2人のファンのMAXハート
「本当に大丈夫なんでしょうカ」
遠くからスコープ越しにスーを見る。やがてスーは見張りの3人の前に立った。3人は銃をスーに向けている。
「どうする気ですかスーさん!?もう撃っちゃいますヨ!?」
そしてティーが照準を1人に合わせ引き金を引こうとした時。スーが右手を挙げた。
「……制止のサインですネ。ワタシに向けてか相手に向けてかわかりませんガ」
と、ふと見ると見張り3人も銃を構えてはいるが撃つそぶりを見せていなかった。それどころか動揺しているように見えた。
「?スーさんは何をしたんでしょうカ?」
気になったティーは自らの集音機能を高めてスー達の声が聞こえないか試すことにした。
『ザザ…武器……おき……ザ…』
ノイズがひどいがスーの声が聞こえる。
「スーさんが説得しているみたいですネ。こんなことならもっと集音性能のいいものに変換するべきでしタ」
ティーは自分の体のへっぽこ具合に文句を言っていた。
「おヤ?またスーさんの声ガ……」
『守れぬ……ザ…ザザ…』
「あらら、もう少シ……」
ノイズ混じりの中最後に聞いたスーの言葉にティーは耳を──正しくは自らの音声認識機能を──疑った。
『ザザ…ザ……断罪を行う』
「スーさん!?!?」
急いでスコープを覗き直すとスーが1人頭に拳を叩きつけている光景が目に映った。アレは死んだのでハ。
「ティーさん!」
大きな声で呼ぶスーにハッと我に帰ったティー。心配は後回しにしてその声に応えるように弾丸を残り2人に放った。
「……生きてますネ。よかっタ……」
「何で死んでると思ったんですか」
スーさんが殺したかと思っタ。と直球に言うのも怖いのでティーは黙っていた。
「……まあいいです。とりあえず彼らは縛っておいて帰りに回収しましょう」
見張りの3人は痙攣して倒れていた。どうやら全員気絶しているようだ。スーとティーは近くの柱に3人を縛り付けることにした。
「それにしても流石の性能ですねこの銃ハ」
「ブキコさんの拘りが遺憾なく発揮されてますから」
暴動鎮圧狙撃銃スタンスナイパーver1.5。通常より遠い距離から敵を無力化するために作られた銃だ。遠い距離に弾を運ぶ為に必要な高い火力。死傷が出ないようにする為の最低限の火力。この2つの問題をクリアする為この銃はかなりの資源が投入されていた。
スコープに相手の種族、距離を即座に計算する機能。弾丸は特殊な液体金属で作られ特定の電波によりその形を自在に変える機能。電波の発信は銃口で行われる。
発射後、変わる形により起きる空気抵抗で減速を行い相手に当たる時にはうまく気絶する程度の威力となる。異常な程の精密さを誇る狙撃銃だ。残念ながら製造コストの問題で量産はされなかったが。
「それでスーさん。彼らと何か話してましたよねって何してるんですカ!」
縄を縛り終えてふとスーの方を見たティーは驚愕した。
スーは縛った3人の服の胸元をはぐると何かを引きちぎっていたのだ。
「いや……別に」
「別にじゃないでしょウ!やっぱり今日のスーさんなんか変ですヨ!もう気になってしょうがないですから教えて下さイ!何を隠してるんですカ!」
肩を掴まれガクガクとスーは揺さぶられている。
「わかりました話すので肩から手を離してください」
手を離してもらうとスーは観念するかのように話し始めた。
「そのかわり」
スーは気まずそうに目を逸らしながら条件をつけた。
「笑わないでくださいよ?」




