自由な星の住人の話
「スーさん、着きましたヨ!あれが自由な星でス!……スーさん、スーさん!起きてくださイ!」
ドンドンと扉を叩く音が聞こえる。どうやら寝てしまっていたらしい。その証拠に私の書いていた報告書は――まだ名前と落書きしか書いてないが――ヨダレでグシャグシャだ。
「……わかりました。今から行きます」
片付けは後にしよう。そう心に誓い私はティーさんのいる多目的ルームへ向かう事にしました。
多目的ルームについてふと時間を見ると、もう既におやつの時間を過ぎているじゃありませんか。これはティーさんに文句を言わなければ。
「ティーさん、私はおやつの時間になったら呼んでほしいといいましたが」
優雅にコーヒーを飲みながら雑誌を読んでいるティーさんに文句をつけます。ティーさんはこちらに目を向けることもなく、
「呼びに行ったらメチャクチャに罵倒されたワタシの気持ちも考えてほしいですネ」
……なるほど。ティーさんちょっと怒ってますね?しかも完全に私が悪いようです。こういう時は大人しく謝るに限ります。
「ごめんなさい」
「ハイ、素直でよろしい。しかし今回の仕事は楽なので遅めのオヤツにしても問題ないでしょウ」
そう言いティーさんは机の上にクッキーの入ったお皿を置いてくれました。
なんと。時間に厳しいティーさんにしては珍しい事です。ありがたく頂戴しましょう。
「いただきます」
クッキーを食べながら私は本題に入ります。
「それでティーさん、自由な星というのは……」
ティーさんは読んでいた雑誌を置き、近くの端末を操作します。
「これですヨ。あの全体的に緑の星でス」
そう言ってティーさんは外の様子を見せてくれました。
モニターに映し出された光景は中々圧巻でした。全体的に緑というよりもほぼ緑と雲の白色、後は海の青しかありませんでした。
「なるほど、あれは植物の緑ですね。すごいですね、見ただけでなんと言うか自由って感じがします」
少なくとも私が見ている範囲では植物と海しか見えません。
「こちら側に宇宙船の発着場がないということは反対側にありますね。もう少しゆっくりしててもいいですか?」
「いえ、今回は着陸はしませン。……そういえばスーさんには言ってませんでしたネ。この星には着陸はしませン」
着陸はしない?
「じゃあなにをしにこの星まで来たんですか?休暇ですか?ドライブですか?」
「残念ながら休暇ではないでス。ドライブでも。この星に来た理由は――」
続く言葉は、私の疑問を増やすには十分な言葉だった。
「――この自由な星からの脱出を求める星民の輸送でス」