Virus Busters!
「…………」
目をつぶってから数秒。スーは明らかに先ほどとは違う感触を得ていた。室内で座っていたはずだが今は立っており、また、頬を撫でる風は確実に室内のものではなかった。目を開ける前から周囲のざわつきも聞こえておりスーはあまり良くないことが起きた事を肌で感じていた。
それでも恐る恐る目を開ける。まず目に入ったのは街だ。周囲は背の高い建物が乱立している。他の惑星でのビルに近いとスーは思った。
そして自分の近くを見回すと。
「ダレダ?」「ワカラナイ」「ウィルスナノデハ?」「ショブン?ショブン?」
「わぁ……」
スーの周りを何体もの2頭身くらいの小さいティーが囲んでいた。
『こちらブキコです!スーちゃん予定地と全然違うところにいるみたいだけど状況は⁉︎』
「最悪ですね」
現在スーはビルとビルの間の路地を走り回っていた。後ろからは小さいティーが沢山追いかけてきている。皆一様に「ショブン、ショブン」と呟いている。
『……多分だけどこの方法ってハッキングに近いやり方なの。そのせいでそういう対処をとられてるのかもしれないわ』
「そうですか。天才の肩書きは取り上げですね」
『ひどい!』
軽口で応えてはいるがあまり良い状況ではなかった。
「何体か叩き伏せても?」
『そんなことしたら完璧にウィルス扱いになっちゃう!我慢して!』
「そんなこと言われても……!」
足の速さではスーの方が速かった。が、それだけでは地形の不利は覆せない。気づいた時には狭い路地の四方を囲まれてしまっていた。
「「「ショブンジュンビ」」」
ガチャン、と一斉に銃を取り出す。銃身に何かがチャージされている。銃全体が光り始める。これをうけたらひとたまりもないことが一目でわかる。
「このままだとまずいんですがブキコさん?」
『あわわ待って待って。ティーのプログラム見た目よりも複雑でなかなか管理権限までアクセスできないの』
「もう手詰まりじゃないですか!」
「「「10……9……」」」
もう時間がない。銃は今にも放たれそうなほど光り輝いている。
「「「4……3……」」」
『ごめん間に合わない!』
「くっ……」
スーはとにかく悪足掻きする為に構えた。その時だった。
「全員構えやめ!ここはオレに任せてくレ!」
何処からともなく声が聞こえた。
「ホアンカン!」「ホアンカンダ!」「ワカッタ!」
声に呼応して次々と銃がしまわれていく。
「ウム、一時解散!持ち場に戻レ!」
「ハーイ!」「カイサン!」「バイバイ!」
ゾロゾロと、先ほどまで大量にいた小さいティーは全て何処かへ行ってしまった。
「すまねぇな嬢ちゃン。みんな今はピリピリしててナ?だがオレにはわかル。嬢ちゃんアンタ、ワクチンってやつだナ?」
「あなたは……」
スーは声のする方に振り返る。小さいティーの代わりに現れたのは普段より少し背が高めで、深くハットを被ったティーだった。
「わぁ……」
「何だその反応ハ」




