ティーと海賊と昔の話
1発目から間をおかずに2発目レーザーキャノンが船に当たる。
「くぅ!」
マリアの構えていた石板がバラバラにくだける。衝撃はあれど船自体の損傷は無かった。どうやら呪術を使って防いだようだ。とはいえそれもここまで、3発目は防げそうもない。
が、3発目のレーザーキャノンは来なかった。代わりに来たのは──。
「敵船だ!」誰かが叫んだ。
ドカンとマリアの宇宙船に相手の宇宙船が無理矢理密着する。側面の扉が開きぞろぞろと甲板に降りてくる。
「お前は……」
マリアは降りてきた集団に覚えがあった。
「よぉ〜嬢ちゃん。この前のお礼をしにきたぜ」
1人、前に出てきた。スキンヘッドで筋骨隆々の男だ。
「まだ名乗りを変えてないらしいじゃねぇか」
男の威圧的な声に負けずマリアはなんでもないように答える。
「当たり前、なんであたいがアンタが勝手に決めたことを守らないといけないんだい?」
場の空気は張りつめて今にも切れそうな糸のような緊張感で満たされていた。男はさらに話す。
「俺はちょっと改名してほしいって言ってるだけだぜ?マリア宇宙海賊団って名前をな?」
なんてったって、男は続ける。
「被ってるんだよ!俺たち[魔李亜宇宙海賊団]と!」
奇遇にも男の名前は魔李亜だったようだ。
それを聞いてマリアは笑いだす。
「やっぱりアンタ見た目と名前が一致しないよ!改名すべきはアンタの方じゃないか!」
「うるせぇ!お前が出てきたせいでただでさえ名前で舐められてるのにお前らと間違えられて迷惑してるんだよ!」
魔李亜は男泣きしながら話を続ける。
「俺達は硬派な宇宙男児だぞ!それなのに『この前まで幼女だった』『水を掛けたら幼女になるのでは?』なんて言われて実際に水まで掛けられたんだぞ!」
「船長涙拭いてくだせぇ!」
「すまねぇ……。とにかく!直す気がないってんならここからは実力行使だ、覚悟はいいか?」
魔李亜の背後の集団が構えをとる。
「いいわ。この前みたいに返り討ちにしてやろうじゃない」
ガイコツたちはその声に応えるように構える。
「「かかれ!」」
2人の声が同時に響き、戦闘が始まった。




