ミートソース? ボロネーゼ? あなたはどっち?
三連休ですが、私はお休みはありません>< 劇場版アニメ 思い思われふりふられ。ヘカさんとダンタリアンさんと一緒に観に行く事になりました。恋愛アニメ。ドキドキするでしょうか? ヘカさんは働く細胞も観に行ったそうです。皆さん、三連休は何をされますか?
アヌはメニューを見て店員の可愛いお姉さんにミートソーススパゲッティを注文、それにたおはボロネーゼパスタを頼む。
「おっ、たおはこ洒落たの頼むねんなぁ」
「だってアヌ、ミートソースはボロネーゼを間違えて作った変なパスタなんだよ」
なるほどとアヌはうなづく。二人はスプーンをつかってパスタを巻き取るとそれを一口。
ボロネーゼは麺に均一に具が絡めてありどこから食べてもシェフの拘りを感じる事ができる。片やミートソースは自分で絡めて食べる。カレーライスと同じで日本で魔改造された料理であり、アヌはスパゲティの王様だと思っている。
「まぁ、これが変なパスタねぇ……肉じゃがも同じ事言えるか?」
「肉じゃがは日本の料理じゃんか」
「あれは、日本を敗戦に導いた山本五十六っちゅーアホがビーフシチューを作ろうとして生み出した神料理やからの」
「山本五十六は凄い人でしょ! 軍神じゃない」
たおは中々に知識を持っていたそれにアヌは頷く。否定をするつもりはない。歴史家としてのアヌの山本五十六の見解としては、残念ながら謳われている者ではないのだ。臆病で、死ぬの怖いただのサラリーマン。彼が日本刀を持ったまま亡くなったと語り継がれているが、これはただの流説。そうしなければならない、社会主義的プロパガンダでしかないのだ。
これを知っている国民がどれだけいるかは知らないが、実は日本は原爆投下を回避できた。原爆投下作戦の事実を知りながら、紫電改部隊を待機させながら、その電報を軍の上層部は燃やした。
原爆という物の威力と被害をまだ知らなかった為、爆弾程度にしか思わなかったのだろう。
当時の日本の国力は世界が震え上がる程の軍事国家であり、槍ようによっては連合軍とドローに持ち合わせるだけの力があり、不戦条約まで結べば勝利だった。
これに関してはアヌは、山本五十六が天皇に早く講和条約を結ぶべきと提言した事は評価している。
「まぁ、この作品に出てくる大人は、昔の日本人みたいやな。異様に好戦的で、村社会や、カイのおとんは自分の奥さんと不倫した酒屋の旦那を村八分しようとして逆に嫌われる」
「う〜ん、こういうの私あんまり経験ないからわからないけどいまだにあるの?」
「あんで、この作者は人間の心の在り方を文章に起こすのが極めてうまい。お京のばあちゃんは、死んだら終わりやと言うけど、死んでも仕方がないの裏返し、保守的でこの島だけで世界が形成されてもてるんやろな」
二人はスパゲティを上品に食べながら作品について語る。たおは本来はアヌはワインなんかを飲みながらこんなお洒落な店で食事をしているんじゃないかと少し気まづそうに言った。
「アヌ、私が中学生でごめんね」
「は?」
「だってお酒とか飲めないでしょ?」
あぁとアヌは何が言いたいか理解する。アヌは下戸ではあるが、お酒は好きな方なのだ。
「ワシな、酒弱いねん。だからのぉ、弟分のばっすんっちゅーやつの前やないと酒飲まへんのや、酔ってい家かえられへんくなるからな。酒がのーても、食事後にエスプレッソでもええやん。なんならサイダーでもえぇ、食事は自由に楽しむもんやで」
ウィンクするアヌ。これが年下殺しの所以なのだろう。頼りになる大人のお兄さん。二枚目であるトトやバストよりも中高生に圧倒的支持を受けやすい三枚目の魅力。
「田舎の食堂って私のイメージだけど凄い美味しいイメージあるんだけど、アヌはどう?」
これまた面白いところをつくなとアヌは思った。当たり外れはあれど田舎は仕入れ先があまり変わらない。都会で食べようと思うとかなりいいお店に入らなければならないような食材がありえない価格で提供される場所がある。
「せやな、うちのえげつない店長。シア姉さんの田舎は国産の分厚いステーキが900円で食えるありえへん地域やったし、案外たおの言う通りかもな。お京が手伝っとる舞波の実家の魚のフライ定食うまそうやしのぉ」
アヌに見惚れているたおだったが、物語が小説として中高生的にようやく面白くなってきた。
「舞波ちゃん、最初は自分勝手な子だなって思ってたけど、凄いいいこ、かっこよくない?」
東京の学校に行くとかで、塾の合宿に行き、自分主体の物言いで読者は中々な女の子だなと当初は思っただろう。そして、この島にいる大人達のえげつない人間関係、いわゆる読書疲れを感じさせる中で、カイが行方不明になった。合宿中のはずの舞波はお京のラインを見て飛んで帰ってきたのだ。
「カイの事、気にしととるからな、これもあるしゅ自分勝手な行動なんかも知れへんけど、清々しい自分勝手さやな、そしてこれから完結に向けての後半部や」
一人前のパスタを時間をかけて食べる二人、アヌは手を挙げて先ほどの女の子の店員を呼ぶ。
「おねーさん! 注文ええですか?」
「はい、ただいま」
女子高生くらいだろうかとたおは思う。アヌの笑顔に同じく笑顔になる店員。東京の女の子はわりと関西の男性が好きだ。これは逆も然りで関西の女の子は東京の男性がわりと好きである。
「じゃあ、食後のドリンク、おねーさんのオススメは?」
「えぇ……そうですねぇ。イチゴのオレとか美味しいですよ」
これである。何故か、客側がお店の店員さんにこれを聞いて、店員さんのオススメを選び、絶賛する。
「ほな、それ二つホットでお願いします」
たおは他の女の子と楽しそうにしているアヌを見てからスマホを見つめて、アヌに呟くように言う。
「アヌって女たらしだよね?」
「たお、ほんまの女たらしの店教えたろか? ブックカフェ『ふしぎのくに』っちゅー店のな」
「トトさん」
「おう」
「あぁ、トトさん凄いよね。絶対付き合う気ないのに、どの女の子にも女の人も口説いてるもん」
アヌは言わずもがなやったかとそう思った。アヌが大阪ホストの典型なら、トトは東京ホストの典型である。
「さぁ、ここでつちんこの正体が見えてきたのぉ? 存外やばいバケモンかもしれへんな」
戦争の疎開で逃げられなかった子供が死霊化し、寂しい子供をさらって脳を喰らうとそう謳われている。
「この島の子供はみんな、つちんこに会ったことがある。大人になったら忘れるってイマジナリーフレンドみたいじゃない?」
アヌは中々知識だけは持ってるなと呆れるどころか感心する。幼児が自我の形成下で生み出す誰にも見えない自分だけの想像上の友達。それが行き過ぎると二重人格に近い重篤な症状になる者もいるが、存外多くの子供が経験する事らしい。大人になる頃にそんな記憶はなくなるのだが……
「せやな、まぁ結末は本やさかい読み進めばある。せやけど、想像しようやないか、そのイマジナリーフレンド……島の生み出したそれということもない気にしもあらずやこれをなんというか知ってるか?」
「シナジー?」
「せや、集団催眠ともいうねんけどな。舞波は何かつちんこの事に関して知っとる。瀬谷から、お京を連れてカイを探しに行くわけやな。ここでおもろい事を舞波はいうよな?」
人は迷った時、とる行動は二つ。引き返すか、そのまま進むか。当然すぎる事を言うが舞波は進む人間になりたいと言う。
「私も舞波と同じかな! アヌは」
アヌは、店員の女の子が運んできたほっといちごオレに舌鼓を打ちながら一息つく、そしてシナモンの香りを楽しんでから答えた。
「ワシか? ワシは立ち止まる。そして考えるな、進むに値するか、引き戻す程度の事か、これが大人や。でも舞波もたおもまだ若いからの。失敗してもええねん、心に正直に行動したらええ」
ずるい。たおはそう思った。いわゆる第三の答えをアヌは出してきた。二択の中でその回答はルール違反だ。
「たお、つちんこはどうも悪霊でも悪い奴でもなさそうや……ちょっと口は悪いかもしれへんけどな、でもある種の救いを与えてくれるんかもしれへん」
たおはアヌの言いたい事を確認するために読み進める。ほっといちごオレは悔しいけどとっても美味しかった。読み進めた先、つちんこはカイと島の奥でカイに何かを見せようとしていた。
「これあれだよね? お京に見せた。カイのお母さんが亡くなった瞬間、これを見てカイはお母さんとお別れするって……」
飲み終えたいちごオレのカップを見ながらたおが少しばかり辛そうな表情を見せる。それは小説作品に同化を開始した合図に思えた。アヌは時間もそろそろかと思ってたおを現実に引き戻す。
「カイもまた迷ってるけど進もうと決意したんやろな。ワシからすれば中学生なんてまだまだガキや」
少しムッとするたお、たおが言い返そうとした時にアヌはたおを黙らせるような一言を述べる。
「でも、大人が知らん程度には中学生は大人なんや、社会的に生きていけるかは知らんけど、自分で考えて行動する事はできる。それはすなわちもう一人で立って生きていけるっちゅー事やからな」
言って欲しい台詞がそこにあった。そうなのだ。もう少し、自分たちを信用して欲しい。もう少しだけ任せて欲しい。それを親も教師もわからないのである。そして親や教師の気持ちはそれはそれで愛。それを分かれるだけの心がまだ大人でもない。とても歯痒くて、とても切ない。瞬きと共に終わるかもしれない学生時代。
そんな心だからこそ学べることも多くあるだろうとアヌは思った。そしてたおに言う。
「そろそろ出よか? 中学生のタイムリミットや」
21時前、アヌに家まで送ってもらうとたおはマンションの前で勇気を出す。アヌは多分普通に断るだろうと思ったその言葉。
「アヌ、ウチよっていく? コーヒーくらいなら出せるよ?」
「アホか! まだ閉店作業してへんのや! また明日、明後日と店開いてる時にきぃ」
そう言ってアヌはたおの頭を撫でた。八重歯、太陽みたいに明るい笑顔、そして動物の耳みたいに動く癖毛。そのどれもが愛おしく思えてたおは口に出さない。
(そういうところだよ)
『夏に泳ぐ緑のクジラ 著・村上しいこ』どなたか読まれた方はいらっしゃいますか? 是非、感想を教えてくださいね! アヌさんとたおさん。そろそろクライマックスですね! この三連休、本作の投稿は続きます!




