仕事の終わりの始まり
「あぁ?テメェ……」
助けがきた。スーはそう思った。ティーが助けにきてくれたと。だがその考えはすぐに消される。
「……なんだよ、管理人殿じゃないか!」
「え……」
気さくに話しかけていく男。考えても見れば惑星管理人まで関与していることは明白なのだ。余計な混乱を防ぐためSS隊員が来る日を知っているのは惑星管理人だけだ。なのに当日のピンポイントで準備を行っている彼等は確実に何処からか情報を得ている。
「そんな……」
更に惑星管理人の後ろには台車に乗せられたティーがいた。機能を停止しているのか動く気配はなく、普段忙しなく動く水色のモノアイは完全に光を失い沈黙している。
「ティーさん!」
動揺しているスーを尻目に2人は話していた。
「そっちも上手くやったみたいだな」
「……あぁ」
「それにしても」
男は訝しげに惑星管理人を見る。
「アンタとはここで合流する予定はなかったはずだが?それにさっきは俺の仕事を邪魔しようとしてきたな?」
「いや、それはだな──」
続きを言う前に男は何かに気づいたように笑いだした。
「ど、どうしたんだ急に」
「いや〜なるほどな。なんできたか分かったぜ。アンタ」
スーはショックで放心しているかのように押し黙っている。そんなスーを指しいった。
「このガキを最初に使いたいんだな?」
「な、何を言ってるんだ。私はただ止めようと」
「いいっていいって。俺とアンタの仲だ。そういえば前言ってたもんな。どうせならなるべく若い方がいいって!まさかここ迄のガキがいいとは思わなかったが」
「黙れ!」
語気を荒げる。流石に何か変だ。男はそう思い何があったか聞こうとした。その時だった。
「やっぱり嘘でしたカ。残念でス……」
「!!」
声が聞こえた。スーは顔を見上げる。この声、どこかカタコトで、それでいていつも聞いていた声だ。
「いや待ってくれ、嘘だ!あいつがうそをついてるんだ!私じゃない!」
何か管理人が言っている気がしたがスーにはよく聞き取れなかった。
薬で過敏になった感情は嬉しさにも反応する。
「ティーさん!ティーさん!」
ただ嬉しさから名前を呼ぶ。自分の相方。積み木を重ねたかのような見た目のロボット。そして──。
「ああああぁぁぁぁあああああああぁ!」
管理人の悲鳴が挙がる。まるで激痛に苦しむかの様な。
スーは状況が理解できなかった。ソレは、絶対にないと思っていたことだったからだ。
「いぎぃ、やめ、タズケ……アァ!やだ、死にたくな……い……」
やがて悲鳴は消え、周囲には静寂が訪れる。
管理人の左胸からはナニカが飛び出ている。やがてソレが引き抜かれると、管理人は崩れ落ちた。
「え…………」
スーは言葉が続かなかった。
崩れ落ちた管理人、彼は死んでいた。
そして突き刺さっていたソレ、は──。
「ふぅ、ワタシのパートナーを返してもらいましょうカ?」
ティーが左手を拭きながら喋る。
いつも通りの声、いつも通りの喋り方。ただ、起動しているはずなのに、ティーの水色のモノアイは光ってなくて。
代わりにただただ暗い、深淵の様な黒い画面だけが残っていた。




