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外面だけは完璧なコミュ障冒険者、Sランクパーティーでリーダーになる  作者: 端桜了/とまとすぱげてぃ
最終章 外面だけは完璧だったコミュ障冒険者、Sランクパーティーでリーダーになる
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ニュー・ワールド

 目が覚める。

 

 肌がひきつるような、熱と痛みを腹に感じた。手をやってみると、不格好に塞がった傷が脇腹で主張している。


「…………」

 

 うわーお、刺されちゃったよ! いったい!! めたくそに痛い!! 溶岩に潜っても痛みも何もなかったのに、ちょっくら刺されただけでペインオーバー!! ヘルプ!! ヘルプミー!!


 脳裏をよぎるのは、落下中に覆いかぶさってきた黒い影。水面に叩きつけられる寸前、その影に救い出された気がする。正直、助けてもらえなかったら、弱体化した僕はあの世逝きだったに違いない。


「…………」


 しかし、どうして、弱くなっちゃったかな? あれかな? 休みの日は引きこもって、ラノベばっかり読んでたからかな? もしくは、僕とフィオールの結婚に対して、嫉妬に焦がれた全世界民の恨――水面に、見知らぬ顔が映っている。


「…………?」


 誰だ、コイツ。


「……フッ」


 僕が笑うと、水面上のソイツも笑った。


「……フフッ」


 あまりに汚い笑顔で、思わず、また笑っちゃったよ。というか、あれ? もしかして、これ、僕なの?


 なんというか、かつてのイケメンフェイス(唯一の長所)はどこにいったのか、どう角度をつけてもフツメンが良いところの顔だった。心なしか身長も低くなっている気がするし、筋肉量もかなり落ちているみたいだ。


 なんか、僕が小さい頃の顔に似てるな……いつの間にか、自分がイケメンに育ったと思い込んでたのかな?


 それにしても、これからどうす――


「そこの少年、逃げろっ!!」


 唐突に、茂みからおじさんが飛び出してくる。首根っこを掴まれて、混乱の最中、引きずられるような形で僕は足を動かす。


 大響音。大木をなぎ倒しながら、二足歩行の龍が姿を現し、凄まじい勢いでこちらを追いかけてくる。硬い鱗が擦れる音が辺り一帯に響き渡り、もうもうと土煙が上がって、空気を引き裂くような咆哮がほとばしる。


 全速力で走りながら、見覚えのある三人組が叫ぶ。


「や、やばい!! やばいよ、おじさん!! コレ、本気で死ぬやつ!! おじさんの加齢臭だけがこの世に残るやつ!!」

「だから、おじじに言ったんだじぇ!! ちゃんと、体臭には気をつけて、臭い予防(スメルケア)しろっちぇ!! その結果がコレだじぇ!!」

「今のおじさんに必要なのは、スメルケアじゃなくて、メンタルケアだってわかんないかなぁ!?」

「……オダ」


 目つきが悪い無精髭を生やしている中年男性……かつて、共に大規模探索グループシークを行ったオダさんは目を丸くする。


「なんで、俺の名前を」

「……オーロラ」


 オダさんがリーダーを務める若木蕾グロースのサブリーダーとも言える、魔女っ娘オーロラ・ウェルスター。彼女は、吹き飛びそうな三角帽を押さえつけ、こくこくと首を縦に振る。


「……………」

「なんで、ヴィヴィの名前は出てこないんだじぇ!? 今の流れからしたら、間違いなく出てくりゅでしょ!?」

「……ヴェヴェ」

「ヴィヴィ!! 数秒前にヴィヴィって言っちゃ!!」


 真っ青な顔色とちんまりとした体躯、死霊術師(ネクロマンサー)のヴィヴィ・ポップは、憤慨したかのように垂れ帽子を首で回す。


 二足龍は大きな鼻孔を広げながら追走し、赤黒い花弁を広げるナフンシアを上手に避けながら走る。未だにこちらに追いつけていないのは、僕らが木々の間を縫うようにして駆けているお陰であって、開けている更地に出た途端に食い殺されるだろう。


「少年、あんた、一体……って、それどころじゃねぇ!! 速報!! おじさんたちの生命がピンチ!!」

「たち?」

「ヴィヴィ。当たり前のように、おじさんを生贄に捧げるのはやめなさい。同意見よ」


 オーロラとヴィヴィはガッチリと肩を組んで、中心にいるオダさんに左右からタックルを仕掛ける。


「おい、ふざけんな!! この世に生きていいおじさんと死んでいいおじさんがいるなら、俺は生きていいおじさんで有りたかった!!」

「残念にゃがら、おじじは死んでいいおじさんだじぇ!!」

「忘れない……私、おじさんのこと、忘れたりしないから……」

「感動的な台詞を吐きながら、無表情でガチのタックル仕掛けてくるのやめろ!! ここまで来たら、一緒に奈落に落ちようぜ!!」


 オダさんに肩を掴まれ、四人は肩を組みながら並走する。奇妙な一体感、そして仲間であるという感情。


 僕は感動している。誰かと肩を組んでいるのに、当然のように吐き気を催さない。それどころか、とても良い気分だ。これが友情、仲間、家族。コミュ障だった僕が知らなかった、新しい世界ア・ホール・ニュー・ワールド


「……あ・ほ~るにゅ~わ~ど」


 思わず、僕は歌った。見守っていたオダさんは、優しげに僕へと微笑みかけ、大きく口を開く。


「あ、ほ~るにゅ~わぁあああああああああああ~!!」


 オーロラもヴィヴィも、通じ合ったかのように続く。


「ア・ホール・ニュゥウウ・ワァアアアアアアア!!」


 僕たちは、四人で声を合わせた。


「「「「ぁ、ほぉおおおおるにゅぅううううううううわぁあああああああああああああああああああ!! ふふんふん!! ふ~ふふふふ~ふ~!!」」」」


 あぁ、なんて良い気分!! でも、死んじゃいそう!!


 オダさんが虚空を見つめて、ニヤニヤしながら続きを歌い始めたので、さすがに僕も動くこととする。


「……オーロラ」

「ワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 最早、歌じゃなくて発狂だよねソレ。


「……ナフンシアを浮かせられるか?」

「え? う、うん。あれくらいの質量のモノなら、魔術を使えば、お茶の子さいさいだけど?」

「……ヴィヴィ、ナフンシアに死霊術(ネクロマンス)で臭いを」

「ゔぇ? う、うみゅ。た、タイミングしぇえわかりぇゔぁ、ナフンシアに死体の臭い付けはできりゅけどみょ?」


 期待に満ちた目で、こちらを見つめるオダさん。もちろん、若木蕾グロースのリーダーたる彼には、とっておきの役割をになってもらう。


「……オダさん」

「あぁ、なんでも言ってくれ!」


 一呼吸置いて、僕は言った。


「……歌ってくれ」

「ァ、ホォオオオオオオオオオオルニュゥウウウウウウウウウウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 オダさんは、大声で歌いながら隊列から外れる。全力で走っていく中年に釣られて、二足龍は進行方向を変えた。


「……オーロラ、今だ」


 術式を発動させたオーロラは、足元に生えていたナフンシアを大量に宙に浮かせる。


「……ヴィヴィ」


 ただでさえ濃厚な腐敗臭を発しているナフンシアに、死霊術ネクロマンスをかけることで死体の臭い付けを施す。


 十分に距離をとっているにも関わらず、とんでもない臭いを放つソレを、僕はひとつかみとって――外套マントで鼻口を覆って駆け出す。


 二足龍は目の前のオダさんを識別できなくなったかのように、くるくると辺りを回り出し、前がほとんど視えていないのか大木に頭をぶつける。


 接近しナフンシアを掲げると、鼻を守るかのように後退りをし、徐々に徐々に誘導されていって――川のぬかるみに足をとられた。


 息を荒げながら疾走、転けた二足龍に接敵。思い切り、鼻にナフンシアを詰め込む。詰め込む、詰め込む、詰め込む。


 数秒で決着はついた。


 龍はびくんびくんと身じろぎをして、暴れまわればまわるほどに泥土の中へと埋もれていき、最後には失神したかのように動かなくなる。


 疲れ果てた僕は、その場にへたれ込んだ。

 

 やっぱり、視力が弱いのは龍種特有だ。鼻孔が大きかったから臭いで獲物を捕捉するだろうとは思ってたけども、臭覚がココまで鋭敏だとは思わなかったな。一か八かで飛び込んでみて良かっ――目の前に、三人が立ち尽くす。


 代表して、オダさんが口を開いた。


「少年。なんで、俺たちを知ってる?

 あんたは」


 彼は、ささやく。


「何者だ?」


 ユウリ・アルシフォンでーすっ☆

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