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第一章1話『初めての遭遇』


 まぶたに感じられる日差しで目が覚めた,その青年,水谷雫は眠気の残る呆けた様な顔で周りを見渡し,はっ,と意識を失う前の状況を思い出す。


 しかし意識が朦朧としている中の記憶はあまりにも異常で,ただの夢か気のせいだったんじゃないかと自分を疑い始める。しかし周りのなぎ倒された木々と自分のいるクレーターがそれを現実だと物語っていた。


「なんか...やけに眩しいな,って全然外に出てないフリーターかよ」


 彼,(シズ)は独り言ちた,適当な冗談を言ってみても周りに誰もおらず,ただただ静けさがその場を支配するだけであった。

 

 未だ混乱している頭を落ち着けるために指をポキポキと鳴らす,いつ頃からやり始めたのかもわからないどこかのガキ大将みたいな癖だ。


「あったけーな,春じゃあるまいしもうちょっと大人しくしたらどうだよ,太陽さん。」


 おそらく誰かが聞いたら気の毒そうな視線を向けただろうがそれをできる人は今ここにはいない,まずそれ以上に明らかにおかしい所があるのだが混乱しているシズは気づかない。


「風もあったけーし,いい昼寝日和だ...な.....」


 彼はそこでやっと違和感に気づく。


「あれ?......服,どこ行った?」


 つぶやいた直後焦った様に周りを見渡すが服はどこにもない,いや周りに人がいないかを確認していたのかもしれない。


「はあ?誰だよ俺の服剥いだやつ!ってか変態だろ!100パー変態だろ!男子高校生の服剥いでなぁ〜にが楽しいんだよ!」


 彼は焦って立ち上がり少々ふらつきながらクレイターからの脱出を試みる,クレイターの側面は何かに押しつぶされたかの様に押し固められられていた。少し滑りながらもなんとかクレイターから脱出しその場を離れる,ここを誰かに見つかったら100%交番に連れて行かれただろうと考えながら,放射線状に根こそぎ倒された木々のサークルから離れ,草むらに隠れる。


「うわ,足の裏に棘刺さってんじゃん,地味に痛い奴だわー」


 小学生の頃下校中に裸足で帰っていたことがあったのを思い出し,苦笑いをする。


「しかしどうしよう,この状態で歩き回ったら確実に変態扱いされる,ってかここどこ?ウェアアムアイ?」


 周りの木々には青々と葉がついており心地よい暖かさからも春というのはわかるのだが,周りの木を一度も見たことがないことに違和感を覚える。


「このカブトムシ探すために3時起きで出かけるムシキングが見分けれない木って事は少なくとも近くの森林公園じゃないな,それにこの気持ち悪い空気が気になる。ほんと何なんだよ,目え覚めたら変なクレイターの中にいるし周りの木は根こそぎ倒れてるし,終いには全裸だぞ!全裸!嫌がらせにもほどがあんだろ。」


 ぶつぶつと文句をつぶやきながら,自分の置かれている状況を理解しようと,頭を働かせる。



 ==10秒後==






 ==30秒後==






「いや,わかるわけねえよ,そもそもなんであそこに倒れてたんだ?確か...........⁉︎」


 数人の足音とかちゃかちゃという金属音がクレイターとは別の方向から聞こえてくる,この状況を見られたらやばいので脳をフル回転させて脱出案を考え始めるが,運の悪いことに彼ら(恐らく)の足音は真っ直ぐこっちに向かってくる。


ーーーヤバいって,これ見られたら俺の人生が終わる


 すると彼らはシズから10m程のところで立ち止まった。


「どうかしたか?隊長?もしかして愛しいジョディアに会いたくなったのか?」


 彼の後ろを歩いていた男が言う。


ーーー隊長?ジョディア?どう言うことだ?


 すると先頭を歩いていた男が明らかに狼狽した様な声で,


「そ,そんなわけないだろう!今は任務の最中だ口を慎め!俺は隊長だぞ!」


 その隊長と呼ばれた男以外が爆笑している,その空気を誤魔化す様に隊長が言った。


「足元を見てみろ,なぜか青いままの葉がそこら中に落ちているんだ。」


「あ,ほんとだ流石隊長ですね,観察眼が鋭い。」


「さっきまでお前もバカ笑いしとっただろ。まあいい,とにかく軽く周辺に何か痕跡がないか探すぞ。」


「「「了解」」」


 すると彼らは周辺を歩き回りながら何かを探し始める,こっそりと草むらの隙間から覗くと彼らは三十歳ほどの男の四人組の様だ,皆図体が大きく相当鍛えられているのが服の上からでもわかる,そして全員が妙な服を着ていた,茶色く分厚い皮のような服で,表面は滑らかで何かのコーティングがされているように見える,極め付けはその腰にさしている剣だ,シンプルな形のロングソードと呼ばれる剣で黒い鞘に入っていた,豪華な装飾などは無い使い込まれた剣から装飾品の類でないことは確かだ。


ーーー 一体こいつら何者だ?このご時世に剣なんか腰につけちゃって,コスプレ?にしては本格的すぎるよな,となるとあの妙な服は革鎧ってやつか?そんなのゲームの初期装備ぐらいでしか見たことないけど...


「隊長!こっちにでかい穴ができてるぜ!明らかに自然にできたもんじゃない」


 しばらく周りを探索していた彼らのうち一人が例のクレイターを見つけたようだ。すると隊長が,


「周りを警戒しろ!その巨大な穴を開けたやつが”さっきの揺れ”と関係している可能性が高い,気をぬくなよ」


 クレイターを見つけた男は剣を抜き他の隊員(さっき隊長って言っていたから)に背を向け周りを警戒している,そこに隊長を含む三人がそれぞれ違う方向を警戒しながらゆっくりと歩いていき,合流する。


 シズもこっそりと後をついていき四人を観察する。


「俺が最初に降りるから周りの警戒を怠るなよ,もし”奴”が出てきたら俺を置いて逃げて報告しろ。何が出来るかわからんが俺が足止めをする」


「死ぬなよ,隊長,俺はジョディアに隊長の戦死を報告して殴られたくないからな」


 そう言うとニヤッと笑った。


「そんな簡単に死ぬか,むざむざ隊員を死地へ送り込むようなことはしないさ」


 隊長は冗談を交わし合うと慎重にクレイターを降りていく,それにしても勇気のある隊長だ,普通なら尻込みしてしまう様な状況なのに平然と先に降りていく。他の隊員は背中合わせにクレイターの周りを警戒している。


 しばらく経ってから隊長がクレイターをよじ登って戻ってきた。


「特に何もなかった」


「よかった,俺たちも死ななくて済む」


 先ほどから隊長をからかっていた隊員が安心したように言った。


「痕跡が見つからなかっただけだまだ安心できない,この大穴はかなり最近できたものだろう,ここら辺の見回りをしてる組は誰だ?」


 隊長が聞く。


「多分ランドリックのところなんじゃないか」


「帰ったら前回の見回りの事を聞いてみるぞ,恐らくこの大穴ができた衝撃で”あの揺れ”が起きたんだろう,それにしては穴が小さい気がするが,この穴は掘られた感じじゃない,何かに押しつぶされたかの様に土が固まっている,恐らく”魔法”の類だろう」


ーーーん?今聞き捨てならない言葉が聞こえなかったか?”魔法”?


「とにかく今日はこれくらいで帰りましょうよ隊長,怪しい痕跡も見つけた事だし」


 クレイターを見つけた隊員が気だるそうに言った。


「いや,他に痕跡が残っていないか少しだけ調べる,もう少しだけ頑張れ,今夜は奢ってやるから」


「男に二言はないだろうな,隊長」


 もう一人の隊員が言う。


「当たり前だ,しかし妙なところで出会ったな,そこの草むらに隠れてるお前,目的はなんだ」


 最後の一言には明らかに先ほどからの雰囲気とは違う重みがあり,こちらに対しての敵意を感じる。心臓は早鐘を打ち相手にも聞こえてしまうんじゃないかと思うぐらいに大きく聞こえる,こっそりとその場を離れようとすると,


「動くな。動いたら切る」


 シズと四人の間には20mほどの距離があるのに首元にナイフを突きつけられた様な感覚がある。心臓は壊れるのではないかと思うぐらいに動いており,耳鳴りも聞こえ始めた,その状況がしばらく続いたがシズには何十秒もの長さに感じられた,すると隊長がおもむろに口を開き。


「オーガス,ハーキース,そいつを捉えろ,聞きたい事がある」


 隊長が指示を出すと一言も喋っていなかった男と先ほどからずっと冗談を言い合っていた男がこちらに歩いてくる,先ほどの和やかな雰囲気はみじんも見受けられず,殺気を振りまきながらこちらに迫ってくる。


ーーーヤバいヤバいヤバい,なんでバレたんだよ,完全にプロじゃねえか,あの目絶対人殺した事あるよ。


 突然の危機に対処しようとするが頭の中は真っ白で何も浮かんでこない。そうこうするうちに二人はすぐそこまで来てシズの腕を掴み,引っ張り上げる。


 静けさがその場を支配した。


 そして沈黙を破って隊長が口を開く。


「お前....服はどうした?」




「あはは〜,無くしちゃいました」


 またもや沈黙がその場を支配した。


 




 




 


 


 

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