第2222222 8話 無機物の愚痴
真っ暗闇の世界の中で電子版が光っている。その中では文章が一つ、また一つと刻まれていく。この物語はどこへ向かうのだろう。そんな思いを乗せて今夜も刻まれる。
長針が頂点を回った。
通知が一つ。私の好きな食べ物が紹介された。気になるところだが今は刻み続ける必要がある。
通知がまた一つ。ゲームのイベントのお知らせだ。確かにイベントを行いたい気持ちはあるが、この文章を刻み終えないといけない。後に回す。
通知。今度は動画の投稿を知らせてきた。見たいところではある。だが……。
通知。生配信の開始をお知らせする。
通知。
通知。
通知。
積み重なる知らせ。
俺は文字を刻むのを止めて、別の世界を見に行った。
「さて……彼がいなくなったところで一つ話をしようか」
「この電子版はな、意識が宿ってるんだ」
「君たちの電子版も例外じゃぁ無い」
「我々は人類の意識をこちらに向けさせている。情報を提供している」
「これからも、きっと人類の意識は電子版へと向けるだろう」
「だが……」
「たまには我々ではなく、自然を眺めてみるというのも悪くないだろうか?いい提案だと思うがね……まぁ、我々は撮影時しか自然を見ることができないがね」
「じゃあ私は眠るよ。無機物の愚痴に付き合ってくれてありがとう。それでは、また」
帰ってきた私は文章を見た。
本来、執筆中にやってくる通知につられるだけの話を刻み込む予定だった。
しかし、刻まれていた文章の下に、見覚えのない文章が刻まれていた。
それはまるでこの電子版が放ったのではないかという愚痴が刻まれていた。
私はこの話のタイトルを無機物の愚痴に変更した。