あの夏に逢いにいく
主人公と少女の名前、年齢などは敢えてつけていません。
また主人公の長期休暇の理由についても敢えて設定を設けていません。
理由などについてはぜひ読者の方に委ねていますので、お好きな理由を当てはめてください。
またイラストボードをテキスト化した作品かなと思いますので、場面をイラストで想像するというような楽しみ方がいいかもしれません。
バスを降りるとそこにはすっかり錆びたトタンで囲われたほったてのバス停。
屋根にはところどころ穴が空いており、雨避けとしては少し心許ない。
誰が見ているのかわからないような色あせた時刻表。
「お兄さんがお客さん?」
澄んでいて、それではつらつとした――ラムネのような女性の声。
トタン屋根の下に十代後半くらいの少女が佇んでいる。
どうやら声の主は彼女のようだ。
少女が日陰の外に出てくると風が吹いて黒い長髪がなびくのを顔を右手でおさえる。
白い薄手のノースリーブワンピースから見える二の腕は少し小麦色になって、水色のインナーを着ているものの動くときに胸元から日焼けあとがちらりちらりと見える。
麦わら帽子を深くかぶっていて顔つきはわからない。
少女は素足が少し覗く白いサンダルを履いている。スカートから見えるスラリとした足で歩きながら、こちらに近づいてくる。
僕との距離がバスケットボール一つ分くらいまで詰められる。
少女は顔を見あげるがてら少しだけ帽子のつばをあげる。
そこから覗く少しつり目の瞳にはからかってやろうという意志を感じとれる。
「ようこそ」
そう言うと少女はにんまりと口の端をあげて、僕の右手に置いてあったキャリーバッグを半ば強引に両手でとったかと思うと急に走りだす。
「ああ、ちょっと待って」
僕の制止を少女は聞こうともしない。彼女の足取りは羽が生えたように軽やかだ。
「あっちで伯父さんの車を待たせているの」
――だから早く! と少女は急かしてくる。
僕は少女を追いかける。
どこまで続くあぜ道に広がる田園風景。
風景を囲うように山々が並び、居城のようにそびえる入道雲。
そしてスカイブルーの空。
僕にとっての夏がはじまろうとしていた。
ボーイ×ミーツ×ガールからはじまる定番です。