第100 区切り話 見知らぬ書庫、深夜と共に
深夜、私は書庫の中へと入った。書庫の中は綺麗に配列された本棚があると言うのに、本は本棚の中で傾いていたり、倒れていたり、酷いことには床に落ちていたりと乱雑な様となっている。掃除をしようと考えたところで、一人でこの量は片付くよりも気が滅入るほうが先にやってくるだろうと思い、掃除することを諦めている。
元々この書庫は隠されていた場所であり、私はその発見者である。書庫に入ってすぐの壁面に貼られていた古びた紙面には、『書庫に保管されている書物は無許可で読むことを認めるものとする』と書かれていた。それを理由に、深夜帯にこの書庫に勝手に入っては、勝手に本を読み漁っている。
深夜帯に見知らぬ書庫での読書を始めてから、凡そ三年が経過しただろうか。この書庫に初めて入った正確な年月日の記憶は薄い。
私は様々な本を見つけては読むを繰り返した。この書庫に収められている本は世間に出ている本とは少し風変わりで、説明し難い独創性を持っているように感じる。まるで何かに取り憑いているかのような文章がこの書庫の本から伝わる。
この書庫にある本が増えていることに気付いたのはこの書庫に訪れるようになってから数ヶ月経った時のことだった。私以外にもこの書庫を利用している者がいると確信したが、現時点でもこの書庫で私以外の者と遭遇したことは無い。
この書庫と出会ってからおよそ三年。現在も未読の本が沢山ある。新しい本も追加されていく。この書庫にある本を全て読み尽くすとまではいかないが、沢山読みたいとは思っている。私はこれからもこの書庫に入り浸るのだろう。
深夜の価値の無い読書はこれからも続くだろう。私は床に落ちている本を拾い上げた。
今日も深夜の気分と共に。
深夜帯にこんばんは。無氏名です。
深夜テンションだけで書いてみるという浅はかな動機から書き始めたこの奇譚集。塵も積もれば山となるように、この奇譚集も100話まで到達しました。思えば、始まりは『深夜怪文奇譚』から始まり、そこから数々の曲がりくねりを経て現在になりました。100話まで書けたのも、深夜テンションのおかげでしょうか?
ここで一つご報告を。この100話を『深夜奇譚集』の区切り目とさせて頂こうかと思います。ですが、深夜の奇譚集は終わりません。
次回『深夜奇譚集 第二巻』にて再会しましょう。
それではまた、興が乗った深夜帯にて。
無氏名
追記:『深夜奇譚集 第二巻』始まりました。
「https://ncode.syosetu.com/n3977hf/」