軽トラに揺られて
主人公と少女の名前、年齢などは敢えてつけていません。
また主人公の長期休暇の理由についても敢えて設定を設けていません。
理由などについてはぜひ読者の方に委ねていますので、お好きな理由を当てはめてください。
またイラストボードをテキスト化した作品かなと思いますので、場面をイラストで想像するというような楽しみ方がいいかもしれません。
迎えの車とは軽トラだった。
気のよさそうな壮年の男性が少女の伯父さんなのだろう。
僕は軽トラの助手席に乗る。
少女はというと僕の荷物を荷台に載せたと思うと、自分も荷台に乗りこんだ。
大丈夫なんだろうかと思ったが、ここは私有地ということらしい。
あぜ道を走るからそこまでとばさないよと伯父さんは笑いながら答えてくれた。
あぜ道を走るから少し揺れるよと付け加えるのも忘れない。
本当に大丈夫なんだろうか。
少女は荷台の窓をコンコンと叩く。すると伯父さんが振り返る。少女は伯父さんに手を振って「でてもいいよ」と合図を送る。
軽トラがゆっくりと発車する。
備えつけのラジオから流れる歌謡曲なのだか、よく知らない曲。それにつられて伯父さんが鼻歌を歌いだす。
不思議と心地よく耳に響いた。鼻歌を歌いたくなる気持ちもわかる気がする。
耳を澄ますと少女も歌を歌っていた。
案外、うまいんだなと僕は感心する。
ラムネの炭酸がはじけるようにはつらつとしていて、どこか懐かしくて、切ないような。
そんな歌を少女は歌っていた。
果たして伯父さんが言うよりも軽トラはよく揺れた。
決して乗り心地がいいとは言えなかったが、歌声はいつしか少女の声しか聞こえなくなって。
その歌声は車が止まるまで、ずっと僕の耳に残響するのだった。
お付き合いありがとうございます。