仕事の終わりの始まり
「ここですか」
スーが連れていかれたのは街の外れにある廃ビルだった。ただ、周りをみると荒廃してるのはこのビルだけではない。近辺は整備の手入れがされてないある種のスラムのようになっていたのだ。
「貴方は待っていてください」
「はい、……あの、気をつけて」
「任せてください、必ず妹さんは助けますから」
スーはビルの敷地内に1歩足を踏み入れる。次の瞬間。
「──!」
嫌な空気を感じ思わずその場から飛び退いた。
『おーう!避けたか!流石女とはいえSS隊の隊員様だ!』
ビルの真正面の中央の階から声が聞こえてきた。また、各窓からはキラリと光る銃口と思わしき物もみえている。
「とんでもない歓迎ですね」
先ほどまでいた場所には数発の弾丸がめり込んでいた。
『安心しろ!殺す気は無い!ただちょっと手伝って欲しいだけだ!』
「いきなり撃っておいてそんなこと言われても信用ないですよ」
『そう言うな!今日の為に俺達もかなり頑張ってお前の歓迎を準備してたんだ!』
「歓迎?というかなんで貴方は私達が来ることを知って──!」
違う。スーは気づいた。この男はなぜ私が1人で来ることを知っていたのか。なぜここまで周到な罠を準備しているのか。そしてなぜ──。
《──SS隊の方ですよね!》《女とはいえ、SS隊の隊員だ!》
スーがSS隊員だと知っているのか。
バチッ!
スーは自身の背中から襲ってきた衝撃に倒れこんだ。背後には助けを求めていた女性がいた。手にはスタン警棒と思われる、相手を無力化する為の装備が握られていた。
「ごめんなさいね、でもこうしないと私もご褒美を貰えないの」
意識が薄れ、消える寸前まで、男の笑い声が聞こえていた。
管理人室は静かだった。スイッチを持ったままの管理人、それをただ見つめるティー。やがて、ティーから口を開いた。
「唐突ですネ。帰れと言われましてもワタシの相方が外に観光してますかラ」
「いえ、帰ってもらうのはアナタだけでいいんです」
「……なるほド?理由を聞いてモ?」
「話すことはありません。すぐに宇宙船に乗ってかえってもらいます。少しでも不審な動きを見せれば……」
管理人は手に持ったスイッチをこれ見よがしに見せつけてくる。ティーはため息をつきながらソファーに深く座り直した。
「……結論から言いましょウ、いやでス」
「じゃあさようならです」
管理人はスイッチを押し、即座に自分が座っていたソファーの後ろに隠れる。爆風に巻き込まれないためだ。耳を塞ぎ目を瞑り爆風に備える。
「……?」
が、いつまでたっても爆発の衝撃は来ない。
「申し訳ないですがこの首輪の爆発のシステムは現在ダウンしてまス」
管理人が驚き顔を出すとそこには座ったままのティーがいた。手には先ほど隠れる際に投げ捨てたスイッチが握られていた。ティーはカチカチカチカチ何度もスイッチを連打している。
「何故だ!?故障なわけない!一体何をしたんだ!」
取り乱す管理人を前にティーは首輪を外しながら答える。
「簡単でス。ちょっと首輪に細工させていただきましタ。いつ爆発してもおかしくない物なんてつけたくないですシ?」
「細工?そんな暇無いはずだ!一体いつ、どこで!」
「それは貰ってからでスヨ」
ティーは自分から言う気は無かった。
実際の所、細工を行なったのは本当につける寸前だった。
《……ちょっとスーさん動かないでください……まっすぐ!斜めにならないでください!……よい……しょ!》
スーにつけてもらう際、前から首輪を押さえている間。この間の首輪の前を押さえている少しの時間で首輪へのハック、爆発のプロセスだけを停止させる事にティーは成功させていた。
「本当は返すときに機能を戻しておいて黙っておこうと思っていたのですガ。まさかこんな事になるとハ」
「くっ、がぁっ!」
部屋から逃げようとする管理人を掴み壁に押し付ける。
「さて、貴方は一体何を企んでいるのでス?教えてくれないとどうなるかわからないですヨ?」
勿論傷つける気はそうそう無かった。次の言葉を聞くまでは。
「ぐっ……企んでるのは私じゃない。次のSS隊の女を捕らえるよう頼まれたんだ!脅されて……ぐぁぁ!」
そこまで聞いてティーは腕にさらに力を入れた。
「どこですカ?」
「違う!私は仕方なく……」
「いいから何処に連れて行ったか教えなさイ!」
「わかった、わかったから手を緩めてくれ、このままじゃ、折れる……」
「…………」
ゆっくりと腕を緩める。
「スーさんを連れて行く予定だった場所まで貴方に案内してもらいまス。もし嘘をつこうものなラ……」
緩めていた腕にまた力を込める。
「ひぃ!わかった!わかりましたから!」
(このままじゃスーさんが危ない。もし何かあるようなら……)
ティーは1つ、覚悟を決めた。
(ワタシは……)
それはティーにとって大事な覚悟だった。




