終わり、そして
ドン。衝撃と爆発。それと共にスーはオペレータールームのガラスを突き破った。その勢いのまま少し高さがあったオペレータールームから処刑場の地面へと着地、というよりは衝突した。
(本当にばれなくなるとは)
グレネードも杭打ち機も最初から持っていた。普通ならバレるところだが、そこは呪術で補われていた。スーの髪の毛を使った呪術によりスーの体の一部であるかのように誤認させていたのだ。他の3人はスーの装備に気付く事はなかった。
とはいえ厳しいのはこれからだった。
投げたグレネードは閃光手榴弾だ。強烈な光と音で一定時間相手を行動不能にすることができる。特にナノマシンで身体能力を強化していたメイは閃光による視界への妨害と同時に聴力も強くなっているので多大なダメージを負っている筈だ。
「ぅくっ!」
そしてそれはナノマシンでの強化を行なっていたスーも同様だった。本来は強化を切っておきたい所だったが、個人携行武器最大火力の杭打ち機のインパクト時の衝撃を抑えるためには身体強化は必要不可欠だった。閃光には背を向けていて直撃ではないが耳はキンキンと鳴り平衡感覚はあやふやだ。
「うぁ……」
更にスーは右腕からの鈍い痛みに苦痛の声を上げる。身体強化をして尚右腕は衝撃に耐えられずにいた。肩は外れ、常にズキズキと痛みを打ち鳴らしている。
「ぐぅ……!」
そしてそれらを耐えスーは走り出した。痛みで揺れる視界を頼りにスーは残った左手にまだ隠しもっていた銃を構える。
時間は少ない、既にティーは執行台付近まで来ている。自分の体の心配どころではなかった。
ティーは執行台についている。後は落とされるだけ
「ティーさん!」
矢も盾も堪らず叫んだ。何とか走り寄りティーを掴んでいる人型機械の片方に銃口をつける。
銃がうまく扱えない彼女にはやはりいつも通りの戦い方しかなかった。すなわち接近戦。
ドコンと低く重い音が響いた。人型機械の頭が吹き飛ぶ。いつぞやティーの手足を破壊したものと同じ強装弾だ。
左手、更に強力な弾丸による反動を無理やり抑えて残ったもう1体の機械も打ち倒す。が、
「────!」
半手遅かった。ティーはその体を押され上半身から倒れていく。そしてそのままバーナーへと──。
「…………!」
落ちる寸前、拳銃を投げ捨て咄嗟にティーの足を掴んだ。
「やっとです……絶対離しませんよ……!」
とはいえ重量の差は歴然。いくらナノマシンの強化があるとはいえ、片手が使えない今落ちるのは時間の問題だ。
「くぅぅぅ……!」
そんな折、背後から大きな音がした。誰かが近づいてくる。確認の余裕もない。だが、その声を聞いてスーは安心した。
「間に合ったみたいね!」
閃光手榴弾を受けたオペレータールームの3人は徐々に混乱から覚め始めていた。少しずつ耳鳴りも収まりだした。本部長の端末からは外の様子がまだ中継されていた。
『見よ!これがティーのフィアンセ!その名もマリア!諸事情により宇宙服を着ているが理解ある対応をよろしく!』
そして画面に現れたのは。
『……ドウモ……マリア……デス……』
宇宙服で顔を隠したマルコだった。




