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前編

 乙女ゲーム。


 それはうら若き乙女の心をきゅんきゅんとさせてしまう至高のゲーム。


 年齢を積み重ねたマダムの心を虜にする究極の娯楽。


 

 この物語の〝端緒〟であるお菓子メーカーのOL伊藤京香も乙女ゲームの愛好者である。


 いや、信奉者といったほうが正しいか。


 彼女は家庭用ゲームとして発売された乙女ゲームをすべてコンプリートしており、青春のすべてを乙女ゲームに捧げた。


 クリア不可能と謳われた高難度ゲームも易々とクリアし、苦行と謳われた面白くないゲームも最後までプレイをする。


 この世に生まれたあらゆる乙女ゲームを愛し、友人にこんな名言を残している。



「この世にクソゲーなんてひとつもないのよ」



 と――。



 そんな乙女ゲームフリークの彼女であったが、時代は移ろう。


 家庭用乙女ゲームが発売されなくなったのだ。


 時代はソーシャルゲーム全盛、乙女ゲームもその波には逆らえず家庭用ゲーム機ではリリースされなくなり、スマホへと舞台を移す。


 しかし、古き良き時代の乙女ゲームを愛する京香はその流れについて行けず、次第に乙女ゲームから遠ざかっていく。


 また社会人となり、仕事が忙しくなったことも乙女ゲーム離れに拍車を掛けた。


 お菓子メーカーに就職した京香は乙女ゲームで培った乙女力を武器に乙女が気になるお菓子の企画をいくつも成功させ、会社では若きホープ扱いをされていたのだ。


 そうなると必然と仕事が忙しくなり、時間を消費する娯楽からは遠ざかる。


 それに京香は仮想恋愛ではなく、初めて現実的な恋愛にはまっていた。


 アラサーも近くなって初めて彼氏が出来たのだ。同じ会社の同じ部署で働いている後輩社員で、休日は彼と一緒に神社仏閣を巡ったり、カフェに行ったりしている。――先日も彼の家にお泊まりをしたばかりだ。


 ちなみに後輩の彼氏は典型的なスポーツマンで、オタク趣味は微塵もない。


 そんなわけで〝家〟にレトロな家庭用ゲーム機やアニメ調の乙女ゲームのパッケージなどを置いておくわけにはいかなくなり、京香は思い出のゲームをすべて実家に送ることにした。


 段ボールにゲーム機を詰め込むと実家に着払いで送りつける。


 しかし、彼女は気が付いていない。人生で最後にプレイした乙女ゲームが〝本体〟ごと行方不明になっていることを。その中に入れていた自分史上最高に胸キュンしたゲーム、剣と魔法のRPG風乙女ゲーム「悠久の聖女と竜騎士」がとんでもない〝奇跡〟を引き起こしたことを。

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