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薄暗い部屋に、小さなパソコンが一つ。少女は安物のイヤホンマイクを付け、ちらちらと明滅する画面を凝視している。
「アウル……アウルって言うんだ」
漏れた独り言を聴く人物は、この部屋に存在しない。
画面の中では小さな少年が、大きな武器を両手で抱え巨大なモンスターに立ち向かっている。それは、ゲーム画面のようだった。
不意に別のブラウザを立ち上げ、カタカタとキーボードをたたき「アウル」と入力する少女。出てきたのは、「OWL」という単語だった。
「ふく、ろう。フクロウの事なんだね、アウルって」
少女の声は、部屋に響いて溶け入り、消えた。