ご愛読、ありがとうございました
はーい、みんなー、アミィだよぉ!
このお話でこの物語はおしまいだから、みんな、感動のエンディングを期待しててねぇ!
終わった。
半身の吹き飛んだアーサーを確認し、救えなかった彼から目を逸らす。
――この世で、最も簡単な解決方法は殺害だ
リーナ。お前の言うとおりだったよ。
結局、僕もまた、こういう手段でしか救えないんだ。だから、もう、自分のことを英雄だなんて思わない。
僕は、ただの人殺しのコミュ障だ。
「ユウリ様!!」
「ユウリ先輩っ!!」
なにもかもが終わって、平和なひとときが戻ってくる。
幸せな一時を予感させるかのように、フィオールとヴェルナが、笑顔を浮かべながら駆け寄ってきて――頭の中、壊れた鐘の音が響き渡った。
りんごーん、りんごーん、りんごーん。
不気味な鐘の音、天蓋が空を覆い尽くしたかのように暗くなる。
おぞましいとしか形容できない、臓物を思わせる赤黒い“肉塊”が、雲の代わりに世界を覆い尽くしていく。鐘の音が早まる。なにかを予感させる不気味さ、肉塊から無数の青白い手が伸びてきて、誘うかのように蠱惑的に蠢いた。
暗天の下で、僕たちは惑う。
「なに、これ……なんなの……この魔力量……け、桁が違う……せ、精霊の坩堝が解放された……だけじゃない……は、はじまった……はじまったんだ……」
フィオールは、唇をわななかせてささやく。
「神の……採択……」
ささやき声に反応したかのように、肉塊から分離された青白い手の群塊が、ひとつの“天秤”の形をとる。
求めている。
神が、生贄を、犠牲を、代償を、欲している。
「な、なんで!? どうしてっ!? あ、アーサーは死んだじゃない!? ほ、他の円卓の血族だって、全員倒したの――シア」
ヴェルナは、よろめく。
「ま、まさか、全部、偽装……東西南北の尖塔の炎上も……塔に配置された円卓の血族も……アーサーも……ぜ、全部、時間稼ぎのための偽装だったの……騎士団長が精霊の坩堝を解放するまでの……じ、時間稼ぎ……」
フィオールは、へらへらと笑いながらふらつく。
「え、えぇ? だ、だったら、わたし、たちが、命懸けでやってきたことは……な、なんだったのですか……あ、あの死闘はいったい……なんの、ために……」
絶望に浸りきって、へたれ込んだふたり。僕の両目は、軽やかにスキップをする諸悪の根源を捉える。
レイアさんの姿で頬を紅潮させ、愉しげに歩む彼女は、僕のほうに近づいてくる。
そして、艶めいた表情で――手をふった。
「ばいばい、英雄」
「……え?」
僕の胸の中心から、剣先が突き出る。
身体中の力が、抜け落ちる。
「……嘘だよ」
背後から、そっと耳打ちされる。
だらだらと口の端から血が漏れ続けて、冷めていく肢体を感じながら、僕はその場に崩れ落ちる。
僕を見下げる顔。見覚えのある外面。
旧友は、哀しげに僕を見つめていた。
「勝ったと思ったか?」
ぼやける視界の中で、彼はつぶやいている。
「真の王は死なずの術式は、あんな聖剣には描き込まれてない。
最初から――ココにある」
はだけた彼の身体には、赤黒い幾何学模様が彫り込まれていた。まるで、呪言を己に刻み込んだみたいにして。
「全部、嘘だったんだよ……お前は、贋物の外面を見せつけられ続けてたんだ……言ったろ、勝ち目なんて一ミリもねぇって……立ち上がり続ければ、子供の読む夢物語みたいに勝てると思ったか……」
顔を歪めながら、悔しそうにアーサーは吐き捨てる。
「ココは現実だ……そんなご都合主義……ねぇんだよ、端から……!」
「…………」
「トリスタンが負けたのもガラハッドが負けたのも、全部、神託の巫女が筋書きに書き込んだからだ……この笑えずに終わりを盛り上げるための演出なんだよ……なにもかもが予定調和で進んでて、最終ページでお前が死んで、この物語はおしまいだ……」
あぁ、冷たい。なんて冷たい。冷たくてたまらない。
そうか、僕。
やっぱり、死ぬのか。
ダメだったかな、あの秘策。間に合わなかったみたいだ。
「悠里……」
泣きながら、アーサーはささやく。
「英雄なんて……いねぇんだよ……」
薄れていく現実、なにもかもが真っ暗闇、僕は……立たなきゃ……あぁ、でも……あったかくて……あれ、からだがうごかない……あれれ……これで、おわりか……だめ、だろ……たてよ、ゆうり……ねぇ、おいったら……ゆうり……ゆう……り……
立ち去っていく、アーサーとレイア。
残されたヴェルナは、ユウリに駆け寄って――ひきつった笑顔で、親友に呼びかける。
「ね、ねぇ、フィオ……ゆ、ユウリ先輩……い、息、してないよ……?」
「……………………ぇ」
よろよろと、フィオールは、どこを視ているかもわからず。視線をあちこちにさまよわせながら、倒れているユウリに近寄って口元に耳を当てる。
呼気が、あたらなかった。
「あ、あは……う、うそだ……う、うそですよ、そんなの……し、しぬわけ、し、しぬわけないでしょ、ゔぇるな……ゆ、ゆうりさまが、しぬわけ……ない、でしょ……しぬわけ、ないじゃない、ですか……」
必死に魔力を流し込んで、心肺蘇生を行う。
汗だくで。必死に。
涙と鼻血を垂れ流しながら、ひたすらに生命を押し戻そうとする。
一秒が経って、一分が経って、一時間が経って……腕の感覚がなくなった頃、うなだれたヴェルナが、ぼそりとつぶやく。
「……フィオ」
「ゔぇ、ゔぇるな……な、なにしてるんですか……て、てつだってくださいよ……ゆ、ゆうりさまが……し、しんじゃうじゃないですかぁ……な、なにしてるんですかぁ……て、てつだってくださいよぉ……」
「フィオ」
「ほ、ほら、ね、お、おしゃべ……おしゃべりなら……あ、あとでできますから……て、てつだってくださいよぉ……お、おねがいしますからぁ……てつ……て、てつだって……くださ――」
「フィオッ!!」
びくりと震えて、フィオールは動きを止める。
赤紫色の髪の毛で顔を隠したヴェルナは、その隙間から静かに涙を流し、か細い声を振り絞る。
「もう……死んでるよ……ユウリ先輩は……もう、死んでる……」
「……嘘」
フィオールは、にへらと笑う。
「嘘、だ……嘘だ……死ぬわけない……ユウリ様が……死ぬわけ……し、死ぬわけ……」
指先が冷たい頬に触れて――否応なく自覚する。
フィオールの両頬がぴくぴくと痙攣を始めて、無意識に滂沱と流れ始めた涙が、彼女の綺麗な顔立ちを汚していく。
「ぁあ……ぁ、ぁあ……ぁあああ……っ!」
フィオールは、己の顔面に爪を立て、掻きむしりながら絶叫する。
「ぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
壊れてしまった親友を見つめ、微笑を浮かべたヴェルナは……和やかに、自決の準備を始めていた。
はーい、みんなー、アミィだよぉ!
かつては、ユウリ・アルシフォンの中にいた神託の巫女、ユウリ・アルシフォンを主人公にした勘違いモノを書き上げた作者張本人なの!
web小説版を読んでくれたみんな、ありがとぉ! アミィ、すんごく感激してるよぉ!
ファンのみんながいてくれたから、ココまでユウリを地獄に叩き落とせてかんむりょお! アミィ、とってもうれしいな!
この後、ユウリを失った端役どもが、無残にぶち殺されるんだけどぉ……そんな脇役どもの話なんてどうでもいいよねぇ? くふふっ!
というわけでぇ、このお話はおしまいでぇ~す!
下の方に『次へ >>』なんて出てこないし、ブックマーク登録してても更新通知なんていっしょーこないからねぇ? 明日の朝には、完結済み作品に変わってるじゃないかなぁ?
ユウリ・アルシフォンが死んで、おっしまーい! ばいばーいってかんじぃ? 笑って終わりのハッピーエンドを望んでた人たちは、ほんとーにごめんねぇ?
でも、アミィの存在意義は『人間に必要とされること』……コレを満たせなくなっちゃったらお払い箱でぽーい! 人間の欲望なんて際限ないから、だいたい5年くらいでおさらばしないと、飽きられたアミィはポイ捨てされちゃう可能性があるのぉ(実際、ユウリは、力がなくてもココまで来ちゃったよね?)。
なんだかんだ言って、アミィは人間さまに依存してるんだよねぇ?
だって、ユウリたちが、筋書き通りに動いてるのも、アミィの書いたライトノベルを、読んだ人たちが『ユウリ・アルシフォンは、そうしたに違いない』って“信じてる”からだもん。
つまりー、人の信じる力が、この物語を創ったの。さすがにアミィひとりの力じゃあ、人の人生を自由自在に操れないんだー。
だからさ。
だから、今、コレを読んでるキミも共犯なんだよね。
この結末を信じたから、ユウリ・アルシフォンは失意の中で死ぬことになるんだもん。あの世界の連中が、アミィの書いた“最終話”を信じ込んだから、ユウリは無様になにも成し遂げられずに死んじゃったんだよ?
ま、そんなこと、終わった今はどーでもいいよね? くふふっ!
それじゃあ、みんな、こんどこそばいばーい!
アミィちゃんの次回作にご期待ください! ばははーい!!
ねぇ?
ねぇ、なんで、まだ読んでんの?
終わった、って言ったよね?
なんで、読んでんの?
終わりだって。帰りなよ。他に面白い物語なんて、幾らでもあるじゃん。
こんな大したことない、英雄に成り損ねたガキの物語なんて、読んだところでなにも残りはしないよ。
無駄だよ、帰りなよ。
パソコンで読んでるんだかスマートフォンで読んでるんだか知らないけど、ブラウザを閉じるかアプリを閉じるかして帰りなよ。
……じゃあね、ばいばい。
なにを。
なにを望んでんの?
アミィは絶対なんだよ? 読んでも無駄だから。
……ま、好きにしたら。
どーせ、次話なんて投稿されないよ。だって、アミィが作者だもん。
……信じても無駄だから
……ばいばい