夏祭りタイム!
いつの世も、どんな星でも、祭りは存在していた。ある時は祈りを届けるため。またある時はただ楽しむため。今の世の中では主に興行的に行っている惑星の方が多かった。
ワイワイと心地よい喧騒が響く。この近辺の道の全てに屋台が並んでいる。食べ物、くじ引き、射的にアクセサリー屋、色々な屋台を通る人々は見て、時に冷やかし、時に買って次の屋台を目指す。
そう、この惑星は夏祭り真っ最中だった。
簡易テントの中に不思議な形があった。開催本部と書かれたテントの中で四角い箱を重ねて作ったようなモノが書類を見ている。モノアイがせわしなく動く。そこへ近づく2人の男。彼らの服には夏祭り会場警備員と書かれていた。彼らはSS隊の隊員だ。人手が不足していたので警備に駆り出されたのだ。
「よぅ、俺たちの巡回は終わったぜ。もう少ししたら交代の時間だ。T」
Tと呼ばれるその四角いモノは近年では珍しい形のロボットだった。精巧な人型が当たり前の時代から見れば前時代のロボだ。中身は違うが。
「そうですカ、お疲れ様でス。ワタシの方もソロソロ戻ってくると思いますが……ホラきましタ」
目線を追うと、そこには浴衣をきた女の子がいた。
遠くから見ても綺麗だとわかる水色の長い髪、端正な顔立ちといつもより真面目な表情からミステリアスな雰囲気を醸し出していた。普段走り回っている姿からは想像も出来ないほどお淑やかな歩調でTの方に向かってくる。
「おお……すごいですねスーさん」
「本当にそう思ってます?実はみんなで私をからかっているのでは」
「ほんとですっテ!ねェ?」
後ろにいた2人にも同意を求める。
「ああ、似合ってるな」
「美人さんだな」
更にスーの後ろからついてきていた女性隊員が畳み掛ける。
「ほんとねー、何着ても似合っちゃうから張り切って選んじゃったわ!お陰で交代時間ギリギリまでかかっちゃったけど」
あまりのべた褒めっぷりには普段あまり顔に出ないスーも恥ずかしかったようだ。少し顔を俯かせ照れ隠しに励んでいた。
「あ、ありがとうございます。でも本当によかったのでしょうか。私だけ浴衣を着るなんて」
そう、本来なら他の隊員と同じ警備用のシャツを着なければならないのだ。
「あらー大丈夫よ、支部長に許可もとったし。せっかくのお祭りなのにあんな服じゃかわいそうだわ」
「そうそう、スーちゃんはSS隊の中でも最年少なんだしもっと遊ばなきゃなぁ」
「そうだそうだ」
「いや、でも私はもっと真面目な服装が……」
「あらあらもう見回りの時間ね!さあ行ってらっしゃいT、スーちゃん!」
「了解でス!さあ行きますよスーさん」
グイと手スーの手を引っ張り見回りに向かう2人。
「あっちょっとティーさんあまり引っ張らないでくださいこの服装歩きにくくて……」
スーの声は人ごみに紛れて聞こえなくなった。
「楽しんできてねー!」
最後にそんな声が聞こえた気がしたスーであった。




