ープロローグー『目覚めと違和感』
こちらの投稿が初めてになりますので,更新速度はあまり早くないと思います。それでもよければ読んでください!
乾燥した風が落ち葉を巻き込んで吹くなか,一人の青年が歩いていた,
身長はそこまで高くもなく低くもなく,少し顔が幼く見えるぐらいのごくごく平凡な青年だ。
ただ,その顔は陰り,おぼつかない足取りで森の中の舗装されていない道を歩いていた。
聞こえるのは乾いた風の音と青年が落ち葉を踏みながら歩く足音だけだった。
彼は突然足を止め,何かを恐れるかの様に耳をふさぐ,
何かをつぶやいている様に見えるがその声は誰にも届くことはなかった。
彼はキョロキョロと何かを探すかの様に周りを見回す,もちろんそこには風に舞い上げられ空中で踊る枯葉と静かに佇む木々しかない。
彼の探しているものは見つからなかったのかまた歩き始める。
青年の頭には先ほどからずっとある音が響いていた,水滴が水に落ちる様な音が。
「雫...か...」
そう呟くと彼は諦めた様な顔で眼を閉じた。
そしてひときわ大きな雫が水に落ちる様な音がして意識が閉ざされる。
その直後にはそこには何も残っておらず,ただただ強い風が落ち葉を巻き込んで吹き荒れていた。
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妙な感覚で目が覚めた。
いや意識が覚醒したというのが正しいだろう,眼はすでに開いており,脳が突然その景色を認識し始めたからだ。
ーーーん?なんか空気が重くないか...
明らかにいつもと違う,雰囲気の問題ではない,実際に空気が重いのだ。
夏の体にまとわりつくような空気の感じは似ているが気温が伴っておらず,ただただ妙に動きを阻害してくるような空気の感覚だけがある。
違和感の正体の考察に入る前に突如空気が震え始める,その振動は鼓膜に伝わり,異常事態を物語っていた。
ーーー地震.....なのか?
周りを見渡して状況を把握する前にそれは訪れた。
今ままで肌で感じていた妙な重さのある空気が体を押しつぶすように圧迫してくる。
その感覚は飛行機の離陸の際の圧力に似ていたが明らかに規模が違い,全ての方向から押しつぶすような感覚が以上を物語っていた。
ーーーヤバい...息が...
肺の中の空気は押し出され,空気を吸うことは許されない。
体が酸素を求め悲鳴をあげるが、頭をガンガンと殴られているような感覚が酷くなるだけで体の求めている行動には結びつかない。
無意識に酸素を求めるように空を掴む腕,それは重りを着けられたように重い。
何もわからない,何も考えられない,突然現れた苦しみは思考を停止させ,小さな嗚咽が他人事の様に感じられる。
次第に体が熱くなり力が抜けていく,それでもなお,異常な状況を理解しようと脳はフル回転で動くが苦しみ以外の何事も理解することはできない。
ついに足も限界に達し,膝をついて倒れようとするが倒れるはずの地面がそこにはない,青年は薄れゆく意識の中で一つの違和感に気づく。
ーーー.....浮いて...る?.......
景色はだんだんと真っ白に染まっていき薄れていく。
かろうじて残っていた意識が突然途切れ真っ白だった世界が真っ黒に反転する。
揺れ続けていた地面は次第に揺れが弱くなり,止まる。
そこに残ったのは多くの木々がなぎ倒された森と,その中心にある小さなクレイターの中にゆっくりと落ちていく青年だけであった。