Iam a Hero Show
「ゲッゲッゲ。お前らは1人残らず俺の仲間にしてやるゲー!」
彼はゲルゲル星人の1人であるゲルザー。好きな食べ物はぶどうゼリー、最近の悩みは乾燥肌。ドロっとした体がチャームポイントだ。
「やめろー!はなせー!」
「いやー!助けてー!」
彼は子供を脇に抱えながら大笑いしている。それを遠くから見ている者がいた。
「……チュウ」
ジュースを飲んでいるスーだった。
「泣いても喚いてもダメだゲー。助けは来ないゲーよ!」
「……ジュウ」
ジュースはほぼ氷だけになってしまっていたがスーはただただ無言で見ていた。助けに行くこともない。なぜなら
『大変!このままじゃあの子たちが拐われちゃう!皆で彼女達に助けを呼ぼう!せーの!』
「「「たすけてジェノキュアー!」」」
子供達が大きな声で叫んでいる。
そう、なぜならこれはヒーローショーだからだ。ティーさんに逃げられ彷徨い歩いたスーは最終的にデパート屋上にたどり着いたのであった。歩き疲れたスーはそのまま屋上で休憩する事にしたのである。そして少し遠くからヒーローショーを見ることにした。
「……ジェノキュア-……」
ぽそりとスーも呟く。するとそこに、
「まちなさいゲルザー!私達が相手よ!」
白と黒を基調とした2人組が出てきた。2人とも両手に黒と白のアイアンナックルを装着している。彼女達こそ今回のヒーローショーの主役、両手の拳で敵を粉砕、子供達に大人気のジェノキュア達だ。
「でたゲねジェノブラック!ジェノホワイト!この前の仇を取らせてもらうゲ!」
戦いの火蓋はここに切って落とされたのだ。
背後で壮絶な戦いが繰り広げられているのその頃。
「すいません今度はこのロマネスクレープをください」
もはや疲れ果てたスーはティーから貰ったお金で好き勝手におやつを食べることにしたらしい。
「あいよ!お嬢ちゃんよく食べるねぇ!元気な子には生クリームと多めにしてあげよう!」
『ホワイトナックル!ブラストモード!』
「ありがとうございます。このお店のクレープは今まで食べたクレープ屋さんの中では1番美味しいと思います」
『ハイパーゲルゲルビームを喰らうゲー!』
「ありがてぇこと言ってくれるなぁ!ほらお釣だ!」
思っていたよりも話の時間が長かったらしい。
元いた席に戻るとヒーローショーはあらかた終わっていた。
「必殺!マーブルドライバー!」
「ゲゲー!」
決め台詞とともにゲルザーはやられた。彼は地面に逆さまに埋まったまま呻き声を上げていた。
「みんなの応援のお陰で私達が勝てたわ!ありがとう!」
「わーいジェノキュアー!」
子供達の歓声が響く。遠くから見てるスーもこっそりと手を叩いている。ヒーローショーは無事大成功ので幕を閉じた。舞台の横から司会のお姉さんがひょっこり顔を出した。
『さあ次は倒したゲルザーの前で記念撮影です!ステージの前のみんな!集まっ──』
突然大きな爆発音が辺りに響き渡る。ついで大きな振動、最後に子供達の悲鳴が響く。
振動が収まってきた。デパートの機能だろう警報がビービーとけたたましく鳴っている。屋上の警備員がすぐさま駆けつける。
「落ち着いて下さい!今中央本部に通信をとります!」
屋上にいた警備員が通信をとろうとしたその時。彼の背後から手が伸びてきて通信を無理やり切った。
「おう、お疲れさん、あとは俺達がやろう」
タン、という破裂音の後に警備員は動かなくなった。




