銀河系タイムアタック
〜第3銀河から第2銀河まで〜
「うわあきましたきましたヨ!」
「静かにしててください。運転に集中できないです」
ティーはガイドとして宇宙船外部のカメラとデータ接続を行なっていた。ガチャガチャとレバーを引いたり押したりするスー。その度に宇宙船は不思議な軌道を描く。
「そういう揺らし方はまずいですっテ。餌と勘違いされますからネ!」
ティーは再びカメラとの接続を行う。宇宙船の下部についているカメラの映像に映っていたのは、
「ーーーーーーーーー!」
宇宙船と同じほどの大きさの細長い何かが襲ってきていた。
「スペースウミヘビが後ろに回ってきてまス!しかも大量ニ!」
第3銀河はかなり不思議な所だ。殆ど探索が済んでないそこでは当然のように宇宙空間を生物が泳ぎ回っている。スペースウミヘビもその中でもポピュラーな1匹だ。彼らはウネウネと体をうねらせながら近づき獲物を1呑みにする。普段はあまり宇宙船を狙うことはないが今回はスーの不思議な航行を餌と勘違いしたようだった。
「右!左!次は旋回してくださイ!」
矢継ぎ早にスーを急かすが残念ながらスーにそこまでの技量はなかった。時折ウミヘビの体が船体を掠る。ガゴン!と鈍い音がなる。
「ヒィ!今のは危なかったでス!」
身振り手振りはないが(体がないため)それでもかなりのリアクションをとるティー。
「このままじゃ埒があきません。なんとか撒いてみましょう」
「スーさん何か策ガ?」
「ありません」
「エッ」
次の瞬間スーは宇宙船の速度を上げる。
「「「ーーーーーーー!」」」
食い下がるようにウミヘビ達も追ってきている。
「ふっ!」
スーが短い気合いと共にレバーを動かす。宇宙船は猛スピードのまま旋回を行った。
「ギャーーー」
ティーの悲鳴が聞こえる。宇宙船は過負荷のアラートをあげる。その間もスーはレバーをガチャガチャ動かす。それに宇宙船は応えてしまう。上下左右に揺れ続ける。
しばらくして。
「やっと終わりましタ……ワタシに三半規管が備わっていたら即座に嘔吐していたでしょうネ……」
ティーが消沈した声で呟く。幸いにも操縦席の近くで止まることができたらしい。
とはいえ正確な情報の判断はできてないようで周囲の情報を得ようと忙しなく水色のモノアイが動いている。
「……ハテ?ウミヘビの襲撃はやんでますネ」
落ち着いたティーは外部カメラと映像を繋いだ。そこには
「ーー!?」「ーーーー!」
まるで絡まった毛糸玉の様になっているスペースウミヘビ達の姿があった。
「どうですか……成功でしょう……?」
無茶な運転により座席から転げ落ちていたスーが座り直した。が、顔色はかなり悪かった。全身のナノマシンをフルに使い三半規管の調整を行なっていたがそれでも少しのダメージがあったみたいだ。
「すごいでス!とんでもない運転技術ですネ!」
「それはよかっ……ウゥ」
スーは宇宙船を第2銀河に向けて再び飛び直した。時間はあるとは言い難い。微かな吐き気を伴いながらスーは宇宙船のレバーを握りしめるのだった。




