると確信している。



 報告を終えて流れ解散となり、グロリアとリディアを見送ってからガブリエラは最後にローズガーデンを後にした。

 

 正門に向かって歩く彼女の視線に、ひとりの少女の姿が映り込む。

 メイド服を着た少女の頭には狼の耳が付いていて、お尻から獣の尻尾が生えており、誰かを探すように左右に振っている。


 彼女の名前はクラリス=ラファガルド。獣人族ウェアウルフ種と人族のクォーターで、兄のロイ=ナイトハルトの婚約者であり、兄が旅立つまでは兄の専属メイドとして屋敷で働いていた少女だ。


「あっ! おーい、ガブリエラ!」


 自分を見つけて大きく手を振る彼女にガブリエラは微笑んだ。


「クラリス、お兄様みたいにお迎えは不要だと伝えましたではないですか」


「うん、でもなんだか迎えに行かないと落ち着かないんだねよ」


「大きな声では言えませんが、今この学院で殺人事件が立て続けに起こっているのです。クラリスに万が一のことがあればお兄様に申し訳が立ちません」


「ええっ! 殺人事件!? そ、そうだったんだ。ごめんね……ガブリエラ、学校の中で殺人事件が起きていたなんて、だからキミは迎えに来なくていいと言ってくれていたんだね……」


 しゅんとするクラリスの手を掴んだガブリエラは、ゆっくりとその手を引いて歩き出す。


「こちらこそ黙っていてごめんなさい。殺人だとはっきりしなかったので今まで明言できませんでした。ですが、心配には及びません、クラリスのことは何があってもわたくしがお守りします」


 ガブリエラに見つめられたクラリスの顔が仄かに紅く染まった。


「……う、うん、ありがとう。ガブリエラはロイが旅に出てから本当に変わったよね。本物の騎士様みたいだよ、たまにドキッとしちゃうもん」


「お兄様がお戻りになられるまではクラリスとソフィア姉様の騎士になると心に誓いましたから」


「そっか、でも無理はしないようにね。それにわたしだってロイが戻るまではガブリエラを護りたいと思っているよ。ガブリエラが怪我するようなことがあれば、わたしの魔法で治すからね」


「ええ、もちろんそのときはお願いしますわ」





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