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ピンポーン。
デバイスが邪魔をして、音が遠くに聴こえる。
ピンポーン。
再び鳴るインターホン。慌ててデバイスを外し、カメラを確認する。
「お届けものでーす」
汗だくのまま、玄関の鍵を開ける。
「サインお願いします」
渡されたペンで、読める程度に【立花】と書く。
「ありがとうございます」
重たい段ボールを受け取り、無言で鍵を閉めた。
まるで生きた心地がしない。現実世界では、風呂に入るか食べるか寝るか。起きているほとんどの時間をフローワールドか仲間達と関わっているせいか、どちらが現実なのかもわからなくなっていく。
「いって……」
段ボールを開けようと手にしたカッターが、指先に細い線を引いた。見ているうちに、玉のような血が浮かぶ。奇しくも、生きている事をまさに実感させられた。
床に散らばった服やゴミをかき分け、小さな箱を見つけ出す。絆創膏を取り出し、適当に巻いて段ボールを開く。代り映えのしない、エナジードリンク。一本取り出し蓋を開けてから、まだパソコンの横の箱にドリンクが残っている事を思い出す。自分がどれだけ取り乱しているのか、溜息が出た。
手にしたドリンクを一気に飲み干して、一息つく。
戻らなければ。唐突に追い出されたあの世界に。




