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緋炎の英雄譚 -陽の章-  作者: 天田流々介
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【第3話】聖都旅立ちへの想い

ライバ族の汚名『ジャッジ』

村長はそう言うとジャッジについてアバンに知る限りの情報を伝えた。


「、、、反逆者が居たんじゃ。

当時の聖都グランリオの戦闘指揮を執っていた聖都グランリオ王族の一人『バラン』という男を殺したそうじゃ。

王殺しの名前は『ジャッジ』それ以上の情報はどこにも見つけられることもできなかった。」


ライバ族は聖都グランリオの為に一族全員身を粉にして戦った。

しかしジャッジの存在がライバ族に致命的な汚名を着せる形となったのだ。


王族殺しなど、本来であれば一族全員抹殺でもおかしくない。

しかしライバ族は聖樹大戦の最中、献身的に貢献をした事実も有ったが故

情けとして終戦後、一族抹殺は控えられたのであった。


「王はわしらに慈悲を与えてくれたのじゃ。

ライバ族なくして聖都の安寧などなかったと、その言葉を賜っただけで十分じゃ。」


「そんな出来事があったなんて知らなかったよ。

でもなぜ今その話を?」


「明日お前たち二人は聖都グランリオに旅立つ。

そうなると嫌でもライバ族の噂を知っている人間から嫌がらせを受けることもあるだろう。

じゃからその前に伝えた方がいいと思ってのう。

だから聖都グランリオに到着した後は、極力都市ではライバ族であるということは伏せておきなさい。

そうすればある程度の衝突は回避----.。」



「嫌だね」



村長の話を遮るかのようにアバンは一言そう言った。


「過去がどうとか関係ない。

身寄りの無かった俺やザイラをここまで育ててくれたのは村長やライバ族の皆だ。

だから俺は胸を張ってライバ族代表としてテストを受けに行く。

なにか言ってきた奴が居たらぶっ飛ばしてやるだけさ。」


村長は少しあっけにとられた顔をしていたが

その後我を取り戻すと、少し含み笑いをにじませながらアバンを見つめた。


「ありがとう。お前たちは本当に素晴らしいワシの息子じゃよ。

...じゃが、王族はぶっ飛ばすなよ?」


「あ、そうだった!

俺がジャッジみたいになると困るもんな。」


軽く冗談を交えつつアバンは村長にはにかんだ。


「ということじゃから、気を付けて旅に出るんじゃぞ。

何かあったらいつでも2人で帰って来なさい。

ここはいつまでもお前たちの『家』なのじゃから。」


村長はまっすぐな目でアバンに伝えた。

アバンはその言葉を聞いてあっけらかんとしている。


「どうしたんじゃアバン?」

「いや、村長がそんな優しいこと言うなんて、明日槍が降ってくるんじゃないかって思ってさ。」

「バカモン!ワシはお前たちの親じゃぞ?たまには優しい言葉もかけるってもんじゃ。」

「"たま"には、ね」

「まあいいわい!こんな事を言えるのも今日までじゃ。

明日からはお前さんたちが居なくなるからこの森も静かになるわい。。。 」


村長は少し寂しそうにそういった後、少し間を取ってからアバンを見つめ


「アバンよ、ザイラを頼むぞ。」


アバンは当たり前じゃないかと即座に返答するも少しだけ違和感を感じた。

いつもの村長の言葉より少しだけ重く、何か意味を含んでいるようなーーーー。


こうして聖都グランリオ出発前夜は終わり、

ついに二人が旅立つ日が来たのであった。


―出発の日、明朝―


身支度を整えたアバンとザイラ。

そしてその二人を見送るためにライバ族の村民全員が集まっていた。


「アバン、ザイラ!頑張って来いよ!」

「二人が居なくなって寂しくなるねぇ...いつでも帰って来なさい!

あんた達の好きな特性シチューを作って待ってるからね!」

「俺たちはいつまでも、そしてこれからも二人の無事を祈っているからな。」


駆け付けた全員が二人に向けて

最後の別れだといわんばかりに

惜しみなく激励の言葉を投げかけている。


「みんな、ありがとう!頑張ってくるよ。

僕は絶対にこの森にまで届くくらいの結果を残してくるから楽しみにしててね!」


ザイラの意思表明に寒歓喜が上がる。

まだあどけなさの残るその表情は、希望の未来を描く

新進気鋭の若者のそれだった。


一方アバンは空を見上げ表情を隠しながら一言。


「...ありがとう。」


ザイラもライバ族の皆もアバンがこちらに顔を見せない理由を知っている。

面倒見の良いアバンは仲間思いでも有り

それが強いが故に涙もろい部分もあるのだ。


そんなアバンの性格を知っている皆が

寄ってたかってその様子をいじっている。


「おいおいどうしたんだ?

お礼の言葉ってのは相手を見て言うもんじゃないのか?」

「顔を隠しても声が震えてるぞ?アバンは分かりやすいなー。」


そんな状況の中、村長が場を整えるように激励の言葉を送った。


「アバン、ザイラ。

お前たちは誇り高きライバ族の家族じゃ。

離れてしまってもそれは一緒じゃ。

試験に受かり軍に配属されることになっても二人で力を合わせて絶対に乗り越えるんじゃぞ?」


「「はい!」」


村長の言葉に二人は即答した。


「いつでもワシらはここで待っておる。

だから2人とも生きて帰ってくるんじゃぞ。」


村長の言葉にザイラが切り返した。


「もぉ~村長大げさだよ!ね?兄様。」

「...そうだぜ村長。何が来ても俺が護る。

みんなも俺達が居なくなって狩りが大変になるかもしれないが、

帰ってくるまで誰一人として絶対に死ぬんじゃねーぞ。」


アバンとザイラはそう言うと、自分の荷物を抱えた。


「じゃあ俺達もそろそろ行くわ。皆も元気でな!」

「バイバーイ!落ち着いたら帰ってくるからねー!」


別れの挨拶を終えた二人は集落の入口へと足を進め始めた。


「気をつけろよー!」

「じゃあなー!」


送り出す人々の声が徐々に遠くなっていく。

アバンとザイラは遠くなる声に耳を澄ませながら村を出た。


「...聞こえなくなっちゃったね。」

「ああ、そうだな...。悲しいかザイラ?」

「...ちょっとね。でもそれ以上にワクワクしてるんだ。

この世界をもっと広く見たい。

そして自分が見た物事を将来村のみんなに教えてあげるんだ。」

「そうか、ならこれから頑張らなきゃな。

村長も言ったが、命を大事にしてまたここに帰ってこよう!」

「そこが一番心配なの!兄様は人の為にすぐに無茶するから。

兄様こそ自分の命を一番大事にしてくださいね!」

「そ、そうだっけか?」

「そうですよ!兄様が居なくなったら僕は村に帰れません!」

「分かった分かった!気を付けるから!」



こうして2人はライバ族全員の想いを乗せ

聖都グランリオへと旅立ったのであった。

作品を読んでいただきありがとうございます!


見ていただいている方々に

これからも引き続き楽しんでいただけるように更新頑張ります!


今後のモチベーションにもつながりますので

宜しければ高評価お願い致します♪


挿絵が間に合わなかったので、後日アップ予定です!

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