ゴーストに転生してしまった
前回に一話目も公開しています。
ぜひ、そちらをご覧になってから見ていただけると幸いです。
アルベルトは武具屋で叫んだ後、人目につかない裏路地に来ていた。
「少し落ち着いて、状況を整理しよう。」
そう思い、下を向いたら何かが落ちていた。
「新聞?一体どこの誰が落としたのやら」
そう言いながら拾おうとしたら、手が止まった。
「これって、今日の朝刊か?」
いや、待て待て待て…。
俺は確かに転生魔術を行ったはずだ。でも今ここにこれがあるということは
「失敗…したのか…?」
いや、おかしいだろ!魔法陣はひとつのミスもなく描けていたはずだし、転生はできなかったのに体だけ消えてるなんて…。
その結果ゴーストになってしまったのか?
いや、うだうだ考えててもしょうがない。今はこの現実を受け入れよう。これも人生だ!
「と言っても、これからどうするかだな。」
一旦、座り込んで考える。あれ?そもそもなんで座れてるんだ?
「さっきの剣といい、ゴーストはあらゆるものを透けることが出来るのでは無いのか?」
一度立ち上がって検証してみることにした。
まず、家の壁に触れてみたら…触れる。
うん?どういうことだ?
一体透ける条件はなんなんだろう。
そう、考え込んでたら急に後ろに倒れ込んだ。
「痛てて…。なんで壁にもたれかかったら倒れ込…んた…ん?」
気づいたら冒険者ギルドの中にいた。
どういうことだ?いや、まさかもしかして、
「無意識に触れたものはすり抜けるというのか!?」
とその時、
「あぁ!?てめぇ俺様があんなに動いたのにその報酬がこれっぽっちかよ!」
「それはお前がトラブルを起こしてその尻拭いをしてただけだろ」
「ちょっと二人ともいい加減にして」
どっかのパーティーが揉めているようだ。
しかし、あの最初に怒鳴り始めた男、少し危なそうやな。
「もう我慢ならねぇ。てめぇらの日頃の行いにはもう限界だ!このまま死ね!『火炎球』」
ちょお前、街中でそれはダメだろ。
「『水流球』お前何やってるんだ。街中で、さらに木製の建物の中で」
「ちっ、『岩拳』」
男が叫んだ途端、建物が壊れんばかりの揺れが発生した。いや、実際に入口近くの天井が崩れて落ちてきた。
「きゃーーー!」
「危ない!」
咄嗟に体が動いた。しかし魔法でどかすには時間が無い。
「くそ、『瞬足』」
女の子が潰れる前にギリギリ入れた。
「早く、ここから出てくれ。」
なんて言っても聞こえないか。
女の子は驚いて動けないみたいだけど、周りの人達が引っ張り出してくれたようだ。
よしここは安心してゆっくり瓦礫を下ろしたら、どこかフラフラしてみよう。
「お嬢さん大丈夫だったか?」
「はい、助けていただいてありがとうございます」
そんな会話とともに複数人の足音が聞こえてくる。
しっかり助かってよかったよ。次は俺の番だが。
しかしこれからどうしたものか?
「あ…あの…」
そういえば家族には手紙を送ってそれきりだし、会ってみるのもいいかも。
「すみません。少しよろしいでしょうか?」
そういえば食料とかは…
「あの聞こえていますか」
急に耳元で叫ばれてびっくりした。
「もしかして、俺に話しかけていますか?」
「はい、あなたに話しかけてます」
「えっと…俺のことが見えてるのですか?」
「ん?一体それはどういう意味ですか?」
「実はな…」
おれは今日あった出来事を話した。と言っても勇者ということは伏せたが、
「私は今までゴーストを見た事がないのですが、このような感じなのですね。気配が少しほかの人と違うだけで余り変わりませんね」
「まあ、ゴーストはそんなものですよ。それでなにか用事があったのでは無いですか?」
「そういえばそうでした。先程は助けて頂きありがとうございました。」
「先程?どこかで会…ああ、あの瓦礫に潰されかけた女の子!」
「はい、そうです。あ、あと敬語も不要です」
「わかり…わかった。それを言ったらお前も敬語をめてくれ」
「いえ、助けてくれた恩がありますので…。それとお願いもあり来たのですが…」
その途端、この子の方から可愛らしい腹の虫が聞こえてきた。
「と、とりあえずそこの食堂でご飯食べながら話をしよう。な?」
「は、はい…。あ、でも私お金持ってないんですよ」
「お金は出すから。えーと名前は」
「アリシア・ライゼルです」
「おお、俺の妹と同じ名前なんだな」
「そうなんですね。すごい偶然ですね」
「ちなみに俺の名前はアルベルト・ストワールだ。よろしくな」
「よ、よろしくお願いします」
俺たちは今俺が1番気に入ってる食堂《来安亭》に来ている。
「好きなものを頼んでいいぞ。お金だけは沢山あるからな。」
「いいのですか、ありがとうございます」
「ちなみに俺のおすすめはこの厚切りベーコン入り特農カルボナーラだ」
「そうなんですか?でも一応ほかのものも見てみます」
「ま、そんなに急ぐ必要は無いからな」
しかし、こうやって見ていると故郷にいる妹を思い出す。今も元気に生活してるかな?この後暇だし見に行ってみようか。
「もう頼んでいいですよね?すみません、ご注文お願いします」
「はい、少々お待ちください」
「一体何にしたんだ?」
「ご注文をお伺いします」
「えーと、厚切りベーコン入り特濃カルボナーラでお願いします」
「かしこまりました。料理ができるまで少々お待ちください」
「それにしたのか」
「色々迷ってしまったのでこれにしました」
「まぁ、それはうまいからな。それで、お願いというのはなんだ?」
「はい、単刀直入に言いますとあなたの…」
「お待たせしましたー。カルボナーラです」
「あ、ありがとうございます」
「今なんて言った?」
「私をアルベルト様の弟子にさせてください」
「り…理由を聞いてもいいかな?」
「それは私は昔から魔法を使うことが出来ないのです。みんなができる着火などの日常魔法が使えないほどなんです。それに私を助けていただいた際、身体強化魔法だけであんなにも速く動けていたことから魔法に関してかなりの熟練者なのかもと思いまして」
「だから弟子にして欲しいと?」
「はい、どうか聞いていただけないでしょうか?」
「いや、ダメだ」
「それは何故ですか?」
「それは…」
「ねぇあの子一体どこに向かって喋ってるのかしら」
「もしかしてイマジナリーフレンドとか?だとしたらかなり痛い子ね」
周りの人達がこちらに注目し始めてる。そろそろ食堂を出ないとやばいかもしれん。
「おい、アリシアそろそろ場所を移さ…」
「そこの人達!そんなことを言わないでください。」
「いっ…一体何よ!」
「私は今アルベルト様と話をしているのです。変なことは言わないで頂けますか!」
「アルベルト?そこには誰もいないじゃない!そっちこそ変なこと言わないでちょうだいよ。」
「それもそうですよ。なんてったってアルベルト様はゴーストなんですから」
あれ?急に静かに…
「きゃーー!ゴーストだってよ。みんな逃げて」
おおっと急に騒ぎ始めたじゃないですか。
「アリシア取り敢えず逃げるぞ!」
「まだごはんを…食べ終わってましたね。わかりました急いでいきましょう」
「一応念の為、『錯覚』『気配消去』」
気づいたら冒険者ギルド横の裏路地に来ていた。
念の為言って奥がたまたまだ。
「すみません、私のせいでこんなことに巻き込んでしまって…」
「いや、全然大丈夫だ。そっちこそ大丈夫か?」
「私は大丈夫です。それと、先程の話は…」
「それのことなんだが、弟子にしてやるよアメリア」
「え?それはど…どういうことですか?」
「お前の性格が気に入ったんだよ。どんな人にも物怖じせず、立ち向かっていく姿に」
「そんなことでですか?」
「まぁ半分はだ。もう半分はお前がうちの妹似ているからかな」
「そうなんですか。ではこれからはアルベルト様について行ってもよろしいですか?」
「あぁいいぞ。でも一つだけいいか?ずっと気になっていたんだが、アルベルト様というのはやめてくれないせめてアルベ…」
「じゃあ、お兄ちゃん」
「お兄ちゃん?」
「はい、お兄ちゃんの妹様の名前と私の名前が一緒とおっしゃってましたので、」
「それだったらアルベルト様でもいいからお兄ちゃんはやめてくれ」
「いえ、もうお兄ちゃんと呼ぶことにしました。これからよろしくお願いしますお兄ちゃん」
「それだけはやめてくれぇ!」
その後、呼び名は結局師匠になった。でも、お兄ちゃんか…。実の妹にも言われたことがないからかもしれないけど、少し、いやかなり良かった。
でもやることがなかったからちょうどいい、アリシアと魔法を極めながら、色々なところを旅してみるのもいいかもしれないな。
これからが楽しみになってきたぞ!
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